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陰キャな俺の初恋相手の妹が、学年一の美少女になっていた。それでも、俺からしたらそれだけだ。  作者: 白浜 海


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それだけのこと

「菜奈さんはなんて事をしてくれたんだ!」と思うも、それを今更本人に言ったところで何も変わらない。


 それに、菜奈さんには悪気なんてものが全くないはずだ。むしろ、行き先を知らなかったとはいえ、菜奈さんを誘わずに遊びに行ったこちらに非があると言われてしまえば、何も言い返せないのだから。


「とりあえず、落ち着いてください」


「敬語はダメって言ったでしょ!」


「あっ、はい」


「彩花とお花見に行ったんだよね!?」


「うん」


「どうして、お姉ちゃんも誘ってくれなかったの!?」


「それはその、なんというか……ごめんなさい」


 ここで全て彩花のせいにすればこの場は丸く収まるのかもしれないが、さすがの俺もそんな卑怯な真似はできない。彩花は別に悪いことをしたわけでもないし、俺自身も手作り弁当をおいしく食べて楽しんだのだから、言わば共犯者だ。それに、菜奈さんの言い分も分からなくはない。


「もぉ! 私も悠くんとお花見したかった! 悠くんと遊びたかった!」


「俺も菜奈さんと久しぶりに遊びたいよ……?」


「それじゃあ今すぐ遊びに行きましょう!」


「いや、今すぐって……まだ午後の授業もあるし」


「そんなものはどうでもいいよ!」


「いいわけないでしょ!」


 そう叫びながら、生徒副会長である霧島先輩が生徒会室へと入ってきた。前回呼び出された時は霧島先輩のおかげで脱出できたが、今回はさすがに逃げるわけにはいかないだろう。


「菜奈! また勝手に放送室を使ったでしょ!」


「緊急事態だったんだよ、凛ちゃん!」


「また翡翠くんを呼び出して! 何が緊急事態なのよ!」


「私のお姉ちゃんとしての威厳的に大ピンチなんだよ! お姉ちゃんを差し置いて妹と弟が勝手に遊びに行っちゃうなんて緊急事態でしょ!」


「いや、俺は弟じゃないんだけど」


「菜奈にお姉ちゃんとしての威厳なんて元々無いでしょ!」


「あるもん! 威厳に満ち溢れてるもん!」


「!?!?!?」


 そう言って、菜奈さんはいきなり俺に抱きついてきた。


 いや、本当に何しちゃってるんですか!?


 突然のことに俺は戸惑いを隠せず、菜奈さんの腕の中でもがくのだが、もがけばもがくほど――どこがとは言わないが、菜奈さんの豊かな部位が俺に当たってしまい、余計にテンパるという最悪のジレンマに陥ってしまう。


「ちょっと菜奈! いきなり抱きつくなんて何をしているの!?」


「えへへ。こうやって抱きついてみると、悠くんも大きくなったんだねぇ」


「いや、ちょっと、菜奈さん……!」


「もぉ! 菜奈お姉ちゃんでしょ!」


「いや、さすがにこれはダメだから!」


「『お姉ちゃん』って呼んでくれるまで離しません!」


「菜奈お姉ちゃん!」


「むふふ。悠くんは可愛いですねー」


 満足した菜奈さんは俺の頭をポンポンと撫でてから、ようやく解放してくれた。


(……こんなことを思うのは大変失礼なんだろうけど)


 俺はどうして小学生の頃、この人に惹かれていたのだろうか?


 昔は行動力があって、可愛くて、優しいお姉ちゃんという部分に惹かれたのだと思うが……高校生になった今もノリが変わっていないとなると、ただのヤバい人である。本当にこの人が生徒会長で大丈夫なのだろうか……?


「はぁ、はぁ……」


「翡翠くん……大丈夫?」


「大丈夫です……」


「どう? 悠くん、可愛いでしょ?」


「それはまぁ……分からなくもないけど……。だからって、いきなり抱きつくなんて何してるのよ!」


「お姉ちゃんの特権です!」


 もう俺はこの場から一刻も早く逃げ出したい思いでいっぱいだった。


 これ、本当にどう収拾をつければいいのだろうか。


いくら陰キャを極めた俺であっても、この状況はさすがに意味が分からなさすぎる。怒っているのか楽しんでいるのか分からない菜奈さん。菜奈さんを怒っているのか、呆れているのか、ツッコミ役に専念しているのか分からない霧島先輩。そして、されるがままの俺。完全なるカオスである。


「話を戻します! 悠くん! 今すぐお姉ちゃんと遊びに行くよ!」


「いや、だから授業が――」


「関係ありません!」


「あるに決まってるでしょ! 菜奈は仮にも生徒会長なんだから、模範生として振る舞うのは……まあ無理かもしれないけど、せめて授業くらいはちゃんと受けなさい!」


「凛ちゃんひどいよ!? 普段の私はもっと真面目だよ! 悠くんと凛ちゃんしかいないから、私も素でいるだけなのに!」


「だったら、もう少し慎みを持ちなさい!」


 菜奈さんが普段は真面目……?


 霧島先輩もそこは否定していないので嘘ではないのだろうが……まったく想像がつかない。というか、もう俺はここにいる必要すらないんじゃないだろうか。さっきから俺、ほとんど会話に入れていないのだが。


「むぅ……凛ちゃんの頑固者!」


「なっ!? というか、遊びに行きたいなら学校が終わってから行けばいいでしょ!」


「あっ……本当だ! 別に今すぐ行かなくてもいいじゃん!」


「「えぇ……」」


「悠くん! 今日の放課後空いてるよね!?」


「一応は……」


「それなら決まりだね! 彩花にも声を掛けておいてね!」


 そう言って菜奈さんは満足そうに頷いた。


 ……俺は、これだけのためにわざわざ全校放送で呼び出されたのだろうか?


 結局、生徒会室まで来させられて決まったのは『今日の放課後に遊びに行く』という約束だけ。たったそれだけなのだ。


この結論に至るまでに、凄まじく意味の分からない過程を通った気がするが……とにかく件は落着したらしい。


「霧島先輩も、苦労してるんですね……」


「えぇ……。菜奈も他の生徒の前ではちゃんと優等生なんだけどね……。私の前ではいつもあんな感じで、嬉しいのやら大変なのやら……」


「あぁ……」


 俺は何となく、霧島先輩とは苦労人同士うまくやっていけそうな気がした。


深々と溜め息をつきつつ生徒会室を後にし、俺は教室へと戻っていくのだった。


どうも! 白浜 海です!

1万PV達成しました!

ちょっと前の後書きで1000PV達成ではしゃいでいた私には何が起こってるのかもはや分かりません!笑

ただ一つ明確に言えるのは、

本当にありがとうございます!!

今後とも何卒よろしくお願いいたします!!

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