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陰キャな俺の初恋相手の妹が、学年一の美少女になっていた。それでも、俺からしたらそれだけだ。  作者: 白浜 海


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覚えのない視線

 これは幾度となく繰り返されてきたであろう論争なのだろうが……どうして学校に行く日が5日もあるのに、休みはたったの2日しかないのだろうか?


 1週間が7日あるのだから、少なくとも休みは3日に増やすべきだと俺は思う。俺というより、人類の大半がそう考えているのではないだろうか。


 毎週月曜日の朝、布団から起き上がる度に俺はこの理不尽について考えてしまう。考えたところで現状が変わるわけでもないのだが、どうしても思考を止められないのだ。


 こんなことばかり考えていても仕方がないと覚悟を決め、ベッドから起き上がって制服に着替える。洗面所で洗顔と歯磨きを済ませ、リビングへと向かった。


「おはよう」


「おはようお兄ちゃん!」


 リビングへ向かうと、楓は既に朝ごはんを食べていた。


楓は俺よりも学校までの距離があるため、早く家を出なければならない。そのため毎朝俺より早く起きて支度をしているのだ。


 母さんも俺が起きてくる頃には既に仕事へ出かけている。それでも朝食だけは毎朝用意してくれているので、俺はそれを食べ、少しゆっくりしてから学校へ向かうのがいつもの流れだ。


「それじゃあお兄ちゃん、行ってきます!」


「気をつけて行けよ」


「うん!」


 そう言って楓は家を出ていった。


それから10分ほど遅れて、俺も家を出る。家から学校までは徒歩で10分弱くらいの距離だ。始業のチャイムは8時30分に鳴るので、俺はいつも8時20分に家を出る。教室に入るのは8時28分頃、まさに遅刻ギリギリの安全圏である。


 いつも通りギリギリのタイミングで教室に入ったのだが――今日のクラスの様子は、明らかにおかしかった。


 俺がドアを開けた瞬間、クラスメイトからの刺さるような視線が一斉に俺へと注がれたのだ。なにごとかと思いつつも、俺は視線をスルーして自分の席に着く。


「おはよう悠! なんか、面白いことになってるな!」


「おはよう。一体何なんだ……?」


「それはまぁ、後で分かるんじゃないか?」


「?」


 智也の言葉の意味を考えようとしたが、すぐに始業のチャイムが鳴り、担任の桜庭先生が教室に入ってきて朝のホームルームが始まってしまった。


1限目は体育だったため、急いで更衣室へ行って着替えなければならず、考える暇はない。さらに体育の授業中も、初回だから親睦を深める名目でドッジボールをすることになった。


(……よし、ここでゆっくり考えるとしよう)


 ドッジボールなどというものは運動ガチ勢の独壇場だ。陰キャである俺はコートの隅っこに地味に立っているだけでいい。というか、こんな殺伐とした潰し合いのゲームでどう親睦を深めろというのだろうか。


(分からん……)


 ドッジボールが始まってからもずっと思考を巡らせていたが、俺がクラス中から視線を集めるような心当たりが全くない。遅刻ギリギリで入室したのがそんなに目立ったのか? だが、それだけであそこまで注目されるものだろうか。


「おい悠! あとは任せたぞ!」


「……は?」


 智也から急に声を掛けられ、ハッと我に返ってコートを見回す。


……なんと、我がチームのコートには俺以外誰も残っていなかった。どうやら俺が考え込んでいる間に、味方はことごとく外野へと駆逐されていたらしい。


もちろん運動が得意な訳でもない俺はあっさりとボールを当てられ、試合は呆気なく終了した。


 体育が終わった後も座学の授業が続いたが、原因が気になって全く集中できなかった。


なぜ俺がここまで真剣に悩んでいるのかと言うと、俺は『目立たない陰キャ』として平和に過ごしたいからだ。注目されることなど絶対に許されない。速やかに原因を特定し、対処しなければ、俺の地味で平穏な学校生活が脅かされてしまう。


 授業をまったく聞かずに思考を空回りさせているうちに、虚しくも昼休みを迎えてしまった。


すると、昼休みになって5分ほど経った頃、校内放送がスピーカーから響き渡った。


『1年1組の翡翠悠くん。今すぐ生徒会室に来てください。繰り返します。1年1組の翡翠悠くん。今すぐ絶対に生徒会室へ来てください』


「…………」


 なんでこんなタイミングで呼び出すんだ……。


ただでさえ理由も分からず浮いているというのに、これ以上目立つのはごめんだ。とはいえ、ここで無視すれば余計に騒ぎが大きくなる。


溜め息をつきながら席を立ち、生徒会室に向かおうとすると、彩花が慌てた様子で話しかけてきた。


「悠くん!」


「ん? どうした?」


「あの……その……ごめんね!」


「え?」


 それだけ言うと、彩花は気まずそうに自分の席へと戻っていった。


どうして彩花が俺に謝るんだ? それも、いつもの彩花らしくない歯切れの悪い謝罪だ。俺はますます首を傾げながら、生徒会室へと向かった。


 生徒会室には以前一度呼び出されているので、迷うことなく辿り着いた。扉をトントンとノックすると、中からすぐに声が返ってくる。


「どうぞ」


「失礼しま――」


「悠くん! 彩花と一緒にお花見に行ったの!? どうしてお姉ちゃんも呼んでくれなかったの!? 朝、教室に行っても悠くんはいなかったし!」


 扉を開けきる前に、奈菜さんが食い気味に質問を浴びせかけてきた。


 ――そして俺は、すべての謎を理解した。


 朝からの謎の視線。

『後で分かる』という智也の発言。

彩花の謎の謝罪。


 すべての線が一本に繋がった。


すべての元凶は、この生徒会長だったらしい……。


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