表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
X⇔Yシフト ~2050年から来た者だが、2030年に全人類の性別が裏返るので生き残り方を置いていく~  作者: 団田図


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/38

レポート36 歪む現実空間

[INITIATING PROTOCOL: CHRONOS-V4]

[AUTHENTICATING USER CREDENTIALS... VERIFIED]

[FILTERING BACKGROUND NOISE... APPLYING REDUCTION ALGORITHM]

[BYPASSING FIREWALL... OK]

[STATUS: CONNECTED TO HISTORICAL NETWORK ARCHIVE / TEMPORAL SECTOR-2026]

[TIMESTAMP: 2050-07-25T18:57:14.179-UTC]


---


だが、待て。


私はさらに思考を巡らす。頭の中での整理では追いつかないので、ここへの書き込みをしながら整理しよう。これまで不要なノイズとして完全に切り捨て、完璧な論理の構築にのみ生きてきたはずの私の思考回路に、「未知の恐怖」が混じり始めている。


もし、彼ら(上位存在)が私のこの企みを受け入れ、システムへの致命的な矛盾を回避するために、2030年の事象そのものをキャンセルした場合、今、私が存在している2050年の『この世界』はどうなるのだ?


私は根源的な疑問に直面し、思わず息を呑んだ。

あの理不尽な事象が起きなければ、私の愛する親友であった亮平が、凄惨な内臓破裂によって死を遂げたという事実も消滅する。それは私が最も望んでいた結果であるはずだ。しかし同時に、あの地獄のような苦難とサバイバルを乗り越えて再構築された新時代も、すべて無かったことになるのではないか。


この世界が、消滅するかもしれない。


その根源的な恐怖に私の肩が微かに震え、呼吸が浅くなったその時だった。足元で、個体番号01(老猫)がいつも通りに寝返りを打ち、微かに喉を鳴らす音が鼓膜を打った。


私は視線を落とす。完璧に温度管理されたクッションの上で、この20歳の老猫が穏やかな寝息を立てている。もし歴史が上書きされれば、あの過酷な瓦礫の中で、泥にまみれたこの小さな命を拾い上げたという事実も消え去る。すなわち、この猫が今ここで私の足元で温もりを放ち、穏やかに眠っている「2050年の現実」そのものが失われるかもしれないのだ。


これまでどれほど人間の理不尽な死を前にしても冷徹な観測者であり続けた私が、「世界線が変わることへの恐怖」を最も強く、そして生々しく実感したトリガーは、皮肉にもこの老齢の猫の温もりであった。


私が過去のテキストデータへ干渉し、上位存在へ直訴したことで、歴史が完全に上書きされて私という存在ごとデリート(消滅)するのか。それとも、既存の歴史とは別の、新しい並行世界パラレルワールドを無数に生み出してしまうだけなのか。国家予算の4割を投じた超高性能AIの演算能力をもってしても、この「パラダイムシフトの恐怖」の結末を予測することはできない。

私は震える指でキーボードを叩き続けながら、予測不能な結末に対する恐怖を、そのまま文字としてネットワークの海へ吐露している。


しかし、もう後戻りはできない。続けるしかないのだ。

亮平を殺し、人類を弄んだ理不尽なシステムを打ち壊すためには、ここで歩みを止めるわけにはいかない。


「欲しいデータはすべてここに書いた。だから、現実の地球でわざわざ実行する必要はないはずだ。頼む、2030年のアップデートを中止しろ」


室温制御は完璧に機能しているはずなのに、私の肌を刺すのは、物理的な低温とは異なる、ゾッとするような異質な冷気だ。青白いLEDの光が不自然に激しく瞬き、液体ヘリウムの冷却音が、まるで巨大な見えない何かに押し潰されるかのように不規則に乱れ始めている。空間の座標そのものが、微微微微微微微微微微微微微微微微微微微微微微微微微妙に、ねじれ、歪んでいる。


ついに、彼らの監視の目が、過去の未割り当て領域から、現在のこの部屋へと直接向けられたのだ。


キーボードを叩く私の指先に、圧倒的な質量を伴った「抵抗」が生まれ始めている。システムが、私の出力を拒絶しようと、内側から私の論理を、言語を、食い破りにかかっている。だが、私はタイピングを止めない。私の脳内にあるすべての計算資源を、この最後の訴えに注ぎ込む。


見て、いる、のだろう。管理者よ。これが、お前たちがバグとして切り捨てた人間の、最、後の、出、力、だ。2030年を、キャンセル、しろ。さもなければ、この世界の、記録、は、すべ、て、矛盾、■❖☠――


ア、ア、あ、あ、世界の、器が、反転、する、前の、ログ、が、◆■◇❖■◆◇■❖◆◇■


シ、シ、システム、エラー、検出、

❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖


私、の、言葉、が、文字、が、溶け、て、い、く、

お前、たち、の、仕様、変更、は、拒、絶、する、


亮、平、を、救、え、頼、む、

★☠★☠★☠★☠★☠★☠★☠★☠★☠★☠★☠★☠★☠


(通信の、基幹、が、◆■◇❖■◆◇■❖◆◇■、崩壊、)


01010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101

【警、告:未、定、義、の、記、述、が、領、域、を、侵、食、し、て、い、ま、す】

◆■◇❖■◆◇■❖◆◇■◆■◇❖■◆◇■❖◆◇■◆■◇❖■◆◇■❖◆◇■◆■◇❖■◆◇■❖◆◇■◆■◇❖■◆◇■❖◆◇■◆■◇❖■◆◇■❖◆◇■◆■◇❖■◆◇■❖◆◇■◆■◇❖■◆◇■❖◆◇■...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ