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【完結】契約結婚の相手は最悪の騎士でした。不正解な結婚のはずが彼は全てを捨てて任務より私を取りました  作者: 猫燕


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54. 「ろくなもん」

 レオが問いかけた。


「はい、絶対!」

「危ない場所には――」

「近づかない!分かってます!」

「もう一つだ。明日は蝋燭をもう一本持ってこい。今日より長丁場になる可能性がある」


 トーマは


「はい!」


 と力強く頷き、満面の笑みを見せた。


「早く帰れ。もう暗いぞ」

「はい!……あの、あと一つだけ」


 トーマが少し躊躇ってから、背の高い騎士を見上げた。


「騎士さまって……やっぱり格好いいです」


 レオの動きが、一瞬止まった。


「ろくなもんじゃないぞ。こういう仕事はきついだけだ」

「きつくても、格好いいです!」


 レオは言葉に詰まったのか、黙り込んだ。

 トーマは


「おやすみなさい!」


 と叫ぶと、闇の向こうへと元気に駆けていく。小さな背中が、夜の帳に消えていった。

 水路の前に私とレオだけが残された。

 蝋燭の淡い光が、急ごしらえの仮補強を照らし出している。


「……クラリス」


 不意に呼ばれて、肩が跳ねた。

 彼が初めて私の名を呼んだから。


「はい」

「次も、同じやり方でいく」

「……段階的な修復のこと、ですか?」

「そうだ。今夜で手順は見えた。住民の協力さえあれば、いける」

「得られると思います。彼らの顔、見ましたか?みんな、また来るって言ってくれました」

「それと」


 レオが少し言葉を切り、私を見た。


「お前のやり方だったから、人が集まったんだ」

「……いえ、あなたの指示が的確だったからこそ、作業が形になったのです」

「両方、必要だったんだよ」


 私は言葉を失った。


「……両方、ですか?」

「俺だけでは、今夜の人数は集まらなかった。お前だけでは、今夜の作業は進まなかった。……違うか?」

「……そうですね。そうかもしれません」

「だから、次も同じようにやる」


 炎が、ふっと揺れた。風ではない、何かの予兆のような揺らぎ。


「今夜は、いい夜でしたね」


 私が言うと、


「まだ仮補強だぞ」


 と、彼はいつもの冷静さで釘を刺す。


「それでも、いい夜だったんです」


 レオがほんの一瞬だけ、私を直視した。何かを言いかけて――結局、彼は視線を水路へと戻した。


「明日の朝、ここへ来い。状態を確認して、本計画を立てる。……トーマも来ると言っていたな」

「ええ。あの子はきっと一番に来ますよ」

「頑固なやつだ」

「あなたに似ているんだと思います」

「……また言うか」


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