その12
「“バーチャルウインドウ”で君の殺人を直接見ていたのは、世界中に少なくとも百数十人はいる。
殺人発覚の早さ、目撃者数とその範囲では新記録だろうな・・・。
ギネスブックものだ。
バーチャルウインドウ社のハードデスクには、バッチリ、君の犯罪が記録されている。
今、見てもらったのもバーチャルウインドウ社からの提供映像だ!
それにインターネット上でも、バーチャルウインドウ社の物とは別の者が提供した違法な物が流されている。
すごいアクセス数だそうだ。
何万という人間が、君の殺人ビデオをみているのだ!
表のマスコミ連中もそれを見て、ここに来ているのだ。
君の『この野郎!』と言う言葉も記録されている。声紋も君のものと合致するはずだ。
それから・・・。
丁度、いい。もう一度、モニターを見てくれ!」
言われるままに、おれはモニターを見た・・・。
明らかにおれのボロ車が画面右から左へ走り去った。
「これでも、君は“冤罪”というのか?」刑事は優しく言った。
おれはついに言った。「僕が殺りました。すみません・・・」
「私は警官になって今年で四十二年目で、来春には定年だ。そのほとんどを刑事畑を歩んできた。
殺人事件も九件あった。中には難しい事件もあった。なんとか容疑者を特定しても、奴等は否定した。それでも私は地道に証拠を積み上げ、最後には奴等に“すみません!”と言わせてきた。
冤罪事件は一件もないし、未解決事件もない。それが自慢だ。
私は今、定年前で警部補だ。決して出世したわけではないが充分満足している。
恐らく、今度の君のが私の最後の殺人事件になるだろう。最後の事件にしては、ちょっと簡単すぎた。
でも、未解決にならなくて良かった。
・・・。
ところが、どうしても分からないことがあるんだ!」と、刑事が言った。
「なぜ×淵○さんだったんだ?それに、動機だ。中学校時代はトラブルはなかったようだが・・・」
「それは」と、おれは言った。「エクセルに聞いてくれ・・・」
刑事がきょとんとした。(無理もない)
丁度、その時仕組んだように取調室の扉をノックする者がいた。
外から入ってきた若い刑事が、定年前の刑事に何か耳打ちした。
「えぇ・・・」定年前の刑事はその若い刑事が言うことが理解できなかったようだった。
「外で話を聞く!」そう言うと、刑事は部屋を出て行った。
おれは飛んでもない事、不謹慎な事を考えた。
“今日は帰れそうにもない・・・”




