その13
随分長い間待たされた様な気もするが、十分程だったかも知れない。刑事が部屋に入ってきて言った。
「家宅捜査でパソコンを発見した。すぐ横にはハローページが広がっていた。
パソコンにはエクセルが立ち上がっていて、ファイル名は「獲物選定プログラム」
画面上にページ数:0×4、並び:2、段数:2×と出ていたそうだ。殺害方法:5
調べると表示された数字は乱数を発生させて決める関数の結果、エクセルの表としては極単純な表、だそうだ。私はパソコンは苦手だからよく分からんが・・・。
君が連続殺人を計画し、殺す相手・方法ををパソコンに選ばせるためのものだ。
それで、ハローページの×4頁、左から2列目、上から2×目を調べると、なんと君自身だ!
・・・。
自分がつくったエクセルに、ハローページには何万人も名前が載っているのに自分が選定された・・・!?
そんな偶然があるのか?
それでも、ハローページの×淵○さんを調べるとしっかりアンダーラインが引いてあった」
すっかり忘れていたが、おれは爺の名前にチェックをしたのだ・・・!
「君が作ったエクセルが、君自身を新たな獲物に選定したのか?」と、刑事がおれに尋ねた。
「全てが面白くなかった」と、おれは言った。「僕は大学を卒業したから十年間、真面目にL商事でずうっと働いていた。営業成績はトップとは言わなくても、それなりの成績をいつも確保してきた。少なくとも、僕はそう思ってきた・・・。
ところが、この不況で“いの一番”にリストラされたのは僕だった!
何故?上司は明確な説明をしてくれなかった・・・。
再就職も何度か試したが、全て駄目だった。
それで、連続殺人を思いついた。おれに冷たい仕打ちをした世間への仕返しだ・・・。
元の会社の連中を獲物しては、僕が“いの一番”に疑われる事は間違いない。それで一番手近にある名簿のハローページから、ランダムに殺す相手を決めることにした。殺す相手は誰でもよかった。
殺す方法もランダムに決めれば、警察は“連続殺人”にも気がつかないと思った。
目撃者にさえ注意すれば、“連続殺人”にも気づかれずに何時までも人殺しを続けられる・・・。
小さい頃から何をしても目立たなかった。
それは“連続殺人”を目論だ僕には好都合だ・・・。
それがあそこに“バーチャル・ウインドウ”があって、それがたまたま全世界に繋がっていたなんて!大勢の人が僕の殺人を最初から最後まで見ていたなんて・・・!」
そして、今頃になっておれは気づいた。
あの時、Dハウスで社員が『この近くで家を建て、“バーチャル・ウインドウ”を取り付けた』と、言っていた・・・。おれはその時、別の事を考えていて大事な話を聴き洩らしたのだ・・・。
「×淵○さんは、胃がんに冒されていて、医者から『後、半年』と宣言されていた。自分でも『事故で死んだ妻の所に早く行きたい。でも、自分では死ねない』と何時も言っていたそうだ。
だから、ひょっとすると×淵さんは君に殺された事を感謝しているかも知れない」と刑事が言った。
おれは爺さんが死ぬ間際、嬉しそうに笑った理由が分かった。
「それでも」と、刑事がおれに続けて言った。「そんなことは裁判員さん達は少しも配慮してくれないだろうな!
お前は、所詮、人殺しだ。これから、何年も刑務所暮らしだ」
こうしておれは連続殺人事件の犯人になり損ねた。
でも、おれはどこかでほっとっしていた。
これで獲物を変えるというプライドが傷つく事をしなくてもいいし、自殺しなくてもいい・・・。




