幕間1
何度も戦った。いや、厳密に言えば、戦ったのは自分ではなく自分の仲間だ。自分が戦ったのは二回。一回目は天球を壊すため、そして二回目で、己の野望は崩れ去った。
最初の方は優勢だった。だが、徐々に力で押し負けることが増えていった。それは単なる場数が増えたからなんてものではなかったのだろう。自分が奪ったものの数だけ、彼らは失い傷ついた。そしてそれを乗り越えてでも、強くならざるを得なかった。魔王から見た勇者とはそう言うものだ。
最初にその姿を見た時は、子どもだと思った。見た目はさることながら、その精神が子どもだった。それを非難するつもりはない。
ただ、選定の剣に選ばれた勇者が子どもというのは、どうにも納得がいかなかった。あの狂っていた頃の自分ですら、それが理不尽であるように思えた。
茶色い前髪をスカーフで上げ、ギラギラとした紅い瞳でこちらを睨みつけてくる。剪定の剣に選ばれたその少年は、勇者と呼ぶにはあまりにもお子様だった。感情的ですぐに癇癪を起こし、すぐに拗ねる。典型的なガキだった。
そのガキがこちらを睨んでいる。あり得ない光景だ。
考えるに、これは夢なのだろう。昔のことを夢に見ている。だから、もう百年の前の出来事が繰り広げられている。
――貴様はどうして戦うのだ。
声が反響する。自分の声なのだろうが、何故か酷く歪んでいる。
問いかけに、勇者は口の端を上げる。そして、凛とした表情で言ったのだ。
『友に誇れる、俺になるため』
ああ、全く。
「身勝手なものだな」
その勇者の瞳は紅かった。その勇者はガキだった。その勇者はすでにこの世にいない。だのに。
世界が暗転する。空のように澄み切った双眼が、こちらをじっと見つめていた。
驚いたような表情をしていた。声にならない声で助けを求めた。布一つ纏っておらず、走った跡には血痕が残されていた。
言葉を失ったのは自分も同じだった。
あの勇者は死んだはず。あの勇者は礼儀を知らない。あの勇者の瞳は青くない。
――だのに、その容姿は勇者のそれと同じだった。




