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第十八章 王城にて4
影指す白い空間で、何が起こったのかがわかったのはただ一人。
姿なき精霊は姿を得ようとして、いつか切り離された骸へと手を伸ばす。
その手を見ることができたのはただ一人。同じ精霊ですら、体のないそれを感知できない。体を得て初めてそれは誰もが観測できる精霊となる。
凛としていたその男が目を見開いて膝をつく。自分の顔面を覆う手の指先に力が入る。呼吸が浅く繰り返される。
少女はたまらず駆け出した。あれを見ることができたのは自分一人。であれば防ぐことができたのも、恐らくは自分一人。無力な手は、まだ間に合うとももう間に合わないとも考えなしに伸ばされる。あと少しで触れることができる、そう思った。
「ノア!!」
少女の体を細い腕が抱き込んだ。足が地面から離れる。自分が先ほどまで立っていた場所に鈍色の刃が走った。
肉を断つ音がした。血の弾ける音がした。体が大きく傾いて、床に転がり落ちる。
顔を上げる。自らを庇った女性の表情が苦痛に歪んでいた。どくどくと、その脚から血が流れている。
背後にゆらりと、影が立つ。
虚な目をしたそれは、歪に唇を歪ませて。
包丁を扱うが如く、己が剣を振り下ろす。




