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食仙(しょくせん)   作者: 不病真人
第一部 穢中五穀輪回地 安此穢得見正真 第一章 福源酒楼

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第九話 鄭傑(ゼン・ジェィ)にもチート能力か。

 ギリギリまでには夜の闇が、住処の周囲を濃く淀ませていた。

 鄭傑は土間の奥にいる。地下だ。

 にしても外は、静かすぎた、彼はそう思う。

それもおかしくはなかった、地下にいるからと言っても、そこまで深いわけではないし、なんなら夜にすっ転んでは落ちて打撲程度かと、最初に見て鄭は考えた。

(ま、静か、いいんだけど、今体がベタベタしてるつうか、滑ってるから安寧を楽しめんわ)

 しかし、その静寂は決して安らぎではなかった。

むしろ、息を潜めた獣が獲物を狙うような、粘つく予感に満ちていた。

 月から出し青白い光が木々の隙間から落ちていくとその冷たい光が、まるで住処の粗末な壁に長い影を這わせるようだった。

這いずる、それだ、なぜならば影は時折、ゆっくりと形を変えた。まるで生きているかのように。

 ガチッ……ガチッ……

 低い湿った音が聞こえた。水気のある感覚だ

足踏みか、そんな変な音だ、まるで木の枝が誰かの体重で軋む音。

朝方ならばおかしくはない、しかし徐々にそう思えなくなる。

なぜだか増えているんだ。

続いて、落ち葉を踏みしだく、ずるりとした足音。

この辺に落ち葉などない、いや、この音を鄭は知っている。

虎の怪物が捕食していたところ聞いた音だ。

腐った肉が擦れ合う、ねちゃりとした感触の音。

死臭のような何かを感じてしまうことを、しばしば。

まさか外に置いていた死人どもが、闇の中から近づいてきていたのか。

「てめぇら、いい加減...」

 鄭傑は壁の隙間に顔を押し当てては、そこに白い粉のせいで焼けただれた目をのぞかせ、外を窺った。

月光なのか、日光なのか、そのどちらとも言えない光にに照らされた先で、複数の影がゆっくりと輪を描くように地面へ影を伸ばして動いている、からか

体が不自然に傾いてはその向きの方へと無力にも腕がだらりと垂れ、滴らせる。何かを


血だ、黒い血が地面に滴り落ちている。

「...てき?」

穴の中にいるせいで彼らが上半身こそ見えずとも、その虚ろな足踏みをする存在らの足先が、すべてこちらを、鄭が方角を向いていた。

「……来るな」

 試しにか、そう命じたが、反応はない。

鄭の操れるような対象ではないのか、此処までにも見た目は彼が外で置いた二人に酷く似ているはずなのに。


 突然——

 バキィィィッ!

 鄭には見えないが、おそらくは何かの割れる音か。

(石...違うような、窓か!木の)

すぐに気がつくのは木の窓がの事か。

慌てて少し地下の土間を駆け出していくが、古い窓枠が粉々に裂け、鋭い木片が雨の後の泥地並みにあたりを汚して汚くしては飛び散っていた。


 「あ?!」


 その中で人影がが窓の残骸を踏み砕きながら、のろのろと室内に這い上がってきた。

腕とかに木の破片が刺さってどうも痛そうなのに、なんとも見せないのであった。

「...ゾンビか」

そう言われた先の喉を深く裂かれた存在は、首が半分落ちかけたまま、だらりと舌を垂らしている。

胸に空いた黒い穴からはウジなのか白い虫が蠢き出ていた。

腐敗した肉の臭いが濃く室内に広がった。

(やはり、死臭)

 鄭傑は咆哮を上げ、包丁を横薙ぎにした。

刃がただでさえ切れているその首をさらに削るように深く抉り、黒い腐汁が噴き出す。

何気に皮蛋(ピータン)の中身を想起させてしまう色と形かもしれない。

だがそれは倒れない。死体だからか。

首がぐらりと傾いたまま、両手を伸ばして鄭傑の左肩に食らいついてこようとする

「ぐっ!」

指が傷口に深く沈み、膿と肉を掻き回す。

手当なんてする間もなく、肉の処理をしていたせいだ。

馴染みのある痛み、傷だらけでただでさえ上手く動けない体だと言うのに。

 外では、さらに木々の折れる音が響き始めた。

 ミシ……ミシィ……バキッ!

 太い枝がへし折られる重い音。

否、ここいらで小枝など多くあるわけはない。

ならばなんと言うのだ。

(骨折か、聞いたことがサッまである!)

骨が折れる音、無数の骨をおらしてはなお進む亡者どもより出し音こそが、あの小枝を踏んだような音の正体であった。

複数の死体が壁を登り、屋根を踏み鳴らし、戸を爪で掻き毟る音。

あれこれ、全てが雑音の正体だった。

自然と勘違いさせるほどまでにも、この不自然な集団は寄せられているのだった。


ならばか、住処全体が、軋み、震えていた。

鄭の奥にある恐怖の表しように、その住処までもが震度によって震えていたのだ。


しかしすぐに震えは抑えられる。

体が掴まれてしまうからだ

もう一体がどことなくと這いずってきたのかその腐った指で鄭傑の右足、すなわち虎罠で砕かれたその部分を掴んだ。

肉も何もない白骨の指が肉に食い込み、折れた骨をさらにねじ曲げる。

人のできる力ではなかった。

鄭の体は頑丈そのもの、並ならぬ硬さやしなやかさを持つし、肉切り包丁できっともどうともないぐらいだ。

しかしそれが今掴まれた程度でみしみしとしてねじれている。

確かに傷こそ言えずに亀裂が入っていたりするがそれでも人間が持つ腕力のそれではない。

(てめぇ)

激痛が全身を白く灼き、鄭傑は膝をついた。

床に血が大量に広がり、月光にぬらぬらと反射する。

もちろん足首もぬりぬりと滑り気がある。むしろ増し続けて、鄭を、鄭傑を刺激する。

「ぐああああっ……!」

 体はすでに疲弊の極みにあった。もはや策尽きて、根性の試合そのものになる


怪物との死闘、虎罠の痛み、石灰と煮えたぎった汚液による顔と肩の腐食——すべてが彼の肉を蝕み、動きを鈍くしていた。


 死人どもは次々と窓の破れた穴からは這うようにしたりまたは。転がるように室内に流入して押し上げてくる。

「ゾ、ゾンビものかよてめぇ」

腐った肉の感触が床を這い、ねちゃねちゃとした足音が響く。

だからそれを止めたく鄭は進む、進む。砕けさせる。

必死にそれらを引き裂いて、だが無駄のようで、折れ曲がったままに前へ前へと向かい続ける。

「ラァ!」

冷たく湿った肉が肌に張り付き、爪が喉を掻き毟る。肘を後ろに叩きつけ、砕いたいけば腐った眼球が飛び出てヌチャついた感触を増加させてしまう。

寒いはずの朝が嫌なほどに、暑くなる。

決して朝日が登ってきてしまうからと言う心地のいい感触などない。

ただ、ただ、ただ胸騒ぎを起こすむさ苦しい何かだった。

空気を澄ませようとして拳を必死にあてがっては、その先にいた何かが消える

しかし別の死体がすぐさまその隙を埋め、やがて、領域まで侵入する、そのようだ。

鄭の壊れた右足を誰かが踏みつけた。

 骨がさらに砕ける、嫌な音。

そこからはもう雪崩のように続く

霜降り肉に熱した油をかけている時のように、当たり前なほどに怪物ら鄭を、鄭傑に押し上げては彼を押し潰していく。

もう彼に抵抗できる余地はなくなっているからだ、この数を前にしては。

 ゴリ

肉が裂け、骨片が皮膚を突き破る生々しい感触。

痛みはもはや一つの底なしの沼となり、彼をゆっくりと沈めていく。

 室内は腐臭と血の臭いで満たされ、暖かな光が時折差し込むたびに、死者たちの無表情な顔が浮かび上がってはその光さえも消える。

虚ろな目、裂けた口から零れる黒い涎、首から滴り落ちる腐った液。

ホラー要素だけを見れば異様な艶を帯びていた。

しかし実体験はこれほどまでの辛さか。

なぜならば鄭は叫び出してしまうほどに必死になる

「ああああああ!」

 鄭傑は壁に背を預け、包丁を必死に振り回した。刃が死体の肩を深く裂き、腸が零れ落ちる。

ソーセージでも、腸詰でもやっているようだった。何かの工場で、精肉場で。

木々が折れる音が続いていたのを無視すれば、上手くやれていけそうなほどに、それはいい感じに流れているかもし得ない。えないか。

バキッ……バキバキッ……。


 ━━大群が来する

より大きな影が近づいている気配。


「い、いやだ、許して!許して!」

 目の前が歪に揺れる。

涙か、汗が滲んで目に染みたか、それとも両者か。

汗が目に染みて涙したのか。

いや違う、怖いからだった虎に消化された痛みを受けてただで済むわけがない。

ならば再び死を覚悟するほどのものを見れば当然にもその辛さを思い抱いて、想起するからだ。

 死人どもの冷たい指が、徐々に彼の体を覆い始めた。

顔に、首に、胸に、砕けた足に。ねばつく腐肉の感触、重い死臭、蠢く肉。

(ああああ、あああ!)

「ああああははは」

虎の時と同じ怖いたちだ。

怖いたちが来るんだ。

 喉から、笑うって

喉が潰されているのか、それともついに狂ったのか。

それともなんだ

 この闇の中で、彼はまだ——

 

「なんでもする、なんでもする、やややだ!!」

まだ生きたいだけだった。

 住処は、夜の深い闇が続いているようにと、死者たちのねぶるような音に包まれ続けていた。

明け方はもうきたはずだ、見えたんだ

「俺は俺は俺は!!!」

俺は、せっかく


━━━━━━━━━━━━━━

ーーーーーーーーーーーーー

此処より始まる。汝が記憶

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あたりは真っ白だ、気がつくと。

「は?」

ーーーーーーーーーーーーー

それを踏まえて乗り越えよ

ーーーーーーーーーーーーー


 「文字が空中に、ん?なんかいい匂いがする。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

己が身にありし、すでに受けし恩恵

さすれば代償は必然、返納せよ試練にて

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「鍋...釜?いやこの前夢で見たやつ....ねむ」


待て、何かが脳裏に...浮かぶ。

なんだ

前にレシピの名前が聞こえてきたように。


 代償だ。

「チート能力...?超能力...?ウエルヴェラスコミック?」

望んでいた力があった、けどただ飯は無理なようだ。

飯作りが力な世界だけに。


 「な、なぁ、答えてくれよ。」

何も返事はない。

あたりは、煙か。

山か

わからない。

でも釜から文字が出ている。

それがいまだに空の上だ



 ならば、さっきの記憶で知りえたことを考えるしかない。


 「どうやら、俺が食われた際に再生できたのもこの変な竈...?釜?なんだろうか?のせいだろう!」

この際はピンポンと言う変な格好のやつが出るはずだ。


 「...」

何もないか。


ともかくだ、これで俺に特殊な能力があるのがわかった。しかしさっき垂れ流した文句のように、俺が食われたこととか色々代償があって今より、ここ...から出発して何かをするみたい



(精神世界的なものだが....)


しかし外はどうなんだ。動いているのか、そもそもやつらの正体は


ーーーーーーーーーー

五足大虫F級なり(生存)

ーーーーーーーーーー


 「....?イッテェ!」

(頭痛が、あれまた記憶が....)

わかった、どうやらこの空間が、空間は。


鄭は理解した。かの空間においては全て彼に理解できているようになる。

だから古風に景色こそあれど、虎の怪物をF級と称したりする。


そして今より対面するは、過去に見知、聞き慣れた記憶の奥に住まうもの。


 「映画の世界に入ってやるって?!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

≪ミッション開始≫鄭傑(ゼン・ジェィ)

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「今の声!?鬼が住む街の、冒頭のがってうわあああ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「闘いは終わりだ。降伏の時だ」


 「ならば受けてやる、貴様らの降参を。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「って映画のマリのめいじりふえええええ眩し!!!!!」

(んっくぁあ、生存?!まさか外の....うぅ)


眠気、果たしてそれは一体なんだろうか。

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