第九百九十九話
「姉がお世話になりました。俺は朝森星乃。一年間、このクラスで学ぶことになったので、よろしくお願いします」
新二年生と新三年生がまず学校に始業式で入ってきて、そのちょっと後に入学式があるのが一般的な学校だろう。
沖野宮高校もそれに漏れず、まず始業式があった。
そして、椿がいた席をどうするのかとみんなが考え始めたあたりで、担任のリオ先生が『留学生がいるので発表します』といって星乃を紹介したのだ。
「椿ちゃんって弟いたの!?」
「てか、身長たっか。秀星よりでかくね?」
「星乃くんも中学三年生なのかな。それにしてはかなり落ち着いてるような……」
「体格と重心の軸は生粋の剣士じゃないな。魔法職でサブとして杖術を使うって感じか」
感想と考察が教室の中に充満する。
だが、リオ先生が手をパンパンと叩くと、すぐに静かになった。
「というわけで、去年このクラスにいた椿さんの弟の星乃君がこのクラスでともに学ぶことになった。実技試験の試験官は私が努めたが、このクラスでもすぐに上位に食い込むレベルの実力を持っている。彼も学ぶことがあるが、君たちも彼から学ぶことは多いはずだ。いろいろ意見を交わしてくれ」
「先生と戦ったんですか?」
「ああ」
「その勝敗は……」
「もちろん私が勝った」
第一世代型の最高神だからね……。
「ただ、秀星の息子と言うにふさわしい実力だ。相手するときは油断しないように」
いろいろなイベントがあるからね。この学校。
それを考えれば、星乃を相手にする機会だってあるだろう。
「それで席だが……椿さんが座っていた場所でいいかな?」
秀星と風香の間である。
「あ、はい。それでいいです……」
風香から『逃さないからねぇグフフフ……』というオーラを感じる。
「さて、連絡事項は終わりだ。次に……」
大きな部分は終わった。
というわけで、ここからは星乃が三年一組に混ざって授業を行う。
……未来から中学三年生がやってきて一緒に授業を受けるということに対して何の疑問も持たないクラスメイトたち。
果たして大丈夫なのだろうか。
★
星乃はすぐに三年一組に溶け込んだ。
姉を反面教師にした結果落ち着いており、椿が秀星と風香の子供という属性に対して良い印象を振りまいていたことで、それに影響して星乃も邪険にされないのである。
……だからこそ苦労する部分はあるだろうが、秀星と風香よりもセフィアがそういう感情に敏感なので、うまくフォローするだろう。セフィコットもいつもより元気そうに動き回っている。
「……なかなか強そうだな。お前の息子」
屋上。
もうすっかり『強者専用』の空間となってしまった場所である。
そこに、秀星とフォルノスがいた。
この時期、生徒会の仕事は多そうである。フォルノスはこんなところでのんびりしていて良いのかと思わなくもないが、そもそも国枝に追い出されたと考えれば何も問題はないのでそう思っておくことにした秀星である。
「未来の教科書の内容は知らないが、生まれたときから環境がえげつないからなぁ……」
「確かに」
大罪神祖という地位に立つフォルノス視点でも、星乃はそれ相応の強者の領域に立っていると判断できるようだ。
ただ、よくよく考えれば環境が凄まじいのである。
「属性で言えば『雨』と言ったところか。使いこなせばそれ相応に強力な属性だろうな」
「天候操作だからなぁ」
「……はぁ。国枝も大変だろうなぁ。今年の新入生は意味不明なことになってるし」
「ん?新入生?」
「すぐに入学してくるからわかるが、相当な曲者がいるぞ」
「フォルノスほどじゃないだろ」
「私と比べるな」
ただ、フォルノスがそういうということは、やはり『すごい生徒』なのだろう。
「この一年も、いろいろなことが起こりそうな予感がする」
「まあ、この状況じゃあ仕方ないさ。で、フォルノス、生徒会の仕事は?」
「国枝に追い出された」
「即答かい」
「取り繕っても仕方がないだろう」
「それもそうだな」
秀星は笑った。
「さて、そろそろ私は主席合格者にあってくるとしよう」
「ん?」
「入学式が近いからな。いろいろ用事もある。それを済ませてくる」
「そうかい。あんまり威圧するなよ」
「私を何だと思ってるんだ。加減はするさ」
「あっそ」
フォルノスはそれ以上は何も言わずに屋上から出ていった。
一人残された秀星は、空を見上げる。
「……さてと、なんだか雲行きが怪しいんだよなぁ。なんかいろいろ計算をやってたら、アルエストあたりがモヤモヤしてるし……これは本当に色々起こりそうだ」
秀星はめんどくさそうに、しかし楽しそうに微笑んだ。
「せっかくの高校生活。もう残り一年だ。楽しみますかね」




