第九百九十八話
「……すごいデータになったなぁ」
椿が未来に帰って、沖野宮高校の卒業式もそこから終わった。
生徒代表のあいさつをしたのは前生徒会長だった宗一郎であり、魔法省の重鎮としてアトムも言葉を届けている。
ただまぁ、宗一郎の『どこか抜けているところ』というのはかなりの生徒が知っていることであり、メンツの地位やら実力は壮大なのだが、いい意味でバランスが取れた空気だった。
そこからは秀星がつぶやいていた通り、教科書の作成や大まかな新年度の計画を練っていた。
最終的にはアトム自身が大部屋を使って教師陣に説明を行うつもりなので、このタイミングでも問題はない。授業の資料だってアトムが作る。
……あー仕事が増える。仕方がないけど。
まあ、そのような予定で行われるわけだが、三月も過ぎてくると『新入生』も決まってくる。
「……秀星がいるから多少の無茶は通るが、こういうのは今回限りで勘弁してもらいたいものだ」
タブレットを置いて椅子に深く座るアトム。
そのタブレットにはこう記されている。
【新入生240人中、男子生徒40人。女子生徒200人】
まさかの男女比が1:5という意味不明なことになった。
少なくとも採点の段階で不正も間違いもない。
現状、魔戦士の補充方針としては『質』を確保するというものになっている。
学校現場で抱えられる人数は決まっているし、隣国の人口は日本の十倍だ。将来を考えればちんたらやっている余裕はない。
そのため『人格が問題ないと判断された中で、ほぼ実力順に合格にしている』のである。
沖野宮高校の入学試験は魔戦士学校としては難易度が最高クラスなので、別に落ちたとしてもそのデータによっては他の魔戦士学校に通うことはできるので、序数判断で合格不合格を決めても一応問題はない。
「……さて、原因も分かっているが……何も悪いことはしていないからな」
新入生のデータを確認していくアトム。
その新入生の女子生徒200名の内……140名ほどだろうか。やたら『容姿』と『魔戦士としての実力』のレベルが高いのである。
加えて、写真を見ただけで分かるくらい芯が通っているような雰囲気を持っており、正直、高校生が持っているようなモノではないとアトムは判断する。
そして……。
「この140名には職歴があるな。全員が『時島グループ』に所属か……」
さらに言えば、今回の『新入生序列一位』の男子生徒の名字は、『時島』となっている。
「ここまで隠す気がないのも珍しい。まあ、私は好きだがね」
アトムは内心で溜息をついた。
「あとは、星乃の方か」
椿の弟の星乃。
椿は一か月後に来るとしか言っていなかったが、追加の情報が未来の風香からあらかじめ手渡されている。
そこには、星乃の実力を細かく記した(しかもアトムが評価しやすいフォーマットを使っている)データと共に、未来のアトムからの手紙と共に、椿が未来に帰ったことで空いた新三年生の席に、星乃を入れてほしいというものだった。
「……私に頼めば何とかなると思っていないか?」
アトムは溜息を吐く。
まあ、未来のアトムからの手紙には、『星乃は家族構成的に苦労してるから加減してやってくれ。主に姉の影響で苦労してるからな』ということも書かれていた。
実際に見たわけでもないのに全貌が見えてくるような気がしたアトムだが、とりあえず、加減はすることにした。
「……はぁ。あと一年。どうなることやら。面倒なことは秀星にでも押し付けておくか」
秀星も面倒なことはアトムに押し付けようとしているようだが、逆にアトムも同じことを考えているのだ。
醜いことになりそうである。




