第千話
入学式は特にイベントは起こらずに終了した。
新入生だけが体育館に集まって行われる形式だが、まあ、圧巻の一言である。
少なくとも見れば『美少女』と称することができる女子生徒が新入生の六分の五を占める空間とか、正直聞いたことがない。
実力主義、または何らかの鑑定能力によって『素質がある』と判断されたものが入学していることは間違いないが、それでもこの比率は圧倒的だろう。
ただし、この女子生徒たちは、式が始まればおとなしく、そして真面目に取り組んでいるので、新入生の中で妙な『雰囲気』ができている。
まあ、入学式くらい普通に終わってほしいものだが、そういうわけにはいかない学校も中にはあるだろう。
それはともかく、沖野宮高校の入学式は滞りなく終わった。
「思ってたより面白そうな学校だな。敦美」
「そうですね。特に、屋上でしょうか。かなりの圧力を感じます」
入学式が終わり、それぞれのクラス教室で必要なことは済んだ。
学校の校庭では、二人の学生が話している。
男子生徒の方は赤いメッシュが入った黒髪を短く切りそろえており、かなり『自信』に満ちた雰囲気やオーラのようなものを身にまとっている。
名前は時島清磨。
女子生徒の方は、黒髪ストレートの清純系という、まさに王道の美しさを持っている。
名前は須郷敦美。
二人の視線はずっと屋上に固定されている。
「魔力の残り香っていうのかね?それが持ってる圧力が半端ねえな。よほどの化け物が普段から居座ってないとああはならんぞ」
「裏の掲示板によると、この学校の屋上は、この学校の中でも『強者専用』と言えるそうですね。というより、『残り香がキツ過ぎてある程度の実力がないと耐えられない』のだとか」
「なんにしても面白そうじゃねえか。この学校を選んでよかったな!」
とても楽しそうな様子の清磨。
「高等学校における魔戦士学校で、二大学校と呼ばれるのがこの沖野宮高校と天窓学園ですが、天窓学園は魔法省の力がかなり入った『王道』よりであり、その反面、この沖野宮高校は朝森秀星が在籍していることでめちゃくちゃなことを抱えることができます。今回の一年生は我々の影響が大きくなるでしょうが……それすら受け入れるとなると、かなり……」
「かなり?」
「雑ですね」
「だな!」
アトムがいたら『雑で悪かったな……』と苦笑するだろう。
「明日から楽しみだぜ。中学ではロクに強いやつがいなかったからな」
「清磨様のスキルを考えれば仕方のないことかと」
「それだけじゃねえって。まあ、この学校なら強いやつも多そうだ。それに、いろいろ派閥もできていそうだし、どこまで好き勝手やれるか楽しみだ」
「朝森秀星に関してはどうしますか?」
「明日にでも接触しておこうぜ。実業家としては、ユグドラシル・ストアに一枚噛んでおきたい部分はあるしな。それに……今の俺の実力がどれほど通じるのか気になるし!」
「かしこまりました。しかし、今日はもう帰りましょう。仕上げておかなければならない会議がいくつかあります」
「わかってるって!」
清磨は楽しそうにもう一度屋上を見ると、それから背を向けた。
「まってろよ朝森秀星。お互いに楽しもうや」
自信にあふれた雰囲気を振りまきつつ、笑顔で清磨は学校を後にする。
周りを引っ張りまわすことに対して、何の躊躇もなさそうな、そんな笑みを浮かべながら。
それはもう、楽しそうに……。
次回から、『時島清磨の侵略編』を開始します。




