第千一話
「……星乃ってめちゃくちゃ強いな」
「さすが、秀星の息子……」
沖野宮高校には戦える場所が存在する。
魔戦士の本来の存在目的は『モンスターから素材を手に入れて魔戦士市場を活性化させる』ことなので、基本的に魔戦士同士で叩くことは推奨されていない。喧嘩する暇があるのならダンジョンに行って戦ってこいということだ、
しかし、それでは解決できないことも多いので、喧嘩する場所というものは用意されている。
というわけで『星乃ってどれくらい強いの?』という感じになったので、星乃VSいろいろな生徒で戦っていたのだが……。
めっちゃ強い!
「雨属性という天候操作。接近されても対応できる高い近接戦闘能力……」
「ただ、雨属性といっても得意な天気が『暴風雨』なのは母親譲りなのかな」
「そうじゃね?今の風香ちゃんなら風属性に水属性を混ぜて暴風雨みたいなものを出すことだってできるだろ」
「そう考えるとあの強さはかなりすごいね……」
「しかも、範囲をめちゃくちゃ狭く設定して天候を作ってるぞ。あんなに雨が降ってるのに、自分がいるところだけ晴れてる」
「あれだけ制御する能力が高いってことは、建物の中みたいな狭い場所でも使えるだろうね……」
秀星と風香仕込みの実力だ。
もちろん椿だってそれ相応に両親から教えてもらって強くなっているのだが、椿はかなり動き回ることが多いし、いろいろな人とチームを組むこともある。
そして戦い方の『微調整』を行うのがセフィアなので、それに基づいた『可愛らしい椿』を構築するために戦っている。決して椿の戦闘の目的は『強くなること』と認識されていないのだ。
まあ椿はそれでもめっちゃ強いけどね。
で、星乃は『長男』という意識がどこかにあるのか。秀星からの指導を実直にこなしている。
ただまあ、別に朝森家そのものは魔戦士にとって名家でも何でもない(一応人脈はそれ相応にあるが)ので、別に受け継ぐものとかそういうものは一切ない。
彼にとって祖父である高志の戦闘スタイルに関しては、もう彼にしかできないだろう。ギャグ補正を織り交ぜた徒手空拳となると、最も重要なのが『精神構造』なので、受け継ぐには値しない。高志も教えるつもりはないだろうし、そもそも教えることなど不可能なので、強くなるとすれば両親からいろいろ教わった場合だ。
というわけで、秀星と風香から生まれた子供という共通事項を持っていても、椿と星乃はその考え方が全然違うのである。
「図書館の中で暴風雨とかできるんだろうな」
さすがにそれは基本的にはやりません。
「……なんか、ちょっと戦っただけでかなり考察されてるな……」
星乃は少しげんなりしてきた。
椿がいる空間に自分が飛び込んだ時の空気というものは、正直『楽』だ。
椿が空気を常にかき回しているからである。
そしてそれゆえに、『最初から邪険にされない』し、秀星との関係もいろいろあるので、星乃は大体、最初からちゃんと見られているのだ。
別に朝森家には引き継がなければならないような誇りなどないので(そもそもあったとしても高志あたりが地平線あたりに殴り飛ばしているだろう)、そういう意味では自由にやっているが……いや、悩んでいるような言葉を選ぶのは止めよう。正直、彼はもうそういうのには慣れている。
ただ、過去に飛んでもそうなるというのが想定外だっただけだ。
「……ただ、まだこの学校でも『強者』と呼ばれる人にはまだあってないな」
去年の三年生の中にも強者はいた。
その生徒たちはもうすでに卒業していないものの、二年生、三年生には強い生徒がそれ相応にいるのだ。
二年生の中でも行動力がある者が現在星乃に絡んでいる程度で、二年生の中では最強とされる林道国枝はもちろん、三年生には『剣の精鋭』の現役のメンバーや元メンバーがかなりいる。
しかし、まだそれらの生徒は星乃に対して絡むことはあれど、戦いに来るということはない。
魔戦士としての本職を全うするためにモンスターを相手にするだけ。と言えばそれまでだが、そういうものではないだろう。
「……一年生の教科書を読ませてもらったけど、まずは精神的な部分から入るところも多かったし……やっぱり、社会そのものが変化したばかりだと、精神的な教育は必要なのかな。未来ではそこのところがそれなりに排除されてるし」
結果として、学校全体が理性的になっているともいえる。
……だからこそ、椿や高志のような人間が入ってくると『……(汗)』という感じになってくるのだ。
「それにしても……新入生かな。すごく強い生徒がチラチラ見てきてるのがなんだかねぇ……」
普通に見られる経験が多い星乃。
当然、『隠れてみようとする行為』もある程度感知できるのだ。
……未来の秀星からは、『退屈しないぞ。あの学校は』といわれていることもあるので、視線は気になるものの、それと同時に、楽しみにしておこうと考えたようである。




