第九百九十六話
火が消えたような感じ。といったところだろうか。
遊園地の状況はそんな感じであった。
確かに中にある様々なものはきらびやかであり、写真の撮り方によってはかなり映える部分もある。
だが、どこか『それを盛大に楽しもう』という空気が薄れているのだ。
それらの空気が椿によって生み出されていたのは間違いないし、確かに遊園地だからといって、誰もかれもがずっとはしゃぎまわっているということはほとんどない。だって疲れるし。
遊園地側としては、『まあこれが普通だよね』と思ったくらいだ。
椿一人がいなくなったとしても、遊園地としては稼働サンプルを取ることは十分可能である。
生徒たちは遊んでいるし、十分楽しんでいる。
……ただ、どこか『火が消えたような感じ』がすることは、まぎれもない事実である。
「……はぁ。なんだか。体に力が入らないというか……何なんだろうね」
「別に、年から年中、椿のために生きていたわけじゃないが……確かに、なんか活力が低下してる感じはあるな」
秀星と風香は相変わらずベンチでダラダラしていた。
もちろん、二人もそれ相応にアトラクションで遊んでいるのだが、まったりしている時間の方が多い。
とはいえ、ある意味で椿の影響を最も大きく受けている二人だ。
根本的に言えば、風香は秀星に対して恋愛感情があるわけではないし、それは秀星もまた同様。
だが、おそらく椿という存在を軸にしてつながりを感じている部分はあるだろう。
そんな恋愛意識を感じていない二人であっても、椿という存在は容赦なく動かしていく。
現実世界というものは、何もしなければ本当に何も起きないのだ。
受け身でただ待っているだけでは何も得ることはない。まあ、人生というものは基本そんな感じで十分なものだ。
しかし、その中で、自分から大きくかかわっていこうとする椿がいるとなると話は違う。
圧倒的な行動力と、そして踏み込んでも拒絶されない不思議な力で周りを動かすのだ。
……遊園地は全体的に、その椿の効果が大きく働いていたのだろう。いなくなれば活力が落ちるのは当然である。
その影響を最も大きく受けていたということもあって、椿が帰った後の秀星と風香はダラーッとしていた。
「……椿ちゃんのあの活力って、どこから湧いてたんだろうね」
「さあ……ただ、ここからはちょっと、自分たちで上手くコントロールする必要があるな」
このままボーっとしているだけでかなり時間をつぶしてしまう。
……おそらく椿は五年間の間で現れないわけではないだろう。
だが、来るのにかなりのコストが必要になるはずで、簡単ではない。
というわけで、自分たちでどうにかしましょうね。




