第九百九十二話
「花火って綺麗ですね!」
ドカドカ打ち上げられている花火を見て興奮している様子の椿。
セフィコットがビデオカメラを回してはしゃいでいる椿を収めており、当然花火の方も撮っている。
……一応イベントのようなものである花火を記録して問題があるのかどうかという話があるのだが、今回の圧倒的に派手な花火のほとんどは秀星が用意したものなので問題はない。
『万物加工のレシピブック』を持つ秀星にとって、花火を用意することなど造作もないのだ。この神器の名前を出すの何か月ぶりだろ。
「そうだね」
自分に身を寄せる椿の体に手をまわしつつ、風香もそうつぶやいた。
風香自身、そこまで花火というものに興味を持っているわけではない様だ。
しかし、セフィコットが頑張っている花火ということもあって、いろいろ目で楽しいと思える部分はあるようだ。
椿が隣にいるし、こうなった風香自身、いろいろなことが楽しく感じるだろう。
「……ねえ秀星君。なんか、さっきからモヤモヤしてない?」
「ん?ああ……頭の中でいろいろ計算してたんだよ」
「計算?」
「俺はいつも、ある『保険』を考えていてな。結構予定とか立ててるんだが、その影響で計算出来たことなんだが……」
「どういう内容なの?」
「……椿」
「む?」
「未来に帰るの、明日じゃなくて今日じゃね?」
「むむ?」
秀星の言葉をかなり多くの生徒が聞いていた。
で、その言葉に『え、マジ?』という感じになっていた。
そう考えた時だった。
「ね、ねえ、なんか、空間に裂け目ができてない?」
誰かが空のある一点を指さした。
秀星もそこを見る。確かに、そこには亀裂が入っている。
……次の瞬間、亀裂を突き破るように、四角錐のようなかなり長めのマシンが飛び出してきた。
全員が『なんだあれは!』と思っている中、なーんとなくわかっているものは『うえぇ……マジか』といった様子である。
そのマシンはちょっとだけ空を飛び回ったあと、秀星たちがいる広場の近くに不時着する!
「……ねえ、あれ、事故ってない?」
「明らかに不時着だったな」
ただ、マシンからアームがいくつも出てきて、体勢を自分で立て直した。優秀なAIである。
そして、操縦席のカバーが開いた。
「いつつ……やっぱり慣れないことはするもんじゃないなぁ……」
中から姿を現したのは……ラターグだった。
「ラターグ!?」
「ラターグさん!?」
一部のラターグを知っている生徒や職員たちは驚いた。
「……この時間のラターグじゃないな」
秀星はとりあえずそういった。
乗っている物はタイムマシンだろうし、現代のラターグは現在忙しい状態だからね。
「そういう事だよ秀星君」
「で、どういう感じなんだ?」
「あー……未来の君から。『予定時刻に近くなっても、椿のタイムマシンの起動信号が受信できない』って言われてね」
「……椿?」
「え、ええっ!?帰るのって明日じゃないんですか!?」
「いやー、実はね、椿ちゃんがもらった書類なんだけど、椿ちゃんの手に渡る前に僕がコーヒーをぶちまいちゃってね。なんとか内容とレイアウトを確認して丸コピしたはずなんだけど……」
お前の仕業かあああああ!
という雰囲気になった。当然である。
「ラターグさんの馬鹿!」
「ごめんごめん」
「あと、なんで不時着だったんですか?」
「それがね。まず、燃料の作成コストが高くて椿ちゃんのマシンを使うように言われたのと、椿ちゃんがマシンの操作方法の必要な部分はわかっているという前提があるわけ」
「ふむふむ」
「だから僕、行きの燃料と離陸の方法しか用意されてなかったんだよ」
「自爆テロみたいですね」
「そう突っ込んだら未来の秀星君から『お前なら問題ないだろ』って言われた」
鬼畜。
「というわけで、椿ちゃん。残念ながらもうそろそろ帰らなければなりません」
「……むうううう!」
それは困るですうううう!といった雰囲気で吠える椿。
「こうなれば仕方がないですね。とりあえず記念写真を撮りまくりますよ!」
多少の理不尽は仕方がない。
この程度の理不尽は未来ではよくあることだ(勘弁してくれ)。
「早速準備ですううう~~~っ!」




