第九百八十八話
「zzz……」
スヤスヤ眠る椿。
個室が用意されているので、そこで一人で寝ている。
そんな椿の傍で、一体のセフィコットがジーッとビデオカメラを回していた。
なお、リアルタイムでどこかに繋がっている。
(さてと……私も編集しておきましょうか)
別の空間では、セフィアがビデオカメラの情報を取得していた。
それらの情報の中から様々なものを選びつつ、一冊のアルバムを作り上げていく。
(笑っている顔。真剣な顔。頬を膨らませていたり怒っていたり……感情豊かですね)
セフィアはアルバムを作りながらそう思った。
感情を表に出すことに対してなんの躊躇も羞恥心も持たない椿は、誰かと接するときは何らかの感情が表に出てくる。
……まあ、一人でいる時でもニコニコしているときがあるので、あまり深く考えない方がいいだろう。
(あえてそれらの共通点を挙げるとすれば……椿様にしかできないやさしさ。といったところでしょうか)
余裕があって、他人に興味があるから、関われる。かかわっていくことができる。
だが、人の話をしっかり聞くからお節介にはならないし、無駄な遠慮もないため自分の言いたいことははっきり言う。
自己中心的な部分は確かにあるが、他人の考えもしっかり尊重する。
やさしさ。というのが一番近いか。
(生来の特徴でしょうね)
メイドとして最高レベルの性能を持つセフィアからすれば、人間というものは、生まれた頃からほとんど変わらない。
確かに倫理観や言語能力は獲得する。
だが、それでも生まれ持った性質というものは、大して変わらないものだろう。
椿は生まれた時からきっとこんな感じなのだ。
(しかし……本当に、いろいろな人とかかわりが多いですね)
一時期、この時代での魔戦士というものを学ぶために、沖野宮高校の生徒に限らず、様々な魔戦士たちとダンジョンに潜っていた。
当然、それ相応に親しくなれば椿のパーソナルスペースは劇的に狭くなる。
可愛らしい椿によって来るのは男性だけでなく女性も同様であり、魔戦士側の実力にもかなり幅があるが、とにかく、たくさんの魔戦士と一緒にダンジョンに潜っている。
(……今の少しだけモヤモヤしている椿様は……いけませんねぇ)
レポートに関することであるとセフィアは分かっている。
そして、『まずは』神風刃に取り組むべきと判断したことも事実である。
未来で椿が強くなることは求められるからだ。
だが、椿が過去で本当に学んだことは、そういう事ではない。
(朝森椿という人間にとって、『人間らしい』とはなんなのか。誰の尺度にも縛られず、どこにでも飛び込んでいく椿様にとって、『人間らしい』とはなんなのか……秀星様も風香様も、両親としてはまだまだですね)
セフィアは一冊のアルバムを作った。
写真はこれまでに何度も候補を決めている。今更データを集めることなどたやすい。
「……はぁ。結局、メイドである私の仕事ですね」
身の程を知らない少年少女のために、身の回りを知るメイドが、手を差し伸べよう。




