第九百八十五話
「フードコート全制覇ですううう~~~っ!ゲエエエエエップ!」
既視感がある咆哮がフードコートに響き渡る。
「椿ちゃん。絵面がやばいからちょっと自重しよう!」
近くにいた女子生徒は明らかにやばいと感じて椿を止めた。
「なんでですか!おいしいものはたくさん食べるに越したことはないですよ!むっふー!」
たくさん食べて興奮している様子の椿。
かわいらしいことは認めよう。
ただ、それをぶち壊すほどのマイナスが発生しそうで怖いのである。
……まあ、椿はギリギリまでやばそうな感じになっても一戦は越えない都合のいい体質なので周囲の危機感は薄いと言わざるを得ないが、それでもギリギリまでやばそうになるから余計に嫌なのだ!
「ハハハ……まあ、確かにおいしいんだけどね」
近くの女子生徒もパフェを食べている。
「む?……あ、ポッキーですね!」
パーティーで使うようなお菓子が大量に入った袋をガサゴソやっている椿。
どこで購入したのかは不明だが、まあ椿のことだ。どうせ適当に買ったのだろう。そうに違いない。
「椿ちゃんってポッキー好きなの?」
「よく使ってましたよ」
「使う?」
「はい!ポッキーゲームをやってました!」
なるほど。
「へぇ……」
「やってみましょう!」
開封してポッキーを口にくわえる椿。
「むふふ~♪」
ニコニコしながらポッキーを女子生徒に向ける椿。
女子生徒はごくりとつばを飲み込むと、その反対側をパクリ。
次の瞬間。
ポリポリポリポリブチュウウウウウウウウウ!
「んっ!?んんんんっ!?」
椿が超高速でポッキーを食べながら女子生徒に迫って、そのままディープキスに移行してしまった!
周りにいた女子生徒が口の中にあったものを吹き出したが、そのようなことは今はあまり関係はない。
「むうううううう!……む?」
私は今何をしていたんでしたっけ?といった様子で首をかしげる椿。
椿の勢いが収まったことで、女子生徒は解放された。
「や、やばっ……椿ちゃんの唇。めっちゃ気持ちいい」
再度周りにいた生徒が吹き出した。
大変気持ちはわかるが……あまり公言するものでもない。
「つ、椿ちゃん……ポッキーゲームの時は大体そんな感じなの?」
「むっふふ~♪負けたことはないですよ!」
大きく胸を張る椿。
……まあ確かに、ポッキーゲームで負けたことがないというのはなんだかすごく……すごい話だが(語彙力)、こればかりは椿の強さだろう。
彼女の周りにはどこか『余裕』が確立しているほど精神が強い人間が多いが、椿はそういう領域では無敵である。
「ほ、本当に負けたことがないの?」
「はい。中学校では無双してましたよ!全校生徒を相手に勝ちまくりました!」
どや顔の椿。
……思春期の少年少女になんてことを。
「あ、あはは……それはすごいねぇ……」
椿がどういう人間なのかはわかっているし、まあ、どうせそうなのだろうとは思っていたが……あんまりである。
「というわけで……みんなもやりましょう!ポッキーはまだまだたくさんありますよ!」
キラキラした目でそんなことを宣言する椿。
先ほど負けて腰が抜けた人が横にいるのでどうしようかと思ったが……よくよく考えれば、キスをするチャンス!
我先にと女子生徒が群がり(男子生徒はぶっ飛ばされた)、そして次々と轟沈していった。
……死屍累々。とはよくいったものである。




