第九百八十三話
椿に『自由にしなさい』といった場合、本当に結構自由にするタイプだ。みんな知っていると思うが。
スタミナが抜群に高く、常にテンションが高い。
「おじいちゃん!来夏さん!あのエフェクトバスケっていうスポーツ。楽しそうですよ!」
「おおっ、光の軌跡が見えるボールを使ってプレイするのか。見ている側っていうか、かなり見栄えがいいな。やってみようぜ!」
「っしゃあ!ゴールぶっ壊してやる!」
……おいちょっと待て、お前たちどこから湧いた?
「……そういえば、おじいちゃんたちはこの遊園地にどうやってはいったんですか?」
「普通に正面から入ってきたぞ」
「だな。なんかパスが高かったけど、まあ払えない額じゃないしな!」
「正式なオープンはまだ先のはずですよ!?」
「俺は息子と孫がいるからって言ったら入れてくれたぞ」
「オレはチームメンバーや元関係者がたくさんいるって言ったら入れてくれたぜ!」
「緩すぎませんか!?」
「椿。いいか?」
「む?」
「細かいことはいいんだよ!」
「それもそうですね!」
いいわけないでしょ。
……まあ、この二人が出入り口のゲートに訪れた時点で、あまりかかわりたくないのも事実である。
それに、アトムあたりから『秀星に似ていて特攻服を着たやばい男と、長身で赤髪のゴリラがやってきたら通してやってほしい。彼らに理屈は通用しない』という伝言は来ているだろう。
というか、ゲートで止めたところで無駄だ。バールで不法侵入してくる。
……で、三人はエフェクトバスケというらしいところに入っていった。
全員がスポーツウェア(高志は魔改造されているが)に着替えてコートに立つ。
「普通にシュートしてみますよ!とりゃ!」
椿が右手で持ったボールに左手を添えて、シュート!
ボールが黄色い軌跡を描いて、そのままゴールの中に入っていった。
「おおっ!きれいです!」
「結構普通に入るんだなぁ……」
ボールはそれ相応の数が用意されている。
高志はその中の一つを片手でつかんで、ポイっと放り投げる。
ガンッ!と天井にぶつかった。
「あっ」
「どこ狙ってるんですか!」
「いやー……昔から球技はそこまで得意じゃないんだよ」
「そういうレベルじゃないですよ!?」
「加減ができねえんだよなぁ……昔は千球に一回は入ったんだが……」
これからおそらく、高志に精密作業が任されることはないだろう。
「来夏もやってみろよ」
「おう!」
来夏はボールが置いてある場所に行くと、そのままボールをつかんで、ゴールを見ずにポイポイっと投げていく。
何度も何度もゴールにボールが入っていった。
「す、すごいですううう~~~っ!大道芸でもこんなことはないですよ!」
大道芸というより悪魔の御業である。
「ハッハッハ!オレの『悪魔の瞳』の力にかかりゃあこんなもんよ!」
圧倒的な視覚情報収集能力を有している来夏のスキル。
あとはコントロール能力さえあれば、バスケットボールをゴールに入れるのは楽だろう。
「あとはダンクだな!」
高志はボールを手に取った。
そして、そのままドリブルしながらゴールに向かっていく。
意外とドリブルはきれいである。
「どりゃああああ!」
そのままボールを持ってジャンプ。
ダンクを叩き込もうとして……ゴールの縁に腹がぶち当たった!
「おぐふぅっ!」
「ええっ!?」
「おじいちゃん馬鹿すぎるです!」
椿ちゃん遠慮ないね。
「お……思ったよりゴールって低いところにあるんだな」
「もはやそういう問題じゃないと思うぞ。というか、バスケットをやるの久しぶりすぎないか?」
「軽く……十五年はボールすら持ってないな」
「ですよね」
「あと、ゴールリングが曲がってるぞ」
「えっ?……あ、本当です!」
かなり体格がいい高志の全力の突撃を受けて、ゴールリングが曲がっている。
「うーん。あれって弁償か?」
「多分払えますけどね」
「……あれ?なんか自動で戻ってるぞ!」
高志がそう言ったので改めてみると、確かに『ググググッ……』といった感じで戻っている。
数秒で元通りになった。
「すごいです!」
「何回ぶっ壊しても大丈夫ってことだな!」
壊すな。
「よっしゃあ!ここからは全力で……いづつつ……ちょっとタンマ」
「大丈夫か?高志」
「ああ、沙羅のお尻ぺんぺんと比べりゃな」
「おばあちゃんってそんなにムキムキなんですか!?」
転移神だからね。
「そうだぞ。ああ見えて体重が――痛ァ!?」
お尻を抑えて悶絶する高志。
「えっ!?」
「く、くそ、遠距離でやってくるとは……」
沙羅は転移神である。
ただ、解釈によっては転送も可能であり、お尻ペンペンをするのに接近する必要はないのだ。まさかお尻ペンペンで空間を超越するような奴は世界広しといえど沙羅くらいだろう。
「おばあちゃんもすごいんですね……」
「朝森家ってまともなのがいねえな」
「安心しろ。親父は苦労人だ」
苦労人はまともなのか……。
「なるほど。正常だな」
「正常ですね」
まともなのか!
「よし、ふっかーつ!」
高志が立ち上がった。
……こいつの体の構造はどうなってるんだろう。
いや、それは三人全員に言えることか。
楽しそうだからいいね。で済ませていいのか不明だが、答えが出ないのが『ギャグ補正』という存在だ。
結論。しーらね。




