第九百八十二話
多くの遊園地が魔法省によってテコ入れされている。
魔法に関する要素を取り入れることでどうなるのかという実験と、一部の魔法具を大量に生産できるメーカーの戦略もある。
安全管理という点では絶対に考えなければならないのが遊園地というものだが、魔法省が全力で取りかかり(実はアトムだけという事実を知るものは少ない)、秀星が最終的に調節したことで、『ぶち破るのなら神々くらい連れて行かないと無理だこれは……』と言いたくなるようになった。
「むひゃあああああああ!早いですううう~~~っ!」
ジェットコースターに乗る椿が絶叫している。
そして、ジェットコースターの椿の傍では『うわっ!おちるううう~~~っ!』といった様子で耐えながらビデオカメラを回すセフィコットがいる。
そのいろいろなカメラを回しているセフィコットがジェットコースターにしがみついているのだが……不思議なことに、何もしていない奴だけが吹っ飛んでいくのがセフィコットスタイルである。何もしていない個体はドジ属性が発揮されるのだ。
……まあ、ジェットコースターから飛ばされるのはドジというより災難だが。
「むふふ~~~っ!遊園地はとても楽しいですね!」
椿がはしゃぎながらいろいろなアトラクションに回っている。
……ちなみに、現在いる遊園地はかなりの金が注ぎ込まれて作っている大型のもので、まだ正式にオープンしていない。
プレオープンということで呼ばれているのだ。
……沖野宮高校の生徒全員が!
「……確かに椿にいい思い出があるといいとは思ったが、まさか、全校生徒を巻き込んでこんなツアーになるとはな」
「しかも二泊三日で、椿ちゃん未来に帰るのはツアー終了と同じくらいだもんね」
秀星と風香はジェットコースターの近くのフードコートでバニラシェイクを吸いながら椿を見ていた。
「最高レベルのパスポートが魔法省の全額負担だったな。俺たち一円も払ってないけど」
「校長先生が頑張ったみたいだよ」
「……あの人凄いんだな」
「それはそうだろうね。魔法が表になってきて、学校の深いところにまでかかわっていると判断された学校は校長がほぼすべて変わってるみたいだけど、沖野宮高校の校長先生だけは、魔法が関係している学校の中で変わってないような人だし」
「それだけ権謀術数とかにも慣れてるのかね?」
「それはわからないけどね」
遊園地に来てまでこんな生々しい話をするあたり、秀星も風香もつかれているのだろうか。
「……椿ちゃん。楽しそうだね」
「だな。めちゃくちゃアトラクションが多いけど、大体誰かがいるからな」
「三日間で何周するんだろ」
「それは分からないが……まあでも、急に決まった全生徒旅行だけど、楽しいんだからいいんじゃね?」
「それもそうだね」
椿をボーっと見ている二人。
その先では、椿が『ハチの巣にしてやるですううう~~~っ!』と言いながらディスプレイに映る怪獣にサブマシンガンを向けてトリガーハッピー状態だった。
あまりにもうるさすぎるので係員に注意されている。
「さすがに狭い空間ではしゃぎすぎだな」
「でもまぁ……椿ちゃんだしね……」
とってもきれいな目で喜色満面ではしゃぎまわる椿。
時々女性の係員に抱き着いたりしているが……。
「あの椿ちゃんの抱き着く行動は一体何なんだろうね」
「アトムはマーキングじゃないか?って言ってたけどな」
「マーキングって……」
それだと椿ちゃん、結構独占欲強そうなイメージになるのだが……いや、自分が友達であることを押し付けることは多々あるので別に不思議ではないか。
「……でも、まあ、よかったね。楽しい思い出になりそうだし」
「そうだな」
楽しそうにしている椿を見て、二人は微笑んだ。
ただその反面……椿の内心がすごくモヤモヤしてきていることに、気が付かないものである。




