第九百七十六話
「うりゃああああああ!」
椿が興奮している。
野球で着るようなユニフォーム姿で。
「むっふーん!宣言した通り、開幕ホームランですよ!」
……あっそう。
というわけで、椿はスポーツ中であった。
『スポーツとか、楽しそうですね』という椿。
身体能力が『魔力込み』で高い連中がスポーツをやるとどうなるのかということもあって、現在椿はユニフォームを着て試合中なのだ。
ちなみに参加は全員女子である。交渉で男子は負けた。もうちょっと頑張れ。
「椿ちゃん。一周回ってこないと」
「あ、そうでした」
野球をやっている自覚はあるのだろうか。
「まさか。初球から打ってくるなんて……」
190キロのスライダーを投げた英里は呆然とした。
「むっふふーん♪」
一周してきて胸を張る椿。
とても楽しそうである。
……まあ、続く打者(に加えてキャッチャー)にとっては恐ろしいことこの上ない。
一応、キャッチャーの防具はガチガチである。
どれくらい強いかというと、試しにということでセフィアがスナップでマッハ1でぶつけてみたが、それでもびくともしないくらいだ。セフィアも防具もある意味で問題がありそうである。
……というわけで、ベンチに戻ってきた椿は応援に回るわけだが、続く打者は打てませんでした。
椿の応援があるからと言って普段できないことができるわけではないのである。
「仕方がないですね。私が完封してやります!」
元気な様子の椿。
「さあ、やってやりますよ!」
胸を押し上げるユニフォームから放たれる椿の投球。
なんと……ふ~らふ~らしていてつかみどころのない球だった。
というか物理法則も無視している。
「こらーーーっ!何ダラダラしてるんですか!しゃんとしてください!」
椿が怒った。自分で投げたのに!
球は『!?』っとなって、バヒューン!とキャッチャーミットに突き刺さった。
「……」
バッターもキャッチャーも呆然である。
「す、ストラーイク」
審判も理解できていないようだ。
「ムフフーン!どうですか!」
褒めてほしいのかツッコミを入れてほしいのかいまいちわからない。
「このまま完封してやりますよ!」
まあ、楽しそうなのでいいとしよう。
★
椿ちゃんはスポーツ万能である。
バスケットボールならシュートはどこからでも入るし、自分の胸がゴールにくるくらいジャンプしてダンクを叩き込む。サッカーならハーフラインからシュートしてゴールに突き刺さり、バレーボールは彼女が入ったチームは失点ゼロ。テニスや卓球も失点ゼロでストレート勝ち。ゴルフはどんなコースでも理想上最短でホールに入る。
まあ、こんなのにどうやって勝てというのかという話だ。
運動神経が高すぎる上に、胸がよく揺れるのでなんだか目のやり場に困るのである。
普段きている黒ロングコートはその位置をしっかり固定してくれるのかそうでもないが、普通の運動着では胸はものすごく揺れるのである。
そして、それに対してなんの羞恥心もないのである。こっちが問題だ。
「むっはー!楽しいです!」
顔中に喜びの感情を浮かべて楽しんでいる椿。
レポートのことをすっかり忘れて無双状態である。
「椿ちゃんってすごいねぇ……」
「あの胸……やばいね」
「ブルンブルン揺れるもんね。普段きてるあのロングコート、すごいやつなんだ……」
「あの身長でカップすごそう……」
「Fって言ってたよ」
「え、今の風香ちゃんと同じじゃん」
「遺伝か……」
女子って遠慮ないね。
「椿ちゃんって胸すごいよね。未来で何かやってるの?」
「むううう……お父さんとお母さんと一緒に寝てるからですかね?」
絶対に関係はない。
あと、やれと言われても無理だ。それは椿ちゃんにしかできない。
「そ、それは無理かなぁ……」
「む……それなら、よくセフィアさんに揉まれてましたよ」
「え、そうなの?」
「はい!」
満面の笑みを浮かべている椿。
「それって……この時間に来てからも?」
「そうですよ!」
「!」
口をあんぐりと開ける女子生徒たち。
「……絶対許すなあああああ!メイドの立場を利用して胸をもんだあいつを許すなあああああ!」
「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」
女子生徒たちは心を一つにした。
まあ、セフィアに勝てるというわけではないんだけどね。




