第九百七十五話
まさかのアポイントなしの突撃ハグという、椿以外の人間にはできない。というか椿以外の人間がやったらかなりヤバそうなことになる夜は終わった。
知り合いの沖野宮高校の女子生徒のところには大体突撃したのではないだろうか。
……まあ一部、男の娘属性の男子生徒のところにも走っていったが、それはそれとしよう。
「にゅうう~……」
とっても元気な椿は基本的に起きていることが多いのだが、寝るときは両親に挟まれて寝ているため、寝るということに関しても結構やる方だ。
ちなみに寝顔もとってもかわいいので、椿が寝ているときはなぜか周りが静かになる。
学校の教室の休み時間というものは寝ている生徒が一人くらいいるものだ。
レポートを作成するために作っているメモを広げて、なんだか疲れてしまったらしい。スヤスヤと寝ている。
「……過去留学のレポートか。そんなものがあるんだな」
屋上で時間をつぶしていた秀星のところにフォルノスがやってきた。
同じ丸テーブルの反対側の椅子に座って本を読みながら秀星と話している。
「ああ。椿は『神風刃の課題』っていうテーマでレポートを書いてる」
「過去に学んだことをもとに課題を設定する、か……そうか、もう帰らなければならない時期が近いからか」
「椿はすっかり忘れてたみたいだけど」
「……ん?制度上で必要じゃないのか?」
「いや、未来の聡子との約束らしい」
「ああ、そういうことか」
フォルノスも正確に状況を理解したようだ。
「生徒会室にも持ってきて作業をしていたな。国枝がチラ見して訝しげにしていたが」
「訝しげ?」
「ああ。まあ、だんだんアイツの考えが分かってきた私もなんとなく言いたいことは分かったが……現段階のレポートだが、一応形にはなってるみたいだな。レポートなど書いたのは何千億年前かわからんが」
「だろうな」
神祖であるフォルノスの存在年数は圧倒的だ。
そもそもレポートを書くという文化がある国に生まれなければならない。単なる神なら天界で過ごす上で何かしらレポートが必要になることもあるが、神祖はそのようなこともない。
「え、でも、生徒会の仕事でレポートが必要なんじゃないか?」
「国枝が全部やってる」
「本当に優秀だなアイツ」
「私の信用がないということを信用しているからな」
「頑張れよ会長」
「無理なものは無理だ」
バッサリである。
「……まあ。それは国枝に合掌するとして……椿のレポート。どう思う?」
「いろいろな人間の力を借りているのは分かった。少なくとも作り慣れている人間の助言はいろいろ受けているだろう。その軸がぶれないのであれば、この学校の生徒からの様々な助言を考慮することができる。椿にはその才能はあるだろうし……まあ、結論を言えば、特に問題はないんじゃないか?」
「だよな」
誰に頼ればいいのかわからない。ということはあるだろうが、その場合はレポートというものをよく知っている人間に頼りに行って聞くことはできるのが椿だ。
細かいところを埋めていく作業のようなものだし、問題ないだろう。
「……椿のレポートか」
問題はないといいつつも、どこか思うところがある様子のフォルノス。
まあ、きっと深刻な問題ではないだろう。
ただ……どこか、引っかかるところがある。
その程度の話だ。




