第九百六十八話
「zzz……♪」
スヤスヤと眠っている椿。
散々追い掛け回されていたが、現在はベッドですやすやと眠っている。
(フフフ。様々な拠点を用意していますからね。こういう時に役に立ちます)
聡子が黒い笑みを浮かべながら内心で呟く。
椿をどうにかして手に入れたのは、どうやら聡子のようだ。
なんだか椿争奪戦のような形になっているが、さすがに、『どこかに身を隠す』ことが必要だろう。
そう考えると、膨大なセフィアの端末が関係している風香の方が有利そうだが、セフィアはこういう争奪戦では手を貸さない。
……だって最高端末が自分のものにしたいと考えているからだ。手を貸すはずもない。
(後はあの手この手で私に目が向くようにしましょうか。さすがにこの時間にとどまってもらうのは、未来の秀星さんが動き出しそうですからやめておくとしても、未来の私に目を向けやすくすることはできるはずです)
聡子はこの魔戦士社会においてはかなりの権力者である。
みんなのお母さんなのでいろいろなところにかかわりがあるのだが、子供を抱えたりする場合もあるのでかなりの拠点を普段から有している。
その拠点の一つを今回は使っているのだ。
ベッドに椿を寝かせているおり、時間を目いっぱい使って頑張っている。
(フフフ……未来の私の考えはよくわかります。このレポートを約束した理由は、椿ちゃんがこれから強くなるためということもあるでしょう。しかし、八割くらいは『過去にいる最終段階で、椿ちゃんと私に強い接点を作っておくこと』です!)
椿は基本的に素直でおバカさんなので、新しいことはあまり覚えられない。
いや、覚えているかもしれないが、『その場その場の思考』に影響するのは近い時間帯の関係性である。
というわけで、このように頑張っているのだ。
ここで頑張っておけば、未来でも思いっきりナデナデできるからである。
(この拠点は数ある中でもトップシークレット!フフフ、どこからでもかかってきなさい!)
聡子がそう考えた時だった。
椿がいるベッドの傍に、扉が出現したのである。
「!?」
木製で、かなりアンティークとしてもこだわりがある扉だ。
ガチャ、と音がして開いていく。
「……やはりここにいたか」
アトム、降臨!
「……」
「聡子の拠点だったな。悪いが……いや、何も悪いとは考えていないか。椿は預かっておくぞ」
「なっ……」
「じゃあな」
アトムは布団を引っぺがして、やさしく、かつ素早く椿を抱きかかえると、そのまま扉の向こうに消えていった。
呆然とする聡子。
「……なっ、は、反則ですよ!」
確かに、これではどうにもならない。
どれだけ遠くに隠しても、その場所がわかってしまえばもうアウトだ。
おそらく、非常時に椿がどこにいるのか、もう今の段階で、アトムは椿にマーキングをつけているだろう。
もう、通用しないのだ。
「くっ……仕方がないですね。未来で第二ラウンドといきましょうか」
まあそれでもあきらめないのがお母さんという生き物である。
……過保護と過干渉を勘違いすると嫌われるから、そこだけは気を付けておこうね。




