第九百六十四話
神風刃も、広義的には魔力を使った戦闘技術である。
そして、椿感あふれるレポートを読む限り、神風刃は空気そのものを生み出して風として放出している。
「単純に考えれば、作る空気の量を増やせばいいんですか?」
「雑に言えばそうだけど、さっきの鋼鉄ゴーレムはただ空気の量が増えたからと言ってダメージが入るわけではないのよ」
「む?」
「鋼鉄っていうのは『圧力』に強いからね。単に空気を作って飛ばしても、後ろに飛ばせるだけで倒せるわけではないの」
「むう……」
鋼鉄の人形。というモンスターがどのような厄介さを持っているのか。ということだ。
まず、鋼鉄という頑丈さ故、押される力に対しては強い。圧力に強いというのはそういうことだ。
さらに、材質的に斬撃にも強い。
そして人形ゆえに、内部にコアのようなものがあるのだが、人間ほど急所が多いわけではないので、単純な打撃にも強いのだ。鈍器で殴りまくったからと言って勝てるものでもない。
「むっ!……貫通力ですね!」
「そういうこと。ただ、風でそれを作るのは難しいんだけどね」
ウォーターカッターのような例もあるので、最大の貫通力を得るために固い個体が大量に必要というわけではない。
広義的に言えば水と空気は大して変わらないものだが、抵抗力が大幅に違う概念であることも確かなのだ。
まあ、ウォーターカッターだって、硬い物質を水圧で高速で発射するから切れるということであって、硬い物質が本当に必要ないというわけではない。
確かに水圧という言葉もあるので、『破壊力』は馬鹿にできない。
だが、人間の感覚によるところが大きい魔法という概念で、まんべんなく圧力をかけるというのも難しい話だ。
「でも、空気を使って貫通力を得るって、どういうことなんですか?」
「貫通力を強化する付与魔法を使うということよ」
「こだわりというものがないんですか!?」
風をどうコネクリ回せばいいんだああああ!と悩んでいるところに投下される『付与魔法でよくね?』という聡子の発想。
それが悪いというわけではないし、たしかに効率はいいだろう。
空気で槍っぽいものを構築して、それに付与魔法をかけて放出。
……よし、これで問題解決!とはならないのが椿のめんどくさいところである。
「椿ちゃん」
「む?」
「時間がないから仕方ないよ」
「むう……わかりました!」
めんどくさいところではあるが……椿がもともと柔軟性がある精神構造をしているのも確かである。
「でも私、付与術はあまり特訓していませんよ?」
「無理に特訓する必要はありませんよ。課題を設定するのですから、今ここで椿ちゃんが自分の力だけで解決する必要はありませんからね。課題というものはこれから解決しなければいけないものであって、設定した段階ですでに解決していたらそれは課題ではありません。単なる工夫です」
「それもそうですね」
うなずく椿。
あまり自分の意見がないような気がしなくもないが、椿はいつもこんな感じだろう。
「聡子お母さんは付与術は得意ですか?」
「もちろん」
だって扇子に付与術をかけただけで、鋼鉄の人形を粉砕できるからね……別に聡子はムキムキじゃないし。
「ですが、付与術を神風刃に組み込む戦闘方法に関しては私が手を出すところではありませんね。私も刀を使いますが、その時は付与術は使っていませんから」
「わかりました。ただ……私は魔力は多い方ですけど、大きな貫通力を得ることができる付与術を使い続けるというのは魔力が持ちますかね?」
「持たないでしょうね」
「むううう!」
「なので、魔力を増やす方法もしっかり伝授しましょう」
「え、いいんですか!?」
「もちろんです」
うなずく聡子。
「というわけで、ダンジョンから出ましょうか。課題設定の目安に来ただけで、これ以上は不要ですからね」
「はい!」
そして、聡子が先導する形でダンジョンから出ていく。
(グフフフフッ!何も知らない椿ちゃんを騙して、『ハグをすれば増えますよ』といって抱きしめるチャンス!ベッドの上で隅々までナデナデしてあげましょう!)
警察を呼ぼうか。




