第九百五十九話
古代貴族あたりの話はもうどうでもいいということにして、椿がすっかり忘れていた『過去留学レポート』というらしいものが存在するらしい。
……先に言っておくと、未来の風香は『やることがあるから』と言って席を外している。
「……一体、どんなものなんだ?何となくわかるけど」
「私は未来の中学校で卒業単位はすべて取得して、未来の沖野宮高校の推薦を貰っています。その中で、中学三年生の出席分を過去留学に当てています。実際にリオ先生に頼んで出席証明書ももらってるんですよ。それで、過去で学んだことをレポートにしてまとめるように言われていたんです!」
「で、すっかり忘れてたんだね」
「その通りですよ!」
まあ、なんというか、椿らしい言い分である。
「……で、文字数とか決まってたりする?」
「六千文字以上ですね」
「そうか……」
「椿ちゃんって授業中はノートとってたよね」
「しっかりとっていますよ!」
「なら、それをうまくまとめればいいんじゃ……」
「……私、レポートなんて書いたことないですよ~」
雑に作っていいのなら、最初に結論を出してあとは感想でも書いておけばいいのだが……。
「……どんな内容で書くのか、明文化されてるものはないのか?」
「ええと……確かあったような?」
椿が未来から持ってきた学生鞄をごそごそと漁る。
そして、パアアアッと顔を輝かせる。
「ありました!」
((いつもなら大体なくしてるのに……))
秀星と風香は失礼なことを考えたが、内容を確認する。
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朝森椿・過去留学レポート概要
過去で学んだことの中から一つテーマを選び、それについて六千字以上のレポートにまとめること!お母さんとの約束ですよ♡
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「これ書いたの、聡子だな。ていうか手書き……」
「お母さんとの約束って書かれてるけど、これって制度上必要なんじゃなくて、未来の聡子さんとの個人的な約束なのかな」
「そうですよ」
「まあ、未来の俺なら、『成長度鑑定』を使って一発で分かるし、制度上は必要ないか」
ただ、まさかのA4の用紙一枚にこれだけを書いて持たせるとは……。
椿という人間がどういう存在かよくわかっている。
あと、なんでめんどくさいレポートなんて引き受けてしまったんだ。
「テーマを一つ選んでって書かれてるけど、椿ちゃんが六千文字かけるテーマかぁ……」
「『神風刃』について書くことですね。未来でも使い続ける戦闘手段なので、なぜテーマにしたのかもはっきりしますから」
確かに。
「加えて、『神風刃』は風香様の旋風刃の強化版である『儀典旋風刃』を結論に置きながら、少し『軸』をずらしたもの。儀典旋風刃を開発したのは秀星様ですから、レポートの作成もしやすいでしょう」
「えっ!儀典旋風刃ってお父さんが考えたんですか!?」
「そうだね。最初はエネルギー消費が多くて苦労したけど、今では何となくで使ってるかな」
もちろん、何となくで使っているからと言って弱くなっているというわけではない。
「で、神風刃についてのレポートだな。現時点では、風を軸にしてほかの属性を混ぜて使ってる旋風刃に対して、風だけの属性に絞ってる戦闘手段ともいえるが……未来で開発された神風刃がどういうコンセプトで開発されたのかがまだいまいちわからないんだよなぁ……」
魔力を軸にした戦闘手段は数多く存在し、それらは構築方法もかなり異なる。
ただ、今よりも知識が優れているであろう未来の秀星が開発したものであることは間違いない。魔力の構築コンセプトが秀星が考える中でかなり効率が高いものだからだ。
「椿ちゃんにとっては普段から使ってるものだし、私も旋風刃と一緒に使うことが多いけど、思ったより研究しがいがあるかもね」
「そうですね!テーマはこれに決定です!」
というわけで、過去留学レポートのテーマは『神風刃の課題』ということになった。




