第九百五十八話
地球人と古代貴族がどのように関係を結んでいくのか
日本ではアトムが主導になって話をまとめているのだが、基本的に古代貴族が所有する財産の多くが『研究し続けてきた情報』ということもあって難航しているようだ。
アルエストは貿易相手国を作って、これから古代貴族の規模を拡張していきたいと言っていたし、誰の持ち物とも言えない島があったりするので場所に関してはあまり問題はない。
ただ、『世界に関わっていきたい』という主張に関しては『勝手にしてくれ』としか言いようがないのだ。
秀星が古代貴族の意思決定を行う人たちのプライドを木っ端微塵にしたので理性的な話ができているのは間違いない。
だが、売るものがなければ外貨を獲得することはできないし、外貨がなければ他国のものを買うことはできない。
そもそも、基軸通貨であるドルと、古代貴族が使う通貨のレートは決まっていない。
アトムはこのあたりで逃げたくなったようだが、一応、古代貴族の面々は世界中のあちこちに散らばって、傭兵業やダンジョン攻略などを行うことになった。
魔戦士社会が表に出てきたことで、魔法関係の素材の需要が拡大している。しかし、しっかり戦える魔戦士の数が急激に増えるわけではない。
古代貴族の『上層部』に近くなると、実力はそれ相応に備わっているのだ。敵に回した相手が悪すぎただけで、彼らも研鑽を積んでいる。強くなければ意味がないという状況を抱えていたからこそだが、傭兵業として会社を設立し、そこから世界に関わっていくことになるだろう。
古代貴族は二万年もの間引きこもっていたわけだが、現代人とコミュニケーションが取れている。
これは自動翻訳ができる魔法を使えるからで、これを高性能で使いこなせるものが集団としてまとまっているということは、『世界中に幅広く派遣できる』という強みがある。
実力はあるし、秀星が牙を根こそぎ抜いてしまったので、一時期世界征服(最初の意味としてはノアスフィアのダンジョン制覇。ゴールドール家はお山の大将だったので国際連合を狙っていた)を掲げる覇権国家だったが、ここにきて派遣国家のような感じになった。
……みたいなことを秀星がアトムに言ったのだが、無視された。
笑うでも呆れるでもなく無視である。相当疲れてる。
それはともかく。
外交面ではウェストリア家が担当する形で、どの国にどの戦力を派遣するのか。ということを議論することになっている。
ちなみに、彼らの実力に関しては秀星が保証する形でデータにまとめているので、秀星の分析能力を信頼する国家(筆頭は日本)ではかなり好意的に受け入れているようだ。
全員にとって最善などというものは無理なので、このあたりが及第点だろう。少なくとも、秀星が手を付けるような場面ではない。
「さてと、そろそろ二月も終わりそうだねぇ……椿ちゃん。過去留学のレポートって作ってるの?」
「……忘れてたですううう~~~っ!」
「「……」」
何があったのかはわからない。
ただ、どうやら椿には課題があるようだ。
忘れていたというのがなんとも椿らしい。




