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第九百五十六話

 秀星が大暴れしたことで、ゴールドール家を筆頭に、国際連合を下にしたいと考えていた計画は終わったようだ。

 もちろん、どこにだって馬鹿はいるもので、秀星が大暴れした現場を見てもわからない人もいたが、なんと、ゴールドール家の当主さんが直々に抑え込んでいるようだ。

 目の前の現実を受け入れることができなければ、権謀術数どころの話にもならない。


 権力というものは確かに大きな存在だ。

 使い方によっては、金も戦力もそれだけで手に入れることができるほど。


 しかし、中にはまるでバグのような存在だって存在する。

 そういった存在を相手にした場合、権力など何の役にも立たないのだ。

 むしろ、最初から攻勢に出てしまうゆえに落としどころを見失って自滅する場合だってある。

 これは地位でも金でも同様。

 王族という看板は暗殺者相手に通用しない。どれだけ金を積もうとそれに興味のない人間はいる。


「いやー、なんかすごくおとなしくなったな」

「まあ、虎の尾を踏んだ自覚があるんだ。さすがにこれ以上やられたくはないさ。それに……強さとか、自分の強みとか、あまりにもバラバラにされて、自分に何が残っているのかを考え直すところから始めないといけないくらいフルボッコにしたからな」

「自分を見つめるいい機会じゃないか。俺も調子に乗ってる頃に師匠に会ってボッコボコにされたからな」


 さすがに剣術神祖に遭遇というのは想像だにしていなかった。

 ああいうのはマジで人生に悪いからやめてほしい。


「それはそれとして……これからどうなると思う?」

「さあ?それは私にもわからない。ただ、身の振り方を考えようとしているものが多いんだ。それに……秀星が躾をしたという情報を少し流しておけば、ある程度『あー。だよね』みたいな雰囲気を察してくれるだろうし、これから古代貴族がこの世界にかかわっていくこともできるだろう」

「だよなぁ」

「アトムにそれとなく流してみたら鼻で笑われたがな」

「ハッハッハ!」


 アトムの発言力は世界規模で見てもかなり高い。

 魔法次官に任命されてからはデスクワークがかなり多くなっていて魔戦士としては活動していないのだが、それでも他者を圧倒できるほどの実力を持っている。

 そして、『秀星のことをよく知らずに相手にする』ということがどういうことなのかを、秀星よりもよく知っている。

 もちろん、アトムだって公僕なので、多少の考慮はしても、必要以上に遠慮をすることはないだろう。

 最初は圧力をかけるように周りに向かっていったのは間違いないのでいい顔はされない。


 ただ、古代貴族が地球の国家と政治的に関わる場合、それを担当するのは外交を担当するウェストリア家だ。

 そして、そのウェストリア家を、秀星は贔屓にしている。 

 アトムもそれはわかっているので、余計に手を出すことはないだろう。

 秀星と古代貴族の強さの関係はわかっているし、今回の裏ルートも、セフィアには『別にルートの作成は雑でもいいよ。速度優先』と言っておいたので、アトムは気がついている可能性がある。

 利用される前に撤退させているが、アトムからすれば、古代貴族との関係をどうのこうのという前に、秀星を逃さないようにすることを注力するほうが日本のためになる。


 秀星が贔屓にしているウェストリア家がこれからは外交の場に立つだろうし、アトムだって強くは言わないだろう。


「まあ、うるさい人たちがおとなしくなったのはいいことだしな。で、古代貴族はこれからどうするつもりなんだ?別にウェストリア家が何を考えているのかだけでもいいけど」

「貿易相手の構築だな。古代貴族はエネルギーと食糧は完全自給が可能だが、宇宙船という限られた環境だったから人口に限界がある。生まれる子供の数の制限も行っていたからこれからはその制限を解除するとして、どこか土地を見つける必要もある」

「本格的な世界との関係構築ってわけね」

「ああ。お父様はそう考えた上で、ウェストリア家に『朝森秀星対応部』を作って私を責任者にするつもりみたいだが」

「これまで通りってことね」

「ああ。というより、古代貴族の他の家が散々秀星に怒鳴り散らかしてたからな。あの決闘が始まるよりも前に、ネット環境を使いこなして罵詈雑言を秀星に浴びせていたところもある」

「ほー」

「当然、日本人からすれば悪感情しかないだろう。だからそういう部署を作って秀星といい関係を結ぶための組織がないと落ち着かない連中が多いんだ」


 事情はなんとなくわかった秀星。


「ちょっと論理の飛躍があちらこちらにある気がしなくもないが、まあいいか、でも、アルエストってウェストリア家の次期当主じゃなかったか?俺一人に注力するのはまずくね?」

「四千個下の弟がいる」

「あ、弟いるんだ」

「まだ五歳だが」

「そうか……」


 まあ、他に人がいるのなら十分だ。


「とりあえず、椿でも連れてくるか。俺は別に古代貴族に恨みがあるわけでもないし、関係が下手に悪化するのも問題だ。椿に押し付けておけば関係が改善されそう」

「弟にも会わせよう。そこまで精神年齢が変わらないからな」

「だろうな」


 ぶっちゃけ椿の精神年齢ってどれくらいなんだろう。

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