第九百五十四話
古代貴族の宇宙船。
その内部には、大型の『コロシアム』が存在する。
宇宙船内部としては最上階に作られており、天井を開くことで青空の下で戦う構造になっているのだ。
ちなみに、もともと水圧に耐えるためのシステムとしてこの宇宙船の壁のような『物理的耐久力』はあまり関係ないので、『水中で暴れてぶっ壊れたらどうすんの?』という心配は不要である。
いくつか使用形跡があるので、どうやら二万年引きこもっている間にかなりの数の『決闘』が行われているようだ。
控室で寝ながら秀星は待機している。
スタジアムの方では司会者が観客を沸かせているところだ。
どうやらゴールドール家を頂点とする派閥の者で観客を固めているようで、まあ司会者も言いたい放題である。
秀星自身、彼らを散々煽りまくっている自覚はある。というか意図して煽りまくっている。
「……そろそろか」
秀星は目を開いて、そのままステージへの続く扉を見る。
ちょうど、ニヤニヤしながら案内人が入ってきたところだった。
(さて、行きますか)
★
基本的に戦いというものは数である。
だが、魔法という概念が存在する場合、個人が持つ戦闘力の上限はあまりにも高い。
神はその典型例。神器使いもまたそれに該当するだろう。
とはいえ、数というものが重要になることは事実である。
「……自重ってものを知らんのか。人のこと言えないけど」
秀星がコロシアムに入った時、目の前に広がっていたのは、あきれるほど多い『魔導兵士』だった。
召喚系統の魔法ではなく、外部から素材などを手に入れてそれをもとに作った人形を魔法で制御するタイプだ。
雑に言えば、完全魔法制御のロボットである。
立錐の余地もない……というほど多いわけではないが、とにかく、圧倒的な物量を感じるほどコロシアムの中に入っている。
ざっと数えたが、大体五百といったところだ。
「まっ、さすがにあのゴールドール家の人だけだと制御なんてできないだろうから、周りにたくさん隠れて動かしてる連中がいると思うが……どうでもいいか」
自らの権力を保証するのが、自分の『実力』ではなく自分の『地位』となっているものの思考が秀星に理解できるはずもない。
(ただ、俺が書いた設計図とはどこか違うのかね?なんか妙な駆動音が聞こえるんだが……ていうか、それが五百体も集まるとマジでうるさい)
どのような改造を施したのか知らないが、かなりうるさい。
「フフフ、朝森秀星。この私が作り上げた魔導兵団で、貴様を叩き潰してくれる!」
ゴールドール家の人が奥の方で何か言っている。
正直、秀星の抜群の聴力がないと聞こえないレベルだ。
それくらい、兵士がうるさい。
「……どうせ、銃や大砲なんて作ってもどうにもならないと思ったから、高性能のロボットを作らせることにしたことが間違っているとは思わないが……まあ、おもちゃとじゃれ合うのも悪くはないか」
とりあえず秀星はそう思っておくことにした。
ゴールドール家の人がどれほどの指揮能力を持っているのかは分からない。
一応、お手並み拝見である。




