第九百四十七話
未来風香だが、学校ではとても人気だ。
まず風香自身、元がいい。
胸は大きいしスタイルは良いし可愛らしいのだ。
そんな風香が『良い年の取り方』をした結果、余裕と自信にあふれた『女性』になってやってきた。
意外と『自分は未来でどんな人間になっているのか』という質問を風香にする者は少ない。
ただ、様々なことに対して経験を積み、椿を育ててきただけあって、かなりパーソナルスペースが狭くなっているような感じもする。
まあ、人気が出ないわけがないのだ。
ごっつ強いのは変わりないけどね。
「さーて。どんどんかかってきなさい!」
簡易戦闘室。
ある程度の広さがそなわった空間が用意されているとともに、戦闘に関する魔導装甲技術を自動的に使えたりする施設である。
主に人間同士の戦いで使えるもので、秀星が作ったものだ。
そこでは、風香が刀を一本構えて、次々に挑んでくる生徒たちを相手に無双していた。
最初は一対一で戦っていたのだが、途中で面倒になって『どんどん入ってきていいよ』という感じになってものすごい人数が入ってきている。
強くなっている風香に対して数で攻めたとしても大した意味はない。
そもそも魔法やスキルなどというものがある世界は、個人の強さの上限が高いのだ。
現在の風香ですら、学生レベルで言えばボスキャラ扱いされるような強さなのに、普通に戦って勝てるわけがない。
「スペックそのものが他人よりも高く、そして中身の完成度も高い……今のところ、全員がシンプルなことしかやっていないし、その状態だと、風香の方が強いだろうな」
フォルノスは観客席からそれを観察していた。
「……一応聞きますけど、会長は勝てるんですか?」
「私が相手となれば、それ相応の『手段』を見せてくるだろう。単純なスペックはあまり関係ない。が……基本スペックで私の方が上なのは変わらないな。遊びで戦う分には私が勝つだろう」
未来から来た風香という存在はかなり気になったようで、国枝も観戦中だ。
試しにフォルノスに聞いてみると、想定通りの返答がきたので国枝は納得する。
「あれほどの実力……やはり、経験か」
「二十年後という話だ。人間はそれくらいの時間があればすぐに強くなれるだろう」
「神は違うのか?」
「新しい価値観を取り入れるのならともかく、『神力』が持つ安定性というものは圧倒的に高い。人間がすることに対して、一々影響を受けるような構造はしていないんだ。別に全く強くなれないわけではないが、人間のような急成長はない」
安定性。という言葉をどういう意味でフォルノスが使っているのかは不明だが、いずれにせよ、何かを司る存在である神がそんじょそこらのことで変わってしまうのは不味いだろう。
「フフフ、この頃のみんなの動き方。なんだか懐かしいねぇ」
微笑みながら戦う風香。
未来でも元クラスメイト達と交流があるのだろう。ただ、それと比べてあまりにもおさない戦い方をする生徒たちを相手にして、懐かしんでいる。
余裕の塊のような状態である。
「……会長は戦わないんですか?」
「あまり興味はないな。そっちよりも、学校の傍をウロウロしている異星人の方が気になっている」
「あ、そっちですか」
「気が付いていたのか?」
「まあ、大体は」
国枝が持つスキルである『日本語理解』の力で、単なる会話がそれにとどまらない。
コミュニケーションをとる機会が多い副会長という役職も相まって、情報収集速度がすごく早いのだ。
フォルノスは感覚だけで異星人とわかるのだが、国枝はそういうわけにもいかないだろう。
末恐ろしい少年である。
「今は秀星先輩が接触してますね」
「ああ。ただ私の予想だが……少々、面倒なことになりそうだな」
フォルノスは溜息をつくと、そのまま施設を後にする。
(会長視点で面倒……か)
武力で解決する物ではないことは確定。
ただ……単純な話し合いでもなさそうだ。
確かに面倒ではある。
国枝も、無双している風香を尻目に施設を後にした。




