第九百四十四話
神器はどのようなオンリーワンの機能を持っていたとしても、前提として魔力を増加させる機能が備わっている。
下位神の神器ならば十倍、上位神の神器なら百倍、最高神の神器なら千倍。
そして、『神祖』の神器を所有していると、一万倍……ではなく十万倍に増える。
なぜそうなるのかは、神器のコアを開発した創造神ゼツヤにしかわからないことだ。
未来の風香の魔力は現在の魔力量の十万倍。
ただし、同じ神が作った神器を持っているとこの効果が重複するため、その場合は下位神の神器を五つ持っていたとしても十万倍という結論は変わらないが、普通に下位神の神器を五つ持っている程度なら、秀星に付いてくることはできない。
だからこそ、『わかっていたこと』ではあるのだが……なぜ神祖の神器を持っているのだろうか。
「フフッ。当然、作ってもらったんだよ」
「作ってもらった?」
「そう、作ってもらったんだよ」
「……」
秀星は風香の返答を聞いて、頭の中でそれを反芻。
出した結論は……まあいいや。というもの。
「まっ。とりあえず、その力を見せてもらうか」
「すぐにわかるよ」
風香は刀を構えなおして、そのまま突撃してくる。
秀星はプレシャスを構えなおして迎え撃つ。
風香が高速で振ってきた刀に対して、秀星はプレシャスの刃を叩き込んだ。
が、双方ともに刃こぼれひとつしない。
「うわ、やっぱりそれ、頑丈だね」
「神器が簡単に壊れるか」
「まあ……簡単には壊れないよね」
秀星はそもそも破壊したことがあるので『絶対に』とは言わない。
「しかし……やたら斬撃が軽いな。でも、鍔迫り合いで全然勝てない」
「フフフッ。面白いでしょ」
「違いない」
再び、お互いに連続で斬撃を叩き込んでいく。
ただ、先ほどはほぼ風香が受けに回っていたのだが、今は風香も時折反撃している。
秀星はその斬撃を見もせずに避けたり弾いたりしているが、要するに無視できるようなものではないということだろう。
「刀を振るたびに風が……ん?違うな。右手の刀を振るたびにだ。左手の刀を振るたびに、風が途絶えている」
「よくわかるね秀星。この刀は『世界旋風刀・無双荒神』っていうんだ。右手の刀が風の始まりを決めて、左手の刀が風の終わりを決める。それが、この刀の基本性能だよ」
「……」
現在の風香の戦術の発展版ともいえる『儀典旋風刃』を開発したのは秀星である。
だからこそ、風香という魔戦士がかかわる『風』という概念が戦闘にどう影響するのかを考えたことがある。
それを頭の中で考えて……すごく、面倒な性能だと判断した。
「さて、そろそろ行くよ」
風香が素早く後ろに下がった。
そして、右手の刀が風を纏う。
「開闢旋風刃!」
風香が刀を振ると、纏っていた風が秀星のところに向かってくる。
秀星はそれに対してプレシャスの『破壊機能』を上昇させたうえで振った。
しかし、とらえることができない。
(プレシャスが捉えられない。か)
秀星は距離を取るのではなく、飛ぶ斬撃を避けながら前に出た。
そのまま風香に斬りかかる。
それを見た風香は、左手の刀を構えた。
「終焉神風刃!」
風はない。
ただ、避けたはずの飛ぶ斬撃が、勢いを増して後ろから襲ってきた。
「その左手の刀。起爆スイッチのようなものか」
「ご名答」
襲い掛かってくる風の刃を、見もせずに避けながら斬りかかる。
「どこに目がついてるの?」
「俺くらいのレベルになると、目なんて飾りだ」
「なるほど」
他の感覚があまりにも優れているので、別に視力に頼る必要すらないのだ。
『お前の目は飾りか?』と他人を貶すときに人々は言うだろうが、秀星からすれば、飾りであっても問題ないくらい強くないと、常識にとらわれていると判断する。
「さてと……」
秀星はプレシャスを光らせる。
風香も両方の刀に風を発生させた。
「おらっ!」
「せいっ!」
プレシャスと無双荒神が衝突する。
「……あっ」
失念していた。
世界一位と呼ばれる秀星が神器を振るい、それに対抗するように、風香のような実力者が神祖が作った神器を振るうと、『どうなってしまうのか』を。
「あ、やべっ」
地下空間故に、逃げることができる衝撃には限界がある。
衝撃が、全方位に向かってまき散らされた。
「あ、家が壊れそう」
ヤバいということは理解した。
しかし、その声色に焦りはない。
もちろん……それ相応の『結果』は発生する。
朝森宅が吹っ飛びました。




