第九百四十三話
朝森家の自宅地下は頑丈な空間が用意されている。
天井が高い上に、ワンフロアぶち抜きという建築構造上あり得ないものになっているが、秀星が持つ魔法技術的には問題ない。
そこに、秀星と未来風香が向かい合うように立っている。
秀星は魔法で片手剣を一瞬で作って構える。
未来風香はポケットからカードのようなものを取り出して振ると、腰に二本の刀が出現して、日本とも鞘から引き抜いた。
「……そのレベルの剣を一瞬で作るんだ。さすが秀星」
「そっちの刀も相当な業物だな。椿が使ってる刀を軸にして調節してるのか」
「その通り。さて、それじゃあ始めようか」
お互いに魔法で装甲を構築。
そして突撃した。
秀星は剣を振り下ろして、風香は刀を交差させて対抗する。
二人の中央で火花が散って、鍔迫り合いになる。
「見た目以上に強い刀だ。というか、今の風香なら対応できない速度と力で振ったはずなんだが」
「未来の私は『上手くなってる』ってことよ」
「……」
そこが知れない……というほどではない。
確かに強いのだが、真理に近い秀星に届くようなものではない。
ただ、強さの上限がわかっていても、今どの程度の実力を出しているのか、それがさっぱりわからないのだ。
「……不思議な感覚だな」
「あれ、未来の秀星と同じことを言うんだね」
「まあな」
真理に近いということは、秀星の個人的な感覚だが『定規』を持っているようなものだと考えている。
才能という言葉で片付けることがなく、正確に『どの程度なのか』がわかるのだ。
雑な表現になるが、ゴムをどこまで伸ばせるのかはわかっても、今どこまで緩めているのかわからないといったところか。
「ただ……どうにもならないわけじゃない」
「さすが」
秀星は剣を振る。
風香はそれに対応するように刀を振るが、ギリギリ対応しているように見せてきている。
「もどかしいなぁ」
「そこまで言うのは、秀星の観察力が高いからだよ」
「認めよう。ただ、ちょっとどこまで対応できるか知りたくなった。ギアを上げていくか」
とりあえず……今のアトムくらいだな。
「おっ」
速度と威力を急激に上げる秀星。
だが、風香は二本の刀で受け流していく。
「一気にここまで上げてもついてこれるか……」
「今のアトム君くらいかな?未来の彼はもっと強いし、正直この程度なら問題ないよ」
「あ、やっぱりアトムは強くなってるのね」
「次官から大臣になって多忙だから、鍛錬に時間を使えないと愚痴っていたけどね」
「出世してるんだな……」
「未来の日本の政治は魔法省の独壇場だからね」
「それは逆にまずいだろ。がんばれよ財務相」
「アトムさんに勝てると思う?」
「無理だと思う」
さて、話がそれた。
「もうちょっと上げるか」
秀星はさらに速さと威力を上げる。
アトムよりも上。
秀星を除けば、対応できるものはほとんどいない領域だろう。
第一世代型の最高神レベルくらいだ。
しかし、風香はニコニコしながらそれについてくる。
「うえぇ……最高神レベルまで引き上げてるのに、なんでついてこれるんだよ……」
「私も疑問なんだけど、下位神の神器しか使っていないのに何でそこまで強いのかな」
「さあ……百年前のグリモアに行けばわかるかもよ?」
「なるほど、そっちの秀星のルーツを知る必要があるわけか」
「『なんで俺が神器を地球に持って帰ってきたのか』……それがわかるかもしれないな。さて、話は中断して……」
秀星は風香の刀をはじいて、持っている剣を魔力に分解する。
そして、『星王剣プレシャス』を抜いた。
「おっ。やっと出したね」
風香はニコニコしながら二本の刀をカードのような媒体に戻した。
そして、別の刀が腰に二本出現する。
それを抜き放った。
それを見た秀星は、わかっていたことではあるのだが、それでも溜息を吐かずにはいられなかった。
「一つ聞いていいかな。なんで『神祖』が作った神器を持ってるの?」




