第九百三十九話
本来、モンスターが出現する場所で『鉄道網』を作るというのはなかなか面倒な話だ。
もしもモンスターが鉄製の人工物を襲うような価値観があったとしよう。
それだけで、もう面倒なことになるのは目に見えている。
だが、秀星が作った線路は特別製である。
隕石が降ってきても傷一つつかない丈夫さ。ドラゴンのブレスに焼かれても焦げ目一つつかない耐熱性。硫酸や王水をぶっかけられようと欠片も変わらない物質として抜群の安定性。
これらの耐久力に加えて、線路そのものに再生能力すら備わっているのだ。
加えて、大量のセフィアを配備することによる警備力までついている!
正直、線路というものは本来維持コストがかかるものだが、秀星がかかわった場合はそんなものは関係ないのだ。いろんな物理法則に喧嘩売ってるからね。
というわけで、あれからずっと放置していたレーダーキャッスルのところに行って設定すると、秀星たちは地球に帰ることにした。
なお、レーダーキャッスルを介していつでも通話ができるようになっている。
落ち着いてきたら、魔人がいたダンジョンで腹ペコだったリブリアあたりから電話がかかってくるだろう。
「地球に帰ってきたですううう~~~っ!」
帰還用に新しく作った転移装置の外に飛び出して、元気いっぱいな様子で叫ぶ椿。
「さてと、ここからアトムになんて報告したものかな……」
「多分、アトムさんは大体どうなるかわかってると思うよ。事前情報は伝えてるし、多分、確認事項を向こうが用意してると思う。というか……書類にまとめるのはセフィアさんに任せた方がいいと思うよ。だって秀星君やったことないでしょ」
「ぐうの音も出ないなぁ……」
クソ面倒な『報告書』というものがある。
単純に口頭で説明するだけでいいのならそれ以上に楽なことはない。
ただ、報告書というものはきっちりと体裁がわかっていないと何を言いたいのかさっぱりわからない物になるのだ。
まあ、秀星は別にアトムの部下というわけではない。
しかし、秀星は魔戦士として活動している『公式で世界一位』なのでいろいろ必要な書類があるのだ。セフィアに任せてしまえば問題ないというのもまた事実ではあるが、当然、秀星の口から説明しなければならないことだってあるだろう。
何を聞かれるのかわかったものではない。
一番面倒なのは……秀星が図書館に入っているであろうことがおそらくアトムにもわかっているということだろう。
まあ、秀星の基準では、別にアトムになら話しても問題ないレベルの話だったけどね。
「私も報告書を作らないと……サレイア。今日から徹夜だぞ」
「展開が速すぎませんか……というか、私があの町の調節をやっている間にいろいろ進みすぎて意味が分からないのですが」
「秀星に『自由にやっていいよ』といったのはマズかったかな」
「アルエスト様のせいじゃないですか……」
「ぐうの音も出ないな」
まあ、そっちの書類もセフィアの方で作成させても問題はないが、さすがに他人のメイドに書かせるようなものでもないだろう。
セフィアに任せたら何を書かれるかわかったものではない。
「むう……書類なんて後でいいじゃないですか!」
「「そういうわけにはいかないんだよ……」」
椿ちゃんは報告書が必要になったことがないんだろうね。まだ中学生だしなぁ。そもそも必要な書類は全部セフィアが書いてそうだし。
「風香、引き続き椿と遊んでてくれ、俺はアトムのところに行ってくる」
「わかった」
とりあえず椿の相手は風香に任せておけば何とかなると思い始めた秀星である。
ただ、風香が秀星を見る目が『嫌な上司のところに行く夫を見る目』なので、秀星としてはこれ以上何かを言うと墓穴を掘りそうで黙るしかないというのが本音である。




