第九百三十六話
秀星が保持している『人材』は数多い。
『究極メイド「セフィア」の主人印』によって、数えるのも面倒なほどのセフィアの端末を所持している。
全ての端末がもともと高性能。そしてそれぞれの神器との相互作用によって高い戦闘力が実現。
『メイド』としての細かい視点を持つゆえに、圧倒的にミスが少なく、それによってユグドラシル・ストアの運営や町の改善を行うことができていた。
不満がある人は手を上げてといっても、『んなもんお前の性癖の話だろ』としか言えない内容くらいしか飛んでこないだろう。
だが、セフィアはあくまでも『メイド』である。
敵が持つ最高戦力に対抗するために存在するわけではない。
数多くのファンタジーで『メイドですから』という理由ですべて解決して、何でもやってしまう存在ではある。
そういった文化の否定はしないが、秀星個人として、セフィアはあくまでも『メイド』である。
では、何を使うのだろうか。
そういった疑問を誰かに投げかけられるよりも早く、秀星は、『戦略級魔導兵器マシニクル』の端末である黄金の拳銃を取り出して、その引き金を引く。
さて……神器は全て、神々が作った。
秀星が使っている神器は全て、『創造神ゼツヤ』が作ったもの。
神にとっての『戦略級』の強さというものは一体どういうことなのか。
それはきっと、この拳銃を作ったものも、その引き金を引く者も、本質までは見えていないだろう。
★
秀星が引き金を引くと、空中に『戦艦』が出現する。
海に存在するべき形で空を飛ぶ鋼鉄の船。
それがいくつも姿を現した。
見たところ、『主砲』のような大型の砲塔が一門あるだけで、見える範囲で他に武装はない。
その甲板には、無数の人影があった。
セフィアたちだけではない。
鋼鉄の甲冑の姿をした、意思のない騎士たちも大勢いる。
全員が全身を青で統一した装備となっており、腰には剣を装備している。
その戦闘力は圧倒的だ。
一体一体が、秀星が倒した『魔人』の『限界突破後』を軽く倒せるほどの性能を持っている。
そんな存在が、一つの船に何百体も乗っている。
ダンジョンマスターにとっては地獄のような光景だろう。
今回、彼らに与えられたミッションは四つ。
『セフィアの観察眼でダンジョンにとらわれている者達を救出し、人間から奪った物資を奪うこと』
『騎士たちは、セフィアの端末では対応できない敵に対応せよ』
『ダンジョンの全ての人間と物資を回収後。主砲の一撃を持って、ダンジョンを滅ぼすこと』
『回収した人間と物資は、その人間が所属していた町やアジトに送り届けて、その場所で最低限の快適さを発揮できるよう改造すること』
以上だ。
なお、『オールマジック・タブレット』の魔法によって、全ての船とセフィアと騎士が『全環境適応』の魔法が付与されており、アルエストが言ったマグマや毒の沼だろうと問題なく活動できる。
言い換えれば、今回秀星とセフィアがアジトや町に対して行ったことを世界規模でやるというだけの話である。
誰がどういったとしても、これは『反則』だろう。
おそらくあの魔人の『限界突破後』は、この世界に存在するダンジョンマスターの戦力の中でもトップクラスだ。
だが、一体一体の騎士が、そんな魔人を軽く倒せるほどの性能を持つ。
その分、能力リソースが戦闘面に置かれていることで、広範囲に対する注意力というものは少々下がっているのだが、その分をセフィアが補うことで、相手の陣地から物資を根こそぎ奪いながらも、敵の殲滅を可能とする。
そして最も遠慮のないポイントは、『戦艦』である。
一見、主砲以外に何もついていないように見える。
確かにこの主砲自体、すごく強力である。
魔人が使っていた城型ダンジョン。このダンジョンは山を切り取って建設されており、山の方にもいろいろと仕込んでいるため内部が圧倒的に広かったが、この主砲はそんなダンジョンを一撃でまとめて吹き飛ばせるほどの威力がある。
敵がどのような防御魔法を使って来ようと、全て貫通して根こそぎ破壊するのだ。
しかも空を飛んでいるということもあって、『いや待てやオイ』というツッコミが来るだろう。アルエストはした。
ただ、この戦艦には大量のミサイルランチャーが隠し装備として存在する。
一発一発の威力は調節可能。爆竹レベルから水爆レベルまで多種多様である。一秒間に一万発くらいは撃てる。
説明がダルくなってきた。
結論を言おう。
仮に、ダンジョンが『悪』だとして、そこを攻略して人間を救出することが『救い』だとしよう。
その場合、秀星にとって、惑星一つを救うことくらいは造作もないのである。
一日もいらなかった。




