第九百二十九話
少女を連れて城の中をサクサク進む秀星。
どうせすべて壊すんだ!という結論が先にあるのか、遠慮も躊躇もない。
範囲的な破壊魔法を使わない理由だが、人間がとらわれているかもしれないからではなく、単なる縛りプレイである。
「こ、こんなに速く進むものなのか……」
ついてきている少女は絶句している。
なお、その手には秀星が折ってしまったダガーが握られている。
秀星が欠片を拾い集めて直しました。
「まあ、ちゃんと強くなれる環境に放り込まれた結果強くなったようなもんだからな。環境によっては君もちゃんと強くなってるさ。それに……別に君が弱いわけではない」
そして、敵が強すぎるというわけでもない。
敵に時間がありすぎた。ただそれだけのことである。
「……そうか」
「まあ、君だって、自分一人で全部なんとかできるほど、世界が甘いわけじゃないってことはわかってるでしょ」
「それはそうだが……じゃあ、お前はどう思ってるんだ?それほどの力を持っていても、世界はどうもできないだろう」
「うーん……いや、自分の全力がわからないな。強くなるためにはどうすればいいのか考えた結果、おそらく今日の俺は、昨日の俺よりもずっと強いだろう。自分の全力がどれほどのものなのかは、正直わからん。ひょっとしたら世界くらいどうにかしてしまうかもしれないぞ」
確定はしない。
まだ、秀星は地球の全てを、ノアスフィアの全てを知っているわけではない。
だが、世界をひっくり返すことくらいはできるだろう。
「まあ、君に『自分を悲観するな』なんていっても嫌身にしかならないから、強さに関してどうこうなんていわないよ。君も時間があれば違うだろうしな」
「……」
秀星の戦い方……強さというよりは『出力』だろうか。圧倒的すぎて刺激が強かったようだ。
無理もない。
無理もないのだが、あまり後ろで変な空気を作られても困る。
「……ん?」
フロアの空気が変わった。
それまではかなり迷路のような入り組んだ作りだったが、赤い絨毯が敷かれて、長い廊下が一直線に続いている。
一番奥には巨大な門があり、その手前には黒い鎧を身にまとった騎士が立っている。
顔もすべて隠している全身鎧だが、体格を見る限りは大柄な男性だろう。
剣を納めた盾鞘を左手に構えており、『待ち構えていた』ようだ。
「アンタがラスボス前の門番ってことか?」
「その通りだ。ここから先には通さん」
かなり渋い声がヘルムから聞こえてくる。
それを見た少女が唾をのんだ。
その実力を感じ取ったのだろう。
この騎士の実力は地球でもトップレベルに位置する。
この世界の人間の最高戦力は不明だが、この騎士に勝てるかどうかは絶望的だろう。
「私の剣の錆にしてやる。異世界の戦士よ」
「惜しい……」
異世界人ではなく異星人です。
「……ど、どういうことだ?」
「ああ。うん。いいんだよ。ちょっと話がややこしくなるからあとでね」
少女も気になったようだが、それに関しては秀星としても説明するのは面倒だ。
「さてと、とりあえず……このダンジョンは邪魔なんだ。おとなしく通してもらうぞ」
「フン。言葉ではなく剣で語るといい。行くぞ!」
騎士が盾鞘から剣を抜き放って突撃してくる。
「門番から『行くぞ!』って突撃してくるとはな……」
秀星は少女を肩に担ぐと、そのまま突撃。
「えっ、えっ!?」
そして、秀星は騎士が振るう剣を回避して、そのまま大きな門に向かって走り出した。
「おい!こら!ちょっと待て!」
「待ちません!」
秀星はそのまま門に向かって突撃。
門に蹴りを入れた。
門はズドオオオオオオオオオオオン!と隕石が激突したかのような音が響いたが、傷一つついていない。
「……何で出来てるんだこれ」
「フフフ。その門は最高の金属で作られているのだ」
「……一つ聞いていいか?」
「ん?」
「これ、お前は開けられるのか?」
「門番は門を開けるのではなく守るのが仕事だ」
「いや、そうじゃなくて、物理的に開けることができるのか?」
「重すぎて開けられん」
あっほやわぁ。
「……仕方がない。お前を倒して開け方をゆっくり考えるか」
というか、そもそもドアに存在するはずの切れ目っぽい線がただのペイントのようだ。
……どういうこと?




