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第八百八十六話

「ふむふむ……なるほど。これは確かに良い」


 ミーシェが椿のファッションショーの写真を見て満足している。


「交渉は成立した。あなたの汚点はばらさないでおく」

「そうしてもらえると助かる」


 フォルノスは溜息を吐いた。

 運命派のリーダーである彼だが、神祖としての力が『戦闘極振り』というわけではない。

 『剣術神祖』であるミーシェの方が戦闘に適しており、物理的に止めるということが少々難しいのだ。

 もちろん、ミーシェだってフォルノスには本気を出してほしくはないのだが、それはそれ。


「で、フォルノスはここで何をしている?」

「ちょっと遊びに行ってくるといってここに来た。クリスマスにここに来てからあちこちに行って交渉しに行ったからな。アポイントなしでほぼ突撃だが」

「忙しい時期に迷惑すぎる」

「……」


 ぐうの音も出ない。


「それで、その『交渉』で沖野宮高校に通うために走り回っていたの?」

「そういうことだ。そのためにかなりの時間を使ってな。まず沖野宮高校に通うために必要な条件が多数あって、この国の……魔法次官だったか?とりあえずそこに交渉に行って、いろいろな試験やらなんやらこなして、やっと三学期に間に合ったんだ」

「で、神祖初の生徒会長立候補者にして、初の敗北者になりかけたってこと?」

「そこを掘り返すなよ。私は生徒会長になったんだから」

「……でもあなた。今はハンコを押す程度のことしかやっていないはず。それって会長としてどうなの?」

「部下が優秀だから良いんだよ」


 そういってグッドサインを作るフォルノス。

 ミーシェは『神祖を処分するときって何ゴミに出すんだっけ?』と七割くらい本気で考えたが、とりあえずそれは思考の地平線あたりにおいておくことにした。ここで追求してもあまり意味がない。


「ふむ、とりあえず言いたいことはわかった。確かに部下が優秀なら、上がボロボロでも問題はない」

「ミーシェは私のことが嫌いなのか?」

「嫌いではない。昔、どうでも良いことで私に責任を押し付けられたことがあってそれを根に持ってるだけ」

「……」

「フォルノスは基本的に自分よりも実力が下のものには甘いけど、同格な相手には遠慮がない。だからちょっといい方がきつくなる」

「そ……そうか……」


 どうやら心当たりが多数ある様子のフォルノス。

 無表情で普段から何を考えているのかよくわからないミーシェだが、それでもフォルノスに対しては明確に嫌と言える部分があるようだ。

 これはフォルノスがわるい。


「そういえば、最近私はスマホを手に入れていろいろニュースを見ているけど、他の魔法学校でも新しい生徒会長が決まりつつある」

「え、そうなの?」

「ん。天窓学園も新しい生徒会長が決まった。元魔王らしい」

「ほう。元魔王が生徒会長にねぇ。珍しい話だ」

「……」

「……黙ってないで突っ込んでくれると良かったんだが?」

「そんな無価値なギャグに乗るほど私はユーモアセンスがあるわけではない」

「辛辣すぎる……」


 まあそもそも、ミーシェがツッコミなのかボケなのかという議論に関しては議論が必要な気もするが……。


「というか、スマホを手に入れたのは最近なんだな」

「よく手に入れ方がわからなかったからセフィアに頼んだ」

「秀星のメイドか」

「ちなみに私のスマホの使用代金は全て秀星が払うことになっている」

「そこは自分で払わないのか?」

「秀星は師匠孝行が薄い。だから問題はない」


 フォルノスは内心で苦笑したが、とりあえず別の話題にそらすことにした。


「それと、天窓学園と沖野宮高校でいろいろイベントがあるという話がある」

「ほう」

「天窓学園と沖野宮高校は、現在の日本の魔戦士学校の双璧と言える学校。その会議は重要なものになる。イベントと言っても、生徒会同士で集まると言っていた」

「私は何も聞いていないんだが?」

「それはフォルノスが準備段階で必要がないだけ」

「……」


 ミーシェはフォルノスを貶さないと話せないのだろうか。


「まあ、なるほど、要するに、表に出始めた魔戦士社会の学業の部分をしっかり整えていくために会議を行うということだな」

「そういうこと。それから、生徒会メンバー同士でチーム戦を行うらしい」

「チーム戦ねぇ……その元魔王が最高戦力だろう。私の敵ではないな」


 神祖であるフォルノスからすれば、元魔王であってもそこまで強いというわけではない。

 魔王状態を開放すればギャグ補正がつくので戦えないわけではないが、少なくともフォルノスに勝つことはできないだろう。


「それと……」


 ミーシェが一枚のカードを見せてくる。


「ん?」

「これは、私の天窓学園の学生証」

「……ということは……」

「当日はよろしく」


 そういって、ミーシェはフォルノスに背を向けて去っていった。


「……まさか。神祖の中でも戦闘力が最強クラスのミーシェが敵になるとはな……なにか悪いことしたかな。私」


 イベントというからには公式的なものではないはずだ。

 だが、それでも勝敗というものがもたらすものは大きいだろう。


 ミーシェに対抗できるのはフォルノスだけだろう。

 そうなると、元魔王をどうやって抑え込むべきなのか……。


「……そもそも、家の生徒会メンバーってどれくらい強いんだ?」


 それ以前の問題であった。

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