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第八百七十八話

 正直なところ、沖野宮高校の学生たちは『どうなってんねん!』と思ったものである。


 今までクラブ活動の支援を重点的に示してきたのに、突如『クラブ活動支援と素材買い取り増額を両方やります!』などと言い出したのだ。

 もちろん、セフィコットにシステム構築を発注すれば即座に運用することも可能だろう。

 かなりのポイントチケットを払う必要があり、日本円とポイントチケットは、相対的な価値は存在しても交換は不可能である。

 バトルロイヤルなどを利用してそれ相応のチケットをかき集めた『生徒会派閥』だが、まだ決まっていないことが多いので、セフィコットに頼む場合は『雑な提案』になる。

 セフィコットに発注する場合、細部を詰めまくって、『技術的に解決してほしい』と申請する場合はそれなりに安いのだが、雑に発注すると高いのだ。


 しかし、あくまでもこれらは公約である。

 約束事というのは基本的に、その内容は二の次で、それに違反した場合の罰はどうなるのか。その罰を公平に執行する組織が存在するのかが重要であり、学生レベルの公約でそんな面倒なものは存在しない。

 ……いや、まあ、実際の政治家の公約でもほぼ同様で、達成していないからと言ってなにかに違反するというわけではないのだが、それはそれとしよう。


 ともかく、約束事としては甘いのが『公約』というものである。

 チームという概念があやふやになることを嫌って公約を掲げなかった国枝は換金額の増額だけ掲げたが、フォルノスはその両方を掲げた。

 もともと、国枝の方も『チームを組んだら補助金が発生します』と掲げることも可能ではある。


 こういう戦いになった時点で、お互いの基礎的な能力がどれほどのものなのかが問われる。


 その点においては、国枝のほうは確かに『信用』はある。

 しかし目先の利益という意味では、『神祖』というネームバリューを誇るフォルノスのほうが『上限の高さ』という『期待』がある。

 何より、『換金額の増加』そのものはその対象とレートがはっきりするため、資金さえ手に入れば即座に適用されるであろうことも考えれば、現実的ではある。


 その現実的な視点を持った場合、国枝とフォルノスではどちらのほうが上限が高いか。ということになる。


 こうした考えが噂レベルで校内に広がっていったのだ。


 ★


「期待値。という意味では私のほうが上に決まっているからな」


 というわけで、次の生徒会長に選ばれたフォルノスは鼻を高くしていた。


「まあ、国枝はそのまま副会長になるってことで収まったみたいだけどな」

「それにしても、結果発表のときは驚いたね。だってフォルノスさん。二票差で勝利だもん」


 風香の言うとおりである。

 フォルノスは確かに票数を獲得し、そして二人しか立候補者がいないので過半数の支持があれば当選できる。

 ただ、ここまで接戦になったのは想定外だ。


「よくここまで接戦になったもんだ。原因は何なんだ?」

「生徒会の実際の運用って意味では、国枝に任せたほうがいいからだろ」

「……そういうものか?」

「当然だ。『日本語理解』のスキルを持つ国枝は、前生徒会長と副会長が作ったマニュアルのすべての意図を読み取ることができる。言葉にうまくできないことであったとしても、国枝なら、日本語で書かれている限りはすべて理解可能だからな」

「強すぎるだろ!」

「加えて、生徒たちの意見を取り入れるという意味でもこれは役に立つ。時々、『コミュニケーション能力が低いが能力が高い人材をどう発掘するか』というのが議論になったりするだろ?鑑定スキルでも解析できない『未知』であっても国枝は本人とやり取りができる。しかも、生徒会長になれば他の組織と交渉も必要だろ。腹の探り合いであっても日本語でやり取りする限り、少なくとも負けることはないからな」

「……よく勝てたな。私」

「どちらも目先の利益は確保していた。そのうえで、『現実的』か『期待』かで分かれたんだろ」

「まあ、流石に私は現実的とは言えんからな」


 流石にこの地球にやってきたばかりのフォルノスに、地球で現実的な選択をしろというのも無理な話だ。

 ただ、流石に全校生徒が対象で二票差では、生徒たちがこれからどう考えるのかがわからない。


「とりあえず確定しているのは、これからフォルノスは運用資金の確保のためにダンジョンに潜らないとな」

「それはそうなんだが、実際のシステムをどう作り上げるのかという話もあるし、これから早速会議がある」

「休ませてはくれないな」

「ああ。全くだ」


 そういって、フォルノスは去っていった。


(さてと、まずはチケットを確保する必要があるな。私の知り合いにプログラマーなんていないし、セフィコットに発注する必要があるだろう。チケットそのものは貴重品だから、すでに予算が組まれて、予備費も確定しているはず。そこに手を付けるのは無理だろうな)


 ラターグと金の話をするだけあって、フォルノスはそういった話は説明される前に把握できる。

 というわけで、正攻法でチケットを稼ぐ必要があるのだ。

 秀星に作ってもらうという手もあるが、このタイミングで秀星に変な貸しを作るのは避けたい。フォルノス自身、真理に近い秀星を相手に交渉するのは避けたいのだ。


(まあ、ネタを考えるよりも、こういうのは一気に裏金をもらったほうがいいか。さて、椿はどこに行ったかな。着せ替え人形になってもらわないと)


 セフィアの本能を利用する気満々のフォルノスであった。

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