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第八百七十五話

「ねえ秀星君」

「どうした?」

「フォルノス君。見るたびに痩せてる気がするんだけど……」

「新聞部が一年生に対してアンケートを取ってみたら、二割しか自分に入ってなかったからだな」

「絶望的だね」


 風香がフォルノスの様子を見て気になったようで、秀星に聞いてきた。


「ホームページを見たら主張があったけど、確かに国枝くんのほうがわかりやすいよね。全校生徒に対して素材の買取金額を上げるってことだし」

「だよなぁ」

「それに、この学校って、開発関係のチームを作ってる人たちの戦闘力も結構高いよ」

「そうだっけ?」

「ダンジョンの低い階層のモンスターを倒す程度の実力は必要だってカリキュラムに組み込まれてるからね」

「まあ学校に来たばかりのフォルノスは知らないか」


 だんだんフォルノスにとって不利な方向にばかり議論が進んでいる気がしなくもない。

 まあ、こればかりは掲げる公約が国枝のほうが堅実だったというだけのことだ。


「どうするんだろうね。このままだとボロ負けだよ」

「そうだな。本当に出落神祖で名前が定着するぞ」

「それは嫌だよね……」

「まあでも立候補者だし、落選しても何らかの役職はあるんじゃないか?」

「運用資金を稼ぐためにダンジョンに潜るくらいしか思いつかないけど」

「人間基準の視点が甘いってこういうことなんだな。俺もよく覚えておこう」


 こればかりはフォルノスが見切り発車過ぎたようだ。


「椿ちゃんは大丈夫なのかな」

「椿はもともとマスコットだからな」

「確かに」


 どうやら、最初ほど爆睡直行することはなくなったようだ。

 もともと吸収力はたかいので書類整理もしっかりやっているように見える。

 ……まあ、椿専門で内容を確認するセフィコットが一体配備されたようなので、不安な部分はあるのかもしれないが。


「まあでも、もとから書類を作っていろいろ書き込むって作業がやりたかった部分はあるらしいな」

「でも、選挙管理委員会に選ばれた生徒ってかなり優秀だよね。正直、椿ちゃんって内容を確認して承認のサインを書くだけでいいと思うんだけど……」

「ぶっちゃけハンコを押せば問題ないな。まあでも、椿は時々頑固だからな。誰に似たんだろうなアレ」

「……」

「……」

「……高志さんじゃない?」

「そうだな。父さんのせいにしよう」


 ひどい夫婦である。


「それはそれとして、多分このまま行けば国枝君が生徒会長になるだろうね」

「だな」

「今のところ国枝君に隙はあるのかな」

「生徒全員にメリットがある公約を掲げてるし……逆に、国枝が演説で『チームを組んで素材を換金した場合は更にボーナスが付きます』っていうこともできるからな」

「死体蹴りじゃん」


 どうやら風香のなかでフォルノスのHPはすでにゼロのようだ。

 秀星からもそう見えるけど。


「秀星くんはどっちを応援してるの?」

「俺はどっちでもいいんだよなぁ。ていうかそもそも、風香もそうだが売る場所はこの学校の換金所じゃないし」

「あ、確かに」


 実技単位獲得に必要な素材のランクは生徒ごとに決められている。

 秀星は生徒の中でダントツ一位だが、そこまで希少価値が高くなると、沖野宮高校ではなく魔法省が抱えておいて、そこから市場に流すことになる。

 そのため、売る相手が学校の換金所ではなく『世界の大富豪基準』なのだ。

 学生レベルのメリットで動くような段階では最初からないのである。


「秀星君って、大富豪相手に素材を売りつつ、ユグドラシル・ストアで稼いでるもんね。そりゃ興味ないか……そういえば、ものすごく外国のお金が集まるよね。どうやって処理してるの?」

「全部日本円にしてる。だって外国でわざわざ買うようなものってないしな。カタログを見たらあとは自分で作れるし」


 反則である。


「ということは、ユグドラシルストアで集めた外貨は日本政府に……」

「かなり例外的だが、外務省と魔法省が関わってる官営会社があるんだ。そこに金が流れた後で運用されてるそうだ」

「そんなのアリ?」

「魔法関係の利権が強すぎてそれまでの制度じゃどうにもならないことはそれなりにあるからな」


 もちろん、それまでの日本の法律も多岐にわたるため、法律の網が言うほど粗いわけではない。

 ただし、個人の力の上限があまりにも高いため、例外は必要なのだ。


「まあそれはいいや。国枝はまあこのままいけば問題ないだろうな。ていうか今頃、国枝自身が困惑してるんじゃないか?全然歯ごたえないし」

「確かに。だって神祖っていうんだから、何かすごい力を持っているって思うもんね」

「とはいってもまあ……神祖って言っても人間と何が違うのかって言われると不老不死かどうかっていう程度のことだからな。満場一致の案を出すことなんてできない」

「ただ強いだけか……」

「まあもちろん、一対一(サシ)の戦闘力はフォルノスのほうが圧倒的に上だ。これは間違いない。が……これが現実だな。フォルノスは何か出せるのかねぇ……」


 どうする。フォルノス。

 このままだと無様な散り様をさらすことになるぞ。

 ついでに『準備中 何もできずに 投票日』などという不名誉な川柳を送られる羽目になる。


 史上初の神祖の立候補だ。ここで無様に散ったら後輩が苦労するからね!

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