第八百七十四話
「……なぜだああああああ!」
フォルノスが悲鳴を上げていた。
「……どうしたんだ?」
秀星は溜息を吐きながらフォルノスの方を向いた。
フォルノスは学生寮を利用しているのだが、屋上で叫び声をあげていた。
ちなみに秀星が屋上にいるのは、単純にフォルノスが何をやっているのか気になっているし、別にそれ以外に気にすることがないからである。
椿が熟睡しながら女子生徒に遊ばれていることもわかっているが、椿の外見と性格の話で
「これを見てくれ!」
フォルノスがパソコンを見せてきた。
そこには……
「……フォルノスと国枝以外の立候補者が辞退か……沖野宮高校の新聞部がまとめてるみたいだな。ていうかこの学校って新聞部あったっけ?」
「違う!そこも重要だがもっと見るべきところがあるだろう!」
「その一個下の『新聞部調査』の票のところか?なんか一年生向けにやったみたいだが」
「そう、そこだ」
「……無回答を除けば、大体五分の一くらいしかフォルノスに票が入っていないな」
「い、一体どうなっているんだ」
一応コメントも寄せられているが、それを見る限り、無作為といえる。
「使ったアンケートを見る限り。双方に対して別に優遇しているような感じじゃないな。アンケートを行った人が三年生だってことも書かれてるから、立候補者との関係性も出来る限り排除。公平性も保たれてる」
「そうなんだよ。だからこうして叫んだんだ」
「叫ぶ意味はないだろ」
「ああ。ない」
「……」
出落神祖とか言われていたこともあって、かなりギャグ属性を持っているようだ。
「ちなみに聞いていいか?」
「なんだ?」
「勉強面でけっこう賢い方か?」
「まだ人間だったころは偏差値八十に達していたぞ」
「……その時から頭脳のレベルが落ちている可能性は?」
「自分の研究分野に関しては落ちているはずはない」
「そうか」
持っている可能性があるな。あのスキルを。
……神に対抗できるスキルとして使っているんだけど、それを神が持っている場合はどうなるんだろうね。
「いったいなぜなんだ……」
「まあ、同じ一年生が立候補してるってことと、フォルノスはクラブ活動に対して金を出すって言ってるけど、国枝は素材買取で、多くの生徒に対してメリットがあるからな」
フォルノスの主張を確認する限り、どうやら『クラブ活動』は全般的なもので、予算額はかなり大きく組まれており、『新しくサークルを作る場合でも適用される』と書かれている。
サークルにまで及ぶとなると、言い換えれば『新しい組織を作るとなればそこに金がうまれる』ということだ。
もちろん、結成と解散を繰り返して金を生み出す錬金術のような悪用ができないようにルール整備はするだろうが、研究や開発を行う小さい組織にとって予算が増えるのは大きなことだろう。
だが、沖野宮高校のホームページにも書かれていることだが、在籍している生徒の中で、戦闘と開発では戦闘が八割、開発が二割なのだ。
この差を見ればわかるが、フォルノスの主張は『より大きな需要』に該当していないのである。
しかも、沖野宮高校で学生が手に入れた素材の中で特別希少価値が低いものに関しては、ある程度優先して学校内部で確保しておくことができる優先権を持っている。
もちろん、学校で回しきれない量は市場に流して金にしている。
学生は単位として素材を確保しているが、魔戦士が素材を確保しなければならないという義務はまだないため、市場に流すことが優先されることはないのだ。
学校で確保することができた素材に関しては、学生はいつでもその一覧を確認して格安で購入できるようになっている。
ただし、そもそもの供給量の話もある。
素材を集めて換金するレートがよくなった方が、結果的に研究や開発を行っている生徒の助けになることもあるのだ。
「……ぐ、ぬぅ……サークル活動を強化できるようにすれば票が集まると思ってたのに……」
「対抗馬がいなかったらそれでいいだろうけど、二割の学生にしか関係ないことを掲げてるやつと、八割の学生に関係することを掲げてるやつがいたら、そりゃこうなるだろ」
「デスヨネー……どうしようかこれ……。あと、戦闘関係のチームを強化するという意味もあったんだが……」
「クラブ活動という書き方が悪い」
「……」
一般的な学校であれば、クラブ活動というと部活動やサークルだろう。
まだ魔法関係の要素は表に出てから日が浅いため、まだ『特別感』がある。
そのため、『クラブ活動』という言葉のノリに合わないと考えているものが多いのかもしれない。
……というか、それとは違うみたいなことをテレビで時々言うコメンテーターがいる。
「もうちょっと練ってから言うべきだったか」
「当り前だろ」
あまり意図しない方向に進んだものである。
「戦闘チームに対する強化ねぇ……」
「ん?何か不満か?」
「いや、俺自身が関係ないことを除外しても……一応聞くが、戦闘チームって何人以上なんだ?」
「三人以上だな。公約にも『三人以上の組織』って書いてるぞ」
「沖野宮高校って一人と二人組が蔓延してる状態だぞ」
「……」
「わざわざ他から無理に一人誘って三人組にするような生徒って多分多くないぞ。この学校」
フォルノスの顔から表情が消えた。
フォルノスと国枝以外の立候補者が辞退。
フォルノスと国枝のネームバリューが大きすぎたせいもあるだろう。そこは仕方がない。
それに、ほぼ無茶といえる公約だろうと成し遂げる能力が二人には備わっているのだ。比べることをやめるのは間違っていることではない。
ただ、そのどちらもできそうであるゆえに、自分に関係がある方を選ぶ。
それだけである。




