第八百七十三話
「はぁ。絶対に面倒なことになるよなぁ。これ」
相模牧人。
二年生で、生徒会会計を務めているアシンメトリーな黒髪が特徴の魔法使いである。
「国枝君。亮真君。これってどうにかならないかな」
「いや、俺に言われてもなぁ……」
「牧人先輩がどうにかする部分もあるんじゃねえの?」
次期生徒会長候補筆頭だった国枝と、その国枝に付き添っている亮真。
牧人はストレス発散だろうか。空いた時間を使ってダンジョンに潜ってモンスターを魔法で殲滅している。
国枝と亮真はほぼ戦っていない。単なる話し相手のような感じになっている。
「動画見た?」
「見ました」
「クラブ活動への資金を増やすって言ってるけど、結構生徒会の資金ってかつかつなんだよ」
「あれ、そうだっけ?」
「そうだよ。やたら出費が多いんだ。動画を見たら、フォルノスは生徒会の運営費で賄うって言ってるけど、一体どうするつもりなんだろうねぇ……」
牧人はため息を履く。
「出費ねぇ。ただ。フォルノスがそれを見ていないようには感じなかったな。どこからか引っ張ってくる予定なのか?」
「純粋にダンジョンから手に入れるつもりなんじゃねえの?ていうか、今の会長も時々ダンジョンに行って臨時収入って言い切ってたぞ」
アトムが管轄する魔法学校という領域において、利権というものはかなり大きいのだ。
それに耐えられるだけの『ビジョン』があるのか、という話である。
組織においてリーダーに求められるのは分析力と決断力だ。
決断力が低いリーダーがいても組織は動かないし、何より脆い。
「で、国枝君はなにか考えてる?」
「とりあえず考えてるのは、『学生の素材買取金額の増加』かな。全校生徒に対して目先の利益になるし」
「……そういうことを考える子だったっけ。君」
「それが手っ取り早いといえば手っ取り早い」
「なるほど、で、その買取金額の増加の予算はどこから持ってくるの?」
「ダンジョンでモンスターを倒してそれを売却して捻出する」
「考えることはみんな一緒か」
何かをするのは金がかかる。
自分でかなり稼げるんだから自分でやればいいじゃん!ということなのだ。二手先三手先は読んでいても一手先は考えていないのと同じである。
「あと思うんだが……牧人先輩って、普通に国枝より強くね?」
亮真はそういった。
「あ、たしかにそれは思った。様々な魔法を組み合わせてるけど、その練度がすごく高い」
国枝もそういった。
「もうちょっとルールを確認したら?沖野宮高校では、生徒会会計にも権力がある程度備わってるんだよ。もちろん会長ほどじゃないけどね。ただ、僕個人で使える範囲の予算があるわけさ」
「なるほど、自衛能力は必要ってことか」
「そういうこと。昔は僕は器用貧乏って言われていたけど、まあ、秀星がいろいろ技術を実用書にまとめてるからね。それを読んだら、幅広く魔法を使えていた僕は強化されたわけさ。あと、『自分の所有手段における相乗効果』っていうのが秀星君は好きなんだろうね。いろいろな魔法を組み合わせていったら、こんなふうに強くなったよ」
「なるほど」
「国枝君も亮真君も、油断しないようにね。秀星君が発表している技術はかなり広範囲だ。いつの間にか、自分が持っている才能が解析されていて、誰にでも使えるようになっている可能性だってあるからね」
「ですよね……」
「特に魔道具開発は結構進んでる。人間っていうのは道具を使うことで何でもできるようになっている種族だ。まあ、自分に何ができるのかはしっかり把握しておいたほうがいいよ。自分の才能を自分よりも世界の常識のほうが知っていて、取り残されることだってあるんだからね」
「肝に銘じておきます」
「だな」
「……まあ、秀星君が書いた実用書に書かれてたことだけどね」
「「あんたの言葉じゃないんかい……」」
なんだか締まらない話だ。
「話を戻すけど、まあ、国枝君やフォルノスのような実力者が何かを掲げるんなら、ある程度金がかかることでも問題はないさ。ただ、自分のスペックを理解してから数字を決めてほしいもんだよ……来年も僕は多分会計を務めることになると思うけど、会長は結構無茶振りしてきたからなぁ……」
深いため息を吐く牧人。
宗一郎もまた、上司にしたら苦労が増える人間の一人なのだろう。
秀星やアトムほどではないにしても、宗一郎だってかなりの実力者だ。
むしろ、再編された沖野宮高校で生徒会長を努めており、いまもマニュアルを作成中。能力は高い。
そう、能力だけを見れば圧倒的な連中が沖野宮高校には多い。それは事実だ。
もう少し、性格面でどうにかしてほしいものである。
……無理な話だ。




