第八百六十七話
さて、フォルノスがやってきたわけだ。
席は秀星の隣である。
なお、秀星の反対側には椿が座り、そしてその奥には風香が座っているので、両親に囲まれた椿というセットの横に座った感じである。
「で、なんで来たんだ?」
「わるいか?」
「心臓に」
打てば響くと言えるレベルでフォルノスに返答する秀星。
まあ実際、神祖がクラスメイトになったとして、『何も狙ってません』などと言われても片腹痛い。
学生という『属性』がなければ解決できない概念が存在するゆえに入ってきたのか、それとも単に生徒一人に対して何らかの興味があるのか、そこは不明だが、あまりまともな理由であってくれる気がしない。
「まあ簡単に言えば、私のスキルに関係することでね。とある条件を満たしているものを探しているんだ。そして、それに該当しているであろう生徒がいる確率が、この学校が一番高かったというだけのことだよ。心配せずとも、君に危害を加えに来たわけではない」
「あっそ」
「え、そうなんですか?ラターグさんは『フォルノスは多分秀星くんみたいな人はめっちゃすきだろうね』っていってましたよ?」
「……あいつ。一回くらい腹に風穴開けておいたほうがいいかな」
一回くらいやっておいたほうがいいと思う。
「まあそれはともかく、まずは直近に存在するイベントをこなしていく必要があるからな」
「なんかあったっけ?」
「生徒会選挙だ」
「……この季節だったっけ?正直興味があんまり……」
「だよな。正直俺もそんなに興味ないぞ。宗一郎が三年生だから、次の生徒会長を選ぶ必要があるけど、誰になるんだろうなって予想してる程度だな」
「結構頑張ってるのに薄情な奴らだ……」
ちなみに、生徒会選挙が盛り上がるかどうかと言われると、おそらく立候補者は多いと思われる。
まず、秀星は立候補などする気はサラサラないので、沖野宮高校の最高戦力が生徒会選挙と全く関係ない立ち位置になる。
そして沖野宮高校の生徒会は、その権限が強めなのだ。
まあ厳密には『権限が強め』というよりは、『独自かつ多額の予算を毎月獲得できる』という部分である。
要するに『旨味』があるということだ。
多くの場合、生徒会というものは単なる生徒の代表に過ぎないのだが、沖野宮高校の場合、そもそもの段階で宗一郎が頑張りすぎて、戦闘組織としてすごく強い。
まあ、エリートぶった行動が取れるかと言われるとそういうわけではなく、もちろん生徒会役員だろうと、調子に乗っていじめになったりしたらセフィコットにボコボコにされます。
秀星が沖野宮高校で一番強く、そしてその監視範囲が実質校舎内すべてであるということにかわりはないのだ。調子には乗れません。
ただ、多少のチューンアップが施されて性能が強化されているセフィコットを数体配備することが可能なので、役員のはんこが必要ない作業であれば全て任せても問題はない。『任せるのは悪いのでは?』などという悩みが馬鹿らしくなるくらい動いてくれるだろう。
加えて、現在副会長である英里がバトルロイヤルを利用して『派閥』を作り、それが現在は生徒会の下位組織となっている。
純粋に生徒たちの中でも影響力は大きい。
それだけの優秀な人材を動かせるとなれば、その責任と権限の頂点に立つ『生徒会長』の座は安くないのだ。
秀星からすればどうでもいいけど。
「私はこれを狙っているのさ」
「え、フォルノス……生徒会長になる気なのか?」
「わるいか?」
「いや……別にいいけどな」
生徒会であっても何かを生徒たちに対して強制する権限など持っていない。
有志を募って、そして契約に同意する範囲で指示を出せるのが関の山と言ったところだ。
別にフォルノスが生徒会長になっても、秀星にまで影響が出るとは思えない。
「少し調べたぞ。まあ、面白かったのは、国枝とかいう『日本語理解』というスキルを持っているやつくらいだったがな。他にもまあ、客観的に評価すれば粒ぞろいと言えるだろう。しかし、いうほど強いわけでもない」
「……まあ、面白いのが国枝っていうのは同意だが……」
国枝が持つ日本語の理解力は100%だ。
これは言い換えれば、誰のどんな言葉であったとしても、それが日本語であれば、その真意を読み取ることができるということである。
秀星が執筆した実用書を理解することも可能であり、さらには、日本語というツールを使ってコミュニケーションをとる神々の著書すら理解可能ということだ。
圧倒的な『魔法的な真実』と『価値観』を得ることにつながっているのは間違いない。
生徒会のことを少し調べたと入ったが、即座に『次期生徒会長候補』に目をつけるあたり、人間レベルでの観察力もしっかり身につけている。
「ただまぁ……生徒会長ってやったことないからな。なんだかやってみたくなった。それに、私が編入してから最初のイベントだ。こういうところでは積極的に参加しておかないと、影が薄くなる」
「ただでさえ出落神祖ってあだ名がすでについてるもんな」
「あんなの『出落ち』じゃなくて『ただ出てきただけ』だろ!とりあえず、私もここから関わっていくからな!」
「好きにしろよ。生徒会に関しては興味ないからな……」
秀星としては、自分に迷惑がかからなければ至極どうでもいい話だ。
編入してきたばかりのフォルノスがどのように票を集めるつもりなのか、そもそも次期生徒会長筆頭の国枝が何を考えていて、生徒会の方針がどのようになっているのかもある程度わかるので、傍から見守る分にはいい肴になるだろう。
(問題が筆頭あるとすれば……宗一郎とフォルノスのギャップだな)
人間レベルの観察力というものを身に着けていても、神祖としての活動期間が長ければその分ブレは多い。
視点の違いは大きいはずで、宗一郎が責任をとってきた生徒会とどのように関わっていくのがいいのか、それは秀星にもわからないのである。




