第八百六十三話
「神が何だっていうんですかああああ!私がぶっ倒してやります!」
((……あの子は何やってるんだろう))
もはや字面だけで誰が何をやろうとしているのかわかるようなおバカ状況になっているが、実際、秀星とラターグはスタジアムの内部に入って刀を構えている椿をみて呆れていた。
「……椿ちゃんは元気だねぇ。マジで天変地異になってるのに」
「スタジアムは神々や神祖たち基準だと狭すぎるからな。そんな中でちょっと力を使ったらこうなるのは目に見えているさ。、まあ、それにしてもちょっと規模が頭おかしいことになってるけど……椿が何を考えているのかはわからんな。確かに」
椿が神に対して何か闘争本能を見せるような『事情』なんてあったかな。と考えているのだが、こればかりは考えても仕方がない。だって椿だし。
「一応、レルクスが安全管理を担当しているし、椿があの中に飛び込んでも問題はないようにできているはずだし、まあここで見ていてもいいんだが……」
椿が何を考えているのかはわからない。
ここから秀星が介入するべきなのかすらわからない。
基本スペックが上であることが確定する『神祖』を『多数』相手にする場合、いろいろとからめ手を使わないと対応できないので、それをわざわざ曝け出してまで戦おうとは思わない。
「バトルロイヤルの時間はたったの一時間しかないし……ちょっと何かやらかしただけでもう時間が終わっちゃうからね」
「遭遇戦で一時間って、ものすごく短いからな……椿はその『やらかす』っていうのを自分でやりたいのかね?」
「だってさっきからスタジアムそのものが破壊できそうな大破壊が発生して、それに対応するように内部の施設が復元してるだけだもんな。全員の攻撃範囲が広すぎて作戦もクソもない」
「これがスタジアムじゃなくて無人島ならまだ話は変わるんだけど……」
さて、椿は何をしているのだろう。
「むううう!皆さん強すぎますううううう!」
めっちゃ逃げていた。
……漫画的表現と言おうか、目が『><』になりながら逃げているのでかなり余裕がありそうだ。
「……椿ちゃん。めっちゃ逃げてるね。ただ、避けるべき攻撃は全て避けてるし、なんだか余裕があるような……」
「神々を相手にしてもペースが変わらないのか……」
「神々だっていろいろ感情はあるからね。椿ちゃんに対して本気で攻撃したりなんてしないだろうし」
「それもそうか」
神々としては『あっちいけ、シッシッ!』程度のことをしているに過ぎないのだ。やってることは天変地異だけど。
「ただ……本当に強い連中の戦闘……派手に見えるだけで見ていて飽きるな」
「だよねぇ……」
第一世代型の最高神ともなればしっかりとした強さがのっかっている。
だが、何度か説明したことがあるように、神々の戦いの根本は『じゃんけんをして、二回連続で負けたら敗北』のようなものだ。
この段階になると、敵の隙をどれだけ突けるかという勝負にしかならないので、時が来るまでは『本当にダラダラ攻撃してるだけ』である。
オマケに今のところ、全ての神が本気を出していないのだ。
「思うんだよ」
「ん?」
「神の力って、人間レベルのバトルロイヤルだとクソの役にも立たないね」
「……そうだな」
やっていることは派手。
しかし、全員が戦略も闘志もなく、やっていることはグダグダ。
「……まあでも、もうちょっと迷惑なことができる奴がいた方が面白いかもしれないし、僕はそろそろ行ってくるよ」
「意外と乗り気だな。ラターグ」
「まあ……どれくらい強いのか、強くなれたのか見ておきたい奴とか、色々いるわけさ。一応これでも指導する立場だからね」
「そうか」
「こんなイベントで測り切れるとは思ってないけど、このくらいのイベントだからこそわかる物もある。というわけで、僕はちょっと遊んでくるよ」
そういって、ラターグはスタジアムの中に入っていった。
「……このくらいのイベントだからこそわかる物もある。か……」
同意するべきか、しないべきか。
考えたが、あまりその問いに意味がないと思う秀星であった。




