第八百六十二話
アトムのサプライズとして神々が参加するバトルロイヤルが決行されることになったわけだが、観客席からのぞいた限り、思ったより人数は多そうだ。
「……で、飛び入り参加可能っていうのは、基本的に神々に対して言っていたことなんだな」
「そういうこと。だって、神々だって報酬と参加者を見たうえで判断する場合が多いからね。わざわざ自分の存在を露見させたいかどうかと言われるとそうでもないし」
「……まあ、有象無象の神が多いが、中にはヤバそうな神祖も紛れ込んでるな」
観客席。
安全管理委員会の役割を完全にレルクスが引き受けることになったので、秀星も観客側になっている。
まあ、神々を相手にした安全管理などやっていられないので、それでいいのだが。
「で、ラターグは参加しないのか?」
「報酬はけっこういいんだけどねぇ……まあ、まだ決定打にはならないかなぁ。報酬を得るというメリットと、どこまで力を見せるべきかっていうコストを考えると、まだ報酬に魅力を感じられないんだよ」
「……なるほど」
秀星も先日暴れたが、ルール上、ガチガチに制限されていても、他者を圧倒できるほどの力があった。
ただ、それは神々同士の戦いになるとどうなるのだろう。
一度『参加する』と決めた場合、それは神々は『ある程度自分の手段を見せてもいい』と考えているとみていい。
先日の秀星の場合、純粋に実力差で他者に勝ってしまったが、神々の場合のパワーバランスというものは他者を圧倒するほどに離れているわけではない。
数人で組む程度のことをすれば倒せる場合は多いだろう。
神々にとって重要なのは『名前』とそこに含まれている意味。
完璧な概念など存在しないので、何かを司るということは、何かの欠点を抱えなければならないということ。
自分が苦手な概念を司る神が組むことで、下克上だってあり得るのだ。
「ラターグは、一応『更生神』がこなかったら出るつもりなのか?」
「条件その一ってところじゃない?それにね。僕、こういう催しものは他人がやってるのを見て楽しむタイプだから」
「……テレビ番組でイベントを見ても、そのイベントを自分でやろうとは考えないタイプってことね……」
まあ別に、そういう考えは何も珍しいことではない。
「だけどまぁ。おいしいところは攫って行くタイプだからね。確かに更生神がいるといたちごっこになるから嫌だけど。そこさえ回避されていれば問題はないよ。で……今は更生神はフィールド内を駆け巡っているんだよなぁ」
ラターグは第一世代型の最高神の中でも実力がある方だ。
しかし、自分にとって相性最悪な神がいるのに、真正面から行くなどというおバカなことはしない。
「ていうか……なんかすでにヤバいことになってないか?」
そう……すでにバトルロイヤルそのものは始まっている。
そして、何度も何度も、スタジアムの内部そのものが破壊されていた。
ちなみにカメラマンは先日と変わらずセフィコットである。
……ただ、ちょっと逃げまくっているだけのようになっているような気がしなくもないが。
「……セフィコットは大丈夫なの?アレ」
「一応『ギャグ補正』をのせておいたから大丈夫だろ」
「え、ギャグ補正を解析できたの?」
「それは無理。ただ、くっつけるのはそこまで難しくなかった。コストは大きいけどな」
「なるほど」
というわけで、天変地異のような状態になっているスタジアムを見ている。
「……ねえ。秀星君」
「なんだ?」
「レルクスから何か言われてる?」
「……いつでも割り込みアリだ。とは言われている」
「……秀星君はどうするの?」
「そうだなぁ……まあ、面白そうなやつがいたらちょっかい出してみるよ」
「あっそ。まあ、僕もそんな感じかな?」
秀星とラターグの本音を言えば……『面倒なことになったなぁ』というものだった。
秀星は地球の魔戦士界で大きな影響力を持っており、ラターグは『ゆりかごセンター』の運営で天界に対して直接影響し始めたところだ。
地球における神々のイベント。
絶対に後で影響が出てくるので、もう溜息しか出ない。
勝手に暴走した部下のやつら、マジで許さん。




