第八百六十話
「むぅ……あっ!サンタさんからプレゼントが届いてますよ!」
起きてすぐに、枕元にプレゼントが置かれていることに気がついた椿。
とても嬉しそうな表情で、『Present for you TSUBAKI』というメッセージカードが書かれている箱を手に取る。
「お母さん!サンタさんからプレゼントが届いてますよ!」
「うーん……そうだね」
同じく自分の名前が書かれている箱を手に取る風香。
「あれ?お父さんのがありませんね?」
(……しまった。自分用を用意し忘れた)
アホな父親である。
「むー……まあいいですね!」
それはそれでどうなのだろう。
「未来でもお父さんのプレゼントだけなかったことが何回かありましたからね!」
それはプレゼントを用意したものの悪意なのか、それとも秀星が単純に用意し忘れただけなのか。
いまいち不明だが、いずれにせよ椿がなんの疑問も抱いていないことは事実である。
椿が馬鹿でよかったと思えばいいのか、それとも未来の秀星のアホさ加減に泣けばいいのか……神のみぞ知るということにさせてもらおう。
聞かれても困ると全知神レルクスから言われそうだが、あえて無視させてもらおう。だってぶっちゃけ興味ないし。
「何が入ってるんですかね?」
ガサゴソと小さめのカッターを筆箱から取り出す椿。
「……椿ちゃん。カッターなんて持ってたの?」
「む?未来の朝森家ではクリスマスにカッターを持っておくのは常識ですよ!」
それは毎年毎年プレゼントをもらっていなければ出てこない常識だと思うのだが……きのせいではあるまい。
なんだかんだでうまくいっているようで何よりだ。
「サンタさんからのプレゼント。楽しみですね」
「サンタさんは忙しいからね。何が入っているのかわからないけど……いいものが入っていると思うよ」
「そうですね!ラターグさんにボコられながら必死に作ったと思います!」
天界の事情を知ってたんかい。
「サンタさんって神様なの?」
「む?サタニック・カオスという『聖夜神』がいたはずですよ!」
めっちゃ知ってる!
「サンタさんが地獄で改名したのかな」
「そこはわかりませんが、確かラターグさんの知り合いだったような?まあとにかくプレゼントを開けてみましょう!」
そういって、カッターで包装をきれいに切っていく椿。
なんだかとても慣れている。
クリスマスに限らず、プレゼントをもらうのに慣れているのだろうか。
「えへへ♪楽しみですね」
そうして包装を解いてみると……
「おお!カエルの玩具が出てくる『フロッグボックス君』ですよ!」
謎すぎる……。
「……椿ちゃん。それが欲しかったの?」
「限定品なのでとても希少価値が高いんですよ!」
よくよく考えれば、未来人である椿は通販サイトだって自由に使いこなせるだろう。
それに、自分で稼ぐことだってできる。
言い換えれば『ほしいと思ったものは普段から自分で手に入れている』のだ。
そんな椿が欲しがるものとなれば、限定品のような『単純に金があるだけでは作れない商品』となるのだ。
……だからといって謎すぎるのだが、椿が喜んでいるので良いということにしよう。
「私は何が入っているんだろう」
そういいながらも秀星を見ようとはしない風香。
というか、秀星自身にプレゼントが用意されていない時点で、『プレゼントを用意しようとしたのは秀星である』ということ、そして椿のプレゼントのセンスを見て、『選んだのはセフィアだ』ということがわかっているのだ。
常に嫁と姑が手を組んでいるのだ。この程度のことは普通にわかる。
「椿ちゃん。カッター借りていい?」
「いいですよ」
というわけで、風香は椿からカッターを借りて包装を解く。
中には……
「……自動スライスマシン?」
「あ、千切りとか細切りを自動でやってくれる奴ですね」
「へー。こんなのがあるんだ」
「未来ではお母さんが使ってたと思いますよ?」
「あ、そうなんだ」
「お母さんは生ハムときゅうりを細く切ったやつに卵黄醤油をかけた奴が好きですよね。それを作る時によく使ってましたよ」
納得のいくプレゼントだ。
ちなみに、秀星は目を丸くしている。
風香はそれを見て、『セフィアが多分選んだのかな』から『セフィアが選んだのか』という確信に変わった。
……まあ、だからと言って別にどうすることもないのだが。
「むう……外もクリスマス一色ですね!」
窓から見える景色。
そこからは、クリスマスというイベントを最大限に活用するための様々な雰囲気が漂っている。
その時、ピンポーンという音が鳴った。
インターホンが鳴らされたようだ。
「むむっ?ちょっと行ってきますね」
椿が笑顔でスリッパをはきつつドアに向かって歩いていった。
(誰だろうな……ん?)
近くのテーブルを見ると、セフィコットが紅茶の入ったカップを秀星と風香に渡してきた。
「ん、ありがと」
風香は朝が弱い方なのだろうか。じゃっかんあくび交じりな声で紅茶を受け取る。
秀星も受け取って口に含んだ。
「あれれ?全知神レルクスさんですね。こんな時間にどうしたんですか?」
「「ブフッ!」」
口の中で紅茶が爆発した秀星と風香。
「……セフィア。シーツ洗っといて」
「畏まりました」
セフィアが出てきて……なぜかサンタ帽子をかぶっていたが、シーツを回収して消えていった。
(……ただ、なんだろうな。嫌な予感はしないんだが……変な予感がするんだよなぁ。なんでだろう)
秀星は何となく、レルクスという名前を聞いてそんなことを考えた。




