第八百五十九話
天界の経済は大規模だ。
企業のトップに神がいるような空間であり、しかも神兵を抱えている場合が多く、天界で『零細企業』といっても、所属している人間の質によっては地球で大企業といえる場合もある。
……まあ、天界通貨と地球の通貨のレートの話も絡んでくる。商品を百個程度売るだけで手に入る天界通貨が、地球では何十億という利益になっていることもある。
それだけ天界という場所に価値が存在するのだ。
死後の世界というものがどういうものなのか。
その答えは『天界に行く』というものであり、死後の世界というものを現実に置いてしまうほどの力を持っている。
「天界のクリスマスねぇ……」
元から圧倒的な規模がある天界だが、元々『名前』というものが重要になってくるのが神々の特性。
様々な行事がいつもどこかで絡んでくる。
地球を元にした並行世界はいくつか存在すると思うが、そんな世界なら、まずクリスマスは存在するだろう。
結果的に、天界でも『クリスマス』という行事は存在し、結果的に今日は盛り上がるのだ。
(あちこちでプレゼントやケーキが売られてるな……まあ、それを司る神からすれば売り時だもんな)
菓子神とか贈物神とかいろいろいるのだ。
そういうもの達からすれば、ケーキやプレゼントというものを遠慮なく配れるクリスマスはとてもいいものだろう。
まあ、その根っこにいるはずの『聖夜神』がラターグの傘下で、年一しか働かない上に、その一日もグダグダなのだから期待していたほどすごいものでもないが。
(まあ、根っこの部分の上がズボラでも、末端の人間はしっかりやってるもんだし、多分そんな感じで回ってるのかね?まあ、振り回される方は堪ったもんじゃないだろうけど、ていうか、あそこまでグダグダになっておいて、よく地位を剥奪されないよな……)
どれほどの不祥事を起こそうが、神としての名が消えることはない。
だが、その名を持っているからこそ座ることができた椅子は別だろう。
天界で誰もが知っており、そして財布の紐が緩む行事で、プレゼントなどの根本に存在する場所だ。
ズボラに見えてもうまくやっているのだろうか。
(まあ、うまくやってんだろうな。だってその派閥のトップがラターグだし)
怠けはするが、その怠けるために必要なことは最低限全てやるのがラターグだ。
自分の派閥の神がやらかしたら、自分にとばっちりが来ると考えてフォローすることも多いだろう。
それに、そんなズボラな神、誰だって抱えたくないはずだ。
ラターグくらいしか余裕はないはず。
(……しかしまぁ。問題が一つあるとすれば……俺自身がそこまでクリスマスというものに対して関心を持っているわけではないってことか)
特に用事がなければ、クリスマスだからと言って普段と行動が変わるわけではない。
少なくとも、自分の生活に魔法が絡む前はそうだったし、魔法が絡んだ初めてのクリスマスである去年は、まだそのあたりの『調整』がうまくいっていなかったので、ごたごたしていたためあまり例年と変化はなかった。
少なくとも、中学時代はサブカルチャーに興味はあっても、クリスマスに興味が向かなかった。当時、両親が自分の周りから消えたと思って消沈していた自分には関係のないことだと思っていたのかもしれない。
(まあ、こういったところでクリスマスを感じるっていうのもそうそうないだろうし、ちょっと遊ぼうか)
あまりこっちにいすぎると、風香と椿に何を言われるかわからない。
時間でいうと夜である今の間に、少し遊んで、二人にプレゼントでも買って帰ろう。
(……二人って何がほしいんだ?全然わからんぞ)
妻と娘が何を求めているのか。
全くわからないあたり、秀星も家庭においてはそうでもない男である。
(セフィアに聞いてみるか)
そして頼る先がセフィアであるところを考えると、ほぼ丸投げする気だろう。
そして買ったのはいいが、秀星が選んだのではなくセフィアが選んだのがバレて微妙な顔をするところまでがお約束だ。
家庭……それも行事に関係することが絡んだ場合、あまり男が想定しているとおりには行かないものである。




