第八百五十八話
「ゼー……ハー……ゼー……ハー……」
エリクサーブラッドという神器は、『常にベストコンディションに体を作り変える』という機能が備わっている。
人間のコンディションというものは、元々環境によって変化するため『100%』ではない上に、そこから疲労や作業のストレスによってその効率を低下させていく。
だが、エリクサーブラッドはそんな自分を作り変えてしまうものだ。
人間の体というものは数多くの細胞分裂を繰り返しているが、エリクサーブラッドはそのすべてにかかわっている。
加えて、万能細胞アルテマセンスの力によって、初見であろうと圧倒的なクオリティを発揮することが可能なのだ。
この二つがあるので、ぶっちゃけ秀星は『作業をした後で疲れる』ということはほとんどない。
他の神器の力も合わさっているので、ものすごくスペックが高いのだ。一応限度はあるけど。
「ラターグ。ものすごく疲れてるな」
「当然でしょ……」
酸素スプレーをシューっ!と自分に当てて酸素を確保するラターグ。
神の体は全て『神力』で出来ていて人間の細胞分裂は関係ない。
そのため、呼吸なら『呼吸を安定させる効果を付与した神力をあらかじめ保管しておく』ことでそれを使うべきなのだ。
実際、棚にはそれらを可能とする機械が存在するのだが、それらを忘れるほどラターグは疲弊している。
「まあ第一の話だけどね。僕らだけでプレゼントを揃えるっていうのがまず阿呆な話だったんだよ」
「……なんで誰も手伝いに来なかったんだ?」
「決まってるじゃん。いたところで焼け石に水だからだよ」
「……サンタ本人はどうしてるんだ?」
「あー……あいつは運ぶ専門だから、プレゼントを作ることはできないんだよね……」
「じゃあ、今回のこれって発注ミスってことか?」
「大雑把に言えばそんな感じ」
天界っていろいろルーズすぎる……。
「もう……怠けるのなら最低限の業務をこなせっていつも言ってるのに……」
「ラターグは怠けてるけど、その分最終的には全部こなしてるもんな。まあ、周りの押しが強いっていうのもあるけど」
「そうなんだよね。みんな僕が育てたおかげでここまで高い実力を持っているのに、なんで僕に言って来るんだよ……」
「ラターグのおかげだってわからないように育ててるんだろ。自分の実力で強くなったって考えた方がモチベーションが上がるやつは一定数いるからな。で、偶然そんなのばっかり集まっただけだろ。神々は多いんだ。赴任先には困らん」
「……もうちょっと僕の強さを見せつけておけばよかった。くっそー……」
「しかし、そのサンタには困ったもんだな」
「そうなんだよね。ていうか彼、ぶっちゃけ逃げたんだよ。今はそんなことは知らんとばかりに普通に運びに行ってるけどね」
「心臓が何で出来てるんだソイツ……」
「わからん。ただ最初の方はね。『働くっていうのは人が動くって書くんだから、神である俺は働かなくていい。よってプレゼントを作る義務なんてない!』ってほざいてたんだよ?マジでゴミだと思わない?」
それってラターグもゴミにならないか?周りから粗大ゴミって言われてるけど。
「……僕の場合は最後にはしっかり仕事してるからいいんだよ。『ゆりかごセンター』の運営を任せられる人はまだいないしね」
「……神々の補助組織か。確か『金の問題を解決する』とか言ってたな」
「主に法律面でね。だから『現金給付』じゃなくて『減額交渉』が主な仕事なんだよ。最近わかってくれました」
「なるほど、で、変な客はいなくなったのか?」
「マシになった。とだけ言っておくよ……」
ラターグはそのままソファにゴロンと寝転がった。
「はぁ……人材が足りないよおおおお……」
「まあ、完璧な状態で人材がそろっている部署なんてこの世界にないしな」
「それはまあその通りなんだけどね……さてと、まあここで愚痴を言っても仕方がないし、はい。これが報酬だよ」
ラターグは封筒を渡してきた。
中を見てみると、紙幣がかなり入っている。
「……弾むとは言っていたが、大量だな」
「フフフ、リビアちゃんの目を出し抜いて、ゆりかごセンターの一部の業務を自動化して、その自動化して浮いた分を僕の懐に入るようにシステムを組み上げたのさ」
「……不労所得好きだな」
「誰だってそうだよ。というわけで秀星君、ちょっと天界のクリスマスってやつを満喫してきなさい。僕はもう寝るよ」
「……ああ。楽しんでくるよ」
そういうと、秀星はラターグの執務室を後にした。




