第八百五十六話
椿は寝始めるまでは両親ともに傍にいてほしいと思っているのだが、寝始めるとそうでもないタイプだ。
あと、一緒に寝るときは秀星と風香なら風香の方がいいと考えるタイプである。
最初は秀星と風香に挟まれるように寝ている椿だが、少しずつ風香に強く抱きしめ始めるようになり、やがて秀星のことはどうでもよくなってくるのだ。
これが母親のパワーというものなのだろうか。
そこは分からないが、とにかく、完璧に寝てしまった椿にとって、秀星はどうでもいいのである。
『秀星くーん!たすけてくれええええええ!』
スマホのバイブ着信が来たので、一体だれかと思って出てみたら、ラターグだった。
(……いったい何の用だ?)
『それがねぇ……ん?なんだか入力した音声っぽいな。まあいっか。ちょっと助けてほしいんだよ!』
(……だから一体何の用だ)
『こっちの聖夜神がプレゼントを作るのをサボってたみたいで、全然足りないんだよ!秀星君。給料を出すから手伝ってくれ!』
(……俺が知るかよ)
『こいつはクソポンコツだけど、プレゼントを作る実力だけはものすごく備わっているんだ。このままだと、派閥の一番上である僕怒られちゃう!』
(そのまま怒られたらいいだろ。監督責任っていう言葉の重みがわかるはずだ)
『ぐぬぬ……給料出すからさぁ。たすけてくれええええええ……』
かなり情けない声が電話から響く。
現在、夜の九時。
(おい。どれだけ作ればいいのか知らないけど、十二時までもう三時間もないんだが?)
『大丈夫大丈夫!秀星君なら何とかなるって!』
そういう問題ではない。
というか何を根拠に言っているのかさっぱりわからない。
(そこまで質は高くできんぞ)
『大丈夫。秀星君が軽く作れるレベルの物を大量生産するだけだからね!だって秀星君が作れるものって、一般人にとってはとんでもない性能だよ?だから秀星君レベルなら大丈夫!』
(……報酬、ふんだくるからな)
『助かるよおおおお。メールで製造現場の座標を送るから、そこに来てね!あと、最後に良いかな』
(なんだ?)
『風香ちゃんって君とお風呂に入るのに抵抗ないの?』
(ないらしい。自分の体に関して無頓着というわけではない様だが、こればかりは知らん)
『なるほど。とりあえず。待ってるからね!』
通話終了。
「……なんか呼ばれたみたいだね」
「ああ。というわけで行ってくる」
「フフッ。椿ちゃんの相手は私がしてるから。行ってらっしゃい」
「任せる……はぁ、なんで俺が……」
「秀星君なら、『プレゼントを本来貰う予定だった子供たちに迷惑がかかるのは筋違いだ』って思ったんじゃない?」
「オレがそんなことを考える人間なのかどうかはわからんが……ま、とりあえずパッパとやって帰ってくるよ」
というわけで、寝間着から着替えて出発する秀星である。




