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第八百五十二話

 売り子として最強格の才能を発揮する椿の売上はとても素晴らしいレベルであった。

 しかも、プレゼントの受け取り方法は、予めクリスマスイベント用のアプリを開発し、魔法省のホームページのリンクからダウンロードページに飛べるようにして、そのアプリの『プレゼント交換チケット』を購入。それを椿が持っている端末と接続することで、キャッシュレスの素早いやり取りを可能にした。

 その結果、一人ひとりが椿に触れ合う時間は少ないものの、客の回転率は大幅に上がったのである。

 椿が実際に手渡しするというシステムなのでこの方法が取られた。

 なお、アプリをつかわずとも現金でプレゼントを購入できるのだが、アプリを使うと特別なクーポンが手に入るようになっており、しっかりとアプリを使う利点を設けている。


 ちなみに、これはプレゼントを配布する会社と魔法省が繋がっているからこそできたことである。

 ……なお、このアプリはセフィアが二秒で作ったものである。

 『お客さんの回転率が悪いですううぅ……』とつぶやいた椿に反応して、別にディスプレイを見るわけでもないのにブルーライトカットのメガネをつけたセフィアが速攻でアプリを開発し、セフィコットを使ってアプリの存在を広めたことで、あっという間に拡散したのだ。


 そしてセフィアが行動する直前に、一枚噛めると判断したアトムが近くにいた秀星に提案して、秀星はそれくらいの連携はいいか。と判断して受諾。

 魔法省のホームページから入れるようになったということである。


 正直反則レベルだが、これがセフィアの実力である。


 結果的に、もともとの椿のセンスも相まって、圧倒的な売上を発揮したのだ。

 プレゼントには五段階のランクが存在するので、それに合わせて購入可能。

 オタクのみなさんかな。と思われる人たちは財布の中の諭吉を溶かしていた。


「むっふふーん!私は売り子の才能があるようですね!」

「まあ、ないとは思っていなかったけどな。あのアプリ、ものすごく使いやすいし」


 とりあえずノルマをこなした秀星。

 ちなみに販売の売上は椿の五分の一である。

 ……『ユグドラシル・ストア』でさんざん稼いでいる秀星だが、どうやらそれは希少価値が高い商品を扱っていて、対抗する企業がいないからこそ稼げているだけであって、こうした催し物で何かをするときにはあまり役に立たないようだ。

 アプリまで開発して、魔法省が乗っかるというシステムを即座に作り上げたセフィアのほうが対応力がある。


「椿ちゃん。プレゼントを配り終わったあとも写真を撮りまくってたもんね」


 プレゼントを完売した時点で椿のサンタコス売り子は終了のはずだが、プレゼントを作っていた会社が『上2段階のランクのプレゼントには、椿の売り子終了時に使えるツーショットチケットがついてくる!』と宣伝し、椿も了承したので、イベントで使うにしては高額と言えるプレゼントがかなり売れたのである、

 ちなみに最高段階の場合、かなり椿と接近……いや、密着してもいいというレベルなので、オタクたちは燃え上がった。

 まあ、あまり調子に乗りすぎると世界一位とその妻が怒気をまといながら飛んでくるので、流石に調子に乗るものはいなかった。


「むふふ♪サンタコスなんてしたことなかったですからね。記念写真でしょうか?」


 ちなみに、椿は自分が持つ魅力に関しては無自覚である。

 まあ、『素直』と『自覚』はだいたい相反するものなので、ずっと椿にはこのままでいてもらいたいものだ。


「さてと、プレゼント販売も終わったし、次はどうするかな……」

「私はお腹が空きました」

「イベント中はグレネードランチャーを連射してたけど、そこから食べてないもんね。買ってすぐに食べられるものがあれば、それを買おっか」

「まあ、なかったら最悪、セフィアになにか作ってもらおう」


 というわけで、秀星、風香、椿の三人は聖夜の街に出る。

 クリスマスイブの街は、イベント終了後ということもあってまだ熱が冷めきっていないようだ。

 まだまだこれからなのだろう。


「おおっ!あの居酒屋からうまそうな匂いがするぞ!」

「よっしゃあああ!食いまくるぞおおお!」

「うー!」


 とても元気一杯なおバカさんが居酒屋に突撃している。


「……何やってんだ?あのバカ共は」

「クリスマスイブという空間をものすごく楽しんでるね……」

「おじいちゃんと来夏さんはずっと元気ですからね」

「あれは元気というよりは落ち着きがないといったほうが正しいと思うが……」


 椿も元気だが、落ち着きがないということはない。

 比較対処が悪いのかもしれないが。


「ただ、ストッパーがいないとまずいだろうな。俺たちも行ってみるか」

「そうだね。正直、あの三人を見かけたあとで放置なんてできないし」

「……む?三人?沙耶ちゃんってそこまですごいですかね?」

「パフェって作るのに時間がかかるんだよ。掃除機で吸うように食べられたらたまらないからね」

「たしかにそうですね」


 セフィコットがいたから彼らは自由な速度でイベント中は飲食をしていたのだ。

 しかし当然のことだが、そんな速度でモリモリ食べられたら作る側は発狂するだろう。

 大食いが急に入ってくるドッキリじゃないんだから。

 しかも、この三人は食べる量の総重量が自分の体重を超えても食べ続けられる化物である。


 暴走に見える殆どは確かに確信犯だが、ストッパーはいて損はない。


(クリスマスイブまでギャグトリオのお守りか……勘弁しろよ全く)

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