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第八百五十一話

 バトルロイヤルは終了したが、その後の記者会見まで逃れられるわけではない。

 そもそも秀星が出る予定はなかったのに思いっきり出ているし、最後に基樹と派手なことをやりすぎて、終了後に取材陣に囲まれたほどだ。


 基樹は多くの人間に見られることは慣れているが、記者会見のような場所には慣れていない。

 秀星は慣れはないものの、エリクサーブラッドが存在するため緊張することはない。

 そのため、記者会見のような場に初めて出ることになったが、特に何も問題なく受け答えができるのだ。


 ちなみに、最後の最後まで頑張っていた椿も記者会見に呼ばれた。

 まあ、ルックスもスタイルも『とっても元気で素直な活発系美少女』を体現しているので、画面映りはとてもいい上に、記者会見の場であっても全く緊張しない姿は、テレビの前の視聴者には大好評のようだ。


 アトムは胃潰瘍の一歩手前みたいな感じだったが、とりあえずなんとか大きなイベントを終わらせることができたのでホッとしている。

 ……初めてにしては及第点といったところだ。


 ちなみに、報酬になんの魅力も感じていなかった上位陣と違って、他の企業が呼んだ魔戦士に関しては自分なりに精一杯頑張っており、それがとても顔にも出ていたので、それによって視聴率も出ている。

 秀星と基樹が最終的に派手さ重視で戦ったことで、視聴率もしっかり上がっていた。

 こんなこともあろうかと、秀星と基樹はアクション映画を撮る監督のところに話を聞きに言っているのだ。もちろん接待費は多めにつけている。

 それが効いたようだ。まあ、秀星は見て一秒後でも台本通りに体を動かせるが、流石に基樹はそうではないので、その違いが出て若干いびつになっている。

 しかし、本来なら多大な編集コストを使ってエフェクトをつけるようなCG映画のようなことを即席でやってのける『魔法』という概念の演出には一役買っただろう。

 セフィコットのカメラワークは完璧なので、多少基樹が変な動きをしていたとしても問題はない。ちょっと秀星の主人公感が増すだけだ。


「メリークリスマスですよー!」


 そして椿だが、記者会見終了後、ミニスカサンタのような格好でプレゼントの箱を配っていた。

 ただ、流石に12月24日にミニスカはクソ寒いので真っ白なハイソックスを着ているし、上半身もデタッチドショルダーで肩が露出している。

 バトルロイヤル中も、普段はミニスカートで生足を晒す椿もハイソックスを履いていたが、サンタコスでも同様だ。

 とはいえ、そんじょそこらの男がサンタコスをしているよりも、椿がサンタコスをしている方が当然売上は伸びる。

 かわいい子が売り子さんをしていたらそりゃみんなが来るものだ。


「椿ちゃん。元気だね」


 建物の中からサンタコスをしている風香がつぶやいた。


「まあ椿だもんな。そんなもんだろ」


 その横で、同じくサンタコスをしている秀星は同意しつつもプレゼントの箱を運んでいる。


「……で、なんで私達、サンタコスをしてプレゼント配ってるんだろ」

「椿が『サンタの格好をしてプレゼントを配りませんか?』って言われてうなずいて、何故か俺たちを巻き込んだからだ」


 建物の外でプレゼントを配る椿はとても元気そうだ。

 風香は寒いので嫌だが。

 ちなみに秀星はエリクサーブラッドの影響で寒さを感じないが、なんとなく椿を一人にしておいたほうが売上がいいと言われて引っ込んでいる、

 まあ誰がなんと言おうと、『素で元気一杯な笑顔を浮かべるロリ巨乳と並んで売上に貢献する勇気はありますか?』といわれても苦笑するしかない。

 誰が勝てるかという話だ。

 おそらく椿と属性が全く異なる人間を連れてこないと対抗できないだろう。


「……まあいっか。とりあえず私達もノルマをこなそう。そうすれば終わりだし」

「だな。正直椿一人のほうがいいや……ってさっきスタッフが小声で話してたぞ」


 秀星はエリクサーブラッドに制御されて感情の起伏がほとんどなく、風香は椿にあってから『母親』というものを意識し始めたのかかなり落ち着いてきたため、高校二年生にしてはあまり感情を表に出さないほうだ。

 ……まあ、二人とも落ち着いているとはいえ、高志や来夏に関してはどうしようもないわけだが、あの二人はノーカンである。

 そうなると二人とも落ち着いた感じになるのだが、サンタコスの売り子として椿が隣で頑張っているとものすごく『差』が出てくるのだ。

 ちなみに、椿には『疲れる』という概念が存在しないので、本当にいつまでも元気に配ることができる。

 この程度のことでは汗一つ出てこないだろう。

 明らかに何かがおかしいのだが、今に始まったことではない。


「あのはしゃぎよう……未来でサンタコスはしたことないのかな」

「ないんじゃないか?なんとなくセフィアがヘッドドレスの代わりにサンタ帽子をかぶってプレゼントを配ってて、それを椿が受け取ってるイメージがある」

「このような感じでしょうか」


 秀星と風香が振り向くと、そこには本当にサンタ帽子をかぶったセフィアが立っていた。


「セフィア……だいたい何でも似合うな」

「メイドですから」

「そんなものか?」

「そんなものです」


 ちょっとよくわからないがそういうものらしい。


「というより、私も先程までプレゼントを配っていました」

「そうなのか?」

「はい。椿様に誘われました」


 時々秀星の言うことを聞かないセフィアだが、椿の場合は無条件らしい。

 日常における優先順位がはっきりしていてかなりアレだが、セフィアにそれを突っ込んだところで無駄であろう。

 ルールの押し付けあい、主張しあいのイタチごっこはセフィアのほうが強い、


(よくよく考えれば、椿とは別の方向性の人間だな。セフィアって)


 なにせサンタコスに該当するものが帽子しかないのだ。

 他はいつもどおりの露出がほとんどないメイド服であり、現在の椿とは方向性がまるで異なる。


「まあ、椿ちゃんに誘われたんならそりゃそうなるよね……さて、私達も行こっか」

「……そうだな」


 いずれにせよ、引き受けてしまったからにはノルマをこなす必要があるだろう。それが礼儀である。

 ……ちょっとめんどいけど。

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