第八百四十一話
緊急ミッションとして『破壊神秀星攻略ミッション』が発令。
秀星がいる間、参加者は他の参加者を倒してもスコアが計上されない。ただし、イベントアイテムを使ったり食べたりすることによって、スコアを得ることは一応可能。
このフィールドのどこかに存在する特効アイテムを使わなければ、判定上、秀星に勝つことはできない。
一応、秀星が投入されると同時に出現した塔のようなものではなく、全部自分で作った手作りの小さな城が出現しており、なんだかその中にあるっぽい感じである。
秀星がいるからと言って、いつまでも暴れ続けるわけではない。
まあ、特効アイテムを雑に扱ってしまえばその限りではないが、さすがにそこまで面倒な性格のやつはこの場にはいないだろう。
……若干、二名ほど頭に思い浮かぶのだが、気にしても仕方のない話だ。
ただ一つ言えば、特効アイテムという『発想』は、椿が未来の人間であり、秀星が出てきたときにはそういうアイテムが存在していたからたどり着けたものである。
当然、現代の人間がそれにたどり着けるかどうかというのは違う話だ。
というわけで……。
「ぎゃああああああ!」
「うわああああああ!」
まあ阿鼻叫喚の地獄絵図になる。
デメリットの発生源にして、もしも『倒す』ことができれば圧倒的なスコアを手に入れることができるのだ。
その内容は『Unlimited Rewards』……いくらでもくれてやるから首を持ってこいと言わんばかりの設定である。
魔法省のページでは何を見ても『世界最強』と書かれている。
だが、秀星本人の『戦闘の質』が高すぎて、秀星が全力で戦ったところは誰も見ていないのだ。
その結果、『もしかしたら俺でもなんとかなるのでは?』と『秀星とかかわりが浅い人間たち』は考える。
『ユグドラシルストア』の運営を行っている秀星に煮え湯を飲まされた企業は多く、出てきたのなら『叩き潰してしまえ!』ということで、ルール違反だが外部と連絡を取れる参加者たちは秀星にめがけて武器を向けた。
……まあ結果はお察しである。
斬撃は弾いて、銃弾はつかみ、魔法は砕いて、精神攻撃は素通り。
どれほど強かろうと弱かろうと、『魔戦士なら鍛えればできる程度』というスタンスを崩さず、『格の差』を見せることはせずに純粋な『実力差』を示している。
無駄がなく鮮やかであり、現在、『なんか地味だけど強い』というのが観客の感想だろう。
「……まあ、オールラウンダーを名乗る人たちからすれば発狂ものだろうけどな……」
「それはそれとして、なんで出てきたんだ?」
「……基樹か」
神器の剣を構えた基樹が秀星の前に出てきた。
「……まあ簡単に言えば、ダラダラしてるお前たちのケツを叩きに来たって感じか」
「なるほど、確かにお前を倒さないと解除されないデメリットっていうのはとてもめんどくさそうだ」
「報酬は『Unlimited Rewards』っていう設定だからな。まあ、倒せたら好きなだけくれてやるよ」
「倒せたらだろ?」
「当り前だ」
お互いに持っている剣を振り下ろす。
そこから衝撃波が出現して、双方の間の空間をバキバキにしていく。
そのまま衝突して、秀星が放った衝撃波が押し勝って、そのまま基樹の方に飛んでいく。
「準備運動の時点で全然勝てんな……」
基樹がそこから離れて、剣を構えて秀星に向かって突撃する。
秀星も剣を構えなおして、基樹に向かって走り出した。
そんじょそこらのRPGなら最終必殺技になっていそうな攻撃が、通常攻撃のノリでタメもなくお互いに放ちまくる。
「このスタジアム、俺が改造してるんだ。もっと暴れても問題ないぞ」
「だろうな。そんな気はした」
基樹が頷くと、次の瞬間、基樹がいる位置から半径三十メートルの全ての地面がマグマに変わった。
秀星はとりあえず距離を取ることにした。
エリクサーブラッドがあるので、別に足がマグマに晒されていたとしても問題はないのだが、演出としてである。
基樹が秀星に切っ先を向ける。
「『イラプション・バースト』!」
出現したマグマが全て剣に集まって、噴火する。
「まあ効かんわな」
秀星は魔力を剣にまとわせて振り下ろす。
すると、斬撃が飛んでいって、抜群の密度と粘性を誇るマグマをやすやすと斬り裂いた。
「ふーむ……やっぱ面倒だな」
基樹は秀星が来たので何となく戦っておこうと思ったようだが、格上過ぎて萎えてきたようだ。
決して自分一人で戦わなければならない相手ではないのだが、そんじょそこらの魔戦士は全員倒されて転移している。
時間経過で復活はするが、トラウマになっていたら当然戦えない。
「さーて、準備が必要な奴ってどれくらいいたかな……そろそろ増援が欲しい」
「んなこと言ってると誰も来ねえぞ」
「それはこまるな。黙っておこう」
勝てる気はしないが、秀星が本気を全く出そうとしていないので惨敗するつもりはない。
基樹は溜息を吐いて剣を構えた。
正直、帰りたいと思っているのは間違いないだろう。
ここまで萎えていたのに、なんで秀星と戦わなければならないのかという話である。




