第八百四十話
「む?……むううううううう!お父さんがボスキャラとして登場するみたいですよ!」
椿がスマホを見て驚愕している。
秀星が安全管理委員会に属しているということを聞かされていたからだろう。
風香のスマホも先ほどブザーが鳴り響いたばかりであり、一体どのような内容になっているのかと思ったが、直ぐに椿が反応したのでその反応を見ることにした。
そしてその結果がこれである。
「……多分イベントに困ったんだろうね。今、なんだかすごくダラダラしてるし」
正解。
「あと、お父さんが倒されるまでは、誰かほかの人を倒してもスコアが手に入らないみたいですよ。イベントアイテムの消費で増やすことはできても、他の参加者を相手に戦っても意味はないみたいですね」
「要するに……協力して秀星君を倒せってことなのかな」
「おそらくそうだと思います!……お父さんってどうやったら倒せますかね?」
「うーん……外部への通信手段を入手して、神々に連絡を取れればワンチャンかな」
きっと今よりもひどいことになるだろう。間違いない。
「さすがにそれは不味いですね。むうう……お父さんがいないと誰もこれ以上大幅にポイントを獲得する方法がなくなってしまうということになりますし、せっかくの協力イベントですから、みんなで集まった方がいいと思います!」
「うーん……」
「む?お母さん。何か思うところがあるんですか?」
「いや、私としては、秀星君を『投入』っていうのがね……秀星君が出てくるかもしれない扉みたいなものがあって、その鍵を見つけて封印しないと出てくるっていうのならわかるんだけど、直ぐに投入してくるっていうのがね……」
「前にお父さんがやったみたいに、特効アイテムのようなものが出てくるかもしれませんね。お父さんを『判定上』倒すことができるアイテムなら出てくると思います!」
「正攻法だと勝てないしね」
世界一位だからね。
「となると、特効アイテムを見つけるために動いた方がいいですね」
「未来では秀星君はこういうとき、どこに置いているの?」
「お父さんが最初に出現した建物ですね。ものすごく頑丈に作られていることが多いですよ」
「……」
RPGで、魔王が自分がいる城に、『魔王に対して大ダメージを与えることができそうな強い装備品』を宝箱に入れているような、そんな『仕様』のようなものが頭に思い浮かんだ風香。
自分を倒すためのアイテムを自分の城に置いておく。しかも城は徘徊する何かはいても専属警備はいないという警備のガバガバ。
……RPGの魔王も苦労しているのだろうか。謎である。
(後で秀星君に、『自分特効アイテムを自分が出現した場所に置いておくのってどんな気分なの?』って聞いてみよう)
ちょっと性格が悪い気がしなくもないが、『RPGの魔王になった』というコンセプトのフィクションだと、憑依転生して魔王になった後でそういった武器や防具を撤去することがほとんどだ。
わざわざ自分特効アイテムを置くような馬鹿魔王など、現実にいるわけがない。
(……あれ?基樹君はどうだったのかな。元魔王だよね)
そうですね。
(今使ってるあの神器の剣は異世界に行ったあとから使い始めてるし、多分魔王の城とかに置いてたんだろうね。自分専用の武器はともかく、自分を倒せるような強力なアイテムってどうなんだろう)
おいていたのだろうか。
そのあたりの小さな点は秀星から聞いているのだが、どうやら秀星が基樹の力を最大限に封印して、その後で天理が戦ったので、ぶっちゃけ基樹が置いていたかどうかに関しては基樹に聞くまでわからないだろう。
(というよりあれだね……私の周り、ラスボス仕様の人が多すぎないかな)
それは今更です。
「お父さん特効アイテムをみんなで探しに行きましょう!きっと、お父さん自身の力をもってしても認識できないすごいもののはずです!」
「……なんで秀星君も認識できないって思うの?」
「未来でもそうでしたよ。あと、そもそもお父さんがそのアイテムの位置が分かったら、お父さんはそのアイテムを回避できるに決まっているからです」
「なるほど……」
ちなみに、『それほど秀星に対して効果的なアイテムだったら、誰かが持ち出して解析して秀星を始末するためのアイテムを開発しようとするのでは?』という疑問が出てくるが、秀星は文字通り、『殺しても死なない』といえるほど『命のバックアップ』を取っているので問題はない。
「まずはお父さんの出現場所を発見して、お父さんがそこから抜け出したらコソ泥みたいに侵入しますよ!」
「言い方」
というわけで、椿と風香の組は探索を開始することにした。
今、この塔の中で争うことに何の意味もないので。




