第八百三十五話
「……世代か」
「?」
安全管理委員会本部室……ではなく、スタジアムの地下。
まあ、生半可に『地下』といっても、ガチ勢のための塔の地下のような深さではなくもっと深い場所。
転移・転送魔法以外に移動する手段がないエリアで、秀星はわざわざ自爆テロを仕掛けてきた特攻用の飛行機の運転手たちを尋問していた。
とはいえ、尋問など、自白剤を投与すればラクチンなので、別に何か苦労したことがあるわけではない。
ぱっぱと終わらせてイベントの様子を見ていたのだが、秀星がそんなことを呟いた。
「いや……海道みたいな『ちょっと上の世代』にも、色々抱えてそうな奴がいるなって思っただけだ。ただ、いろいろ面倒なことを抱えてるのは多分父さんも同じだしな」
「確かに、第二世代型とはいえ、神と結婚をして子供を産んでいるとなると、よほどの事情を抱えているでしょうね」
海道たちのやり取りを見ていて、世代という言葉が頭に思い浮かんだが、どうやらそういうことらしい。
「思えば、ギャグ補正を持ってるやつってそれぞれの世代にいるんだな」
「そうですね。秀星様の二つ上が高志様でしょう。一つ上が来夏様。当代は秀星様で、二世代後が椿様と考えれば、確かにギャグ補正を持っているものはそれぞれにいるといって差し支えないでしょう」
現在九十二歳である重蔵はかなり世代的に上だが、それは言い換えれば『原点はかなり昔』ということになる。
そこまで歴史がある文化ではあってほしくはないものの、この『ギャグ補正』の『仕様』を利用して強引に物事を解決することは可能なので、それを利用した世代もまた存在するはずだ。
世の中にはいろいろあるのだが、『まあギャグだしね』という言葉は強すぎる。
極論だが、地球破壊爆弾を使って文字通り地球を爆発させたとしよう。
その主犯が宇宙で高笑いしながらみていたとしても、『コンティニュー!』と書かれた超巨大ドカンが出現して、ポンッ!と地球が出てきて再び回り始めたとしても別に問題ないのだ。ギャグならね。
「じゃあ、俺たちの一つ下の世代……今は恐らく三歳から七歳くらいのギャグ補正を担当している存在がいるってことだよな」
「少し年齢が足りませんが来夏様の娘の沙耶様では?」
「……」
愕然としてしまった秀星。
「……え、嘘でしょ。ギャグ補正ってそこまで伝統があって、これからも続いていく概念なのか?」
「ワヤクソになるほうが都合が良いということもあるのでしょう。秀星様もこれから利用することがあるはずです」
「……」
「グリモアでライズ様が復活して暴れ始めた時、高志様と来夏様が抑えていましたが、それはギャグ補正を前提としていたはずですし、逃げられるようなものではありません」
事実なので苦虫を噛み潰したような表情になりながらも否定できない秀星。
「はぁ……なんか疲れてきた」
「いっそのこと高志様のようにはっちゃけてみては?」
「盗撮して後で笑うつもりだろ」
「はい」
即答しやがった。
「まあ、それはともかく……次の尋問室に行くか……なんでこんなに多いんだろうなぁ……」
強引に話題を変換したい秀星。
アトムは敵が多いので、そちらに逸らすだけでもかなり話のタネになるのだ。面倒な上司である。




